2話 2人の音羽
たくとは、音羽のことを諦めることが出来ない。音羽はふられても自分との関係は友達のままだ。
彼は、夜思い悩むと濁池の遊歩道へ行き、思いを巡らす。
しかし、音羽と友達以上の関係になる方法は思い浮かばない。
彼は、毎夜、濁池の遊歩道へ行くようになる。
ある晩、たくとはいつものように遊歩道に来て物思いに耽っていると池から人が出てくるのを見つける。
彼は、不審に思い警戒しながら、少し離れたところから見る。出てきたのは全裸の少女である。
彼は驚きながら近づくと少女は音羽である。彼は音羽に駆け寄り言う。
「そんな恰好でどうしたの。」
音羽は答えず、微笑むだけである。たくとは着ていたパーカーを脱ぎ音羽に着せて自分の家に連れ帰る。
たくとは、これが本物の音羽とは思えなかったが手放すことが出来なかったのである。
彼は自分の部屋に音羽を連れ帰る。一緒のベットに寝ると音羽は抱き着いてくる。
彼は思わず音羽をはねのける。音羽がそんなことをしないと彼の体が拒否反応したのである。
音羽は困ったように微笑む。彼は音羽をベットに寝かせて、自分は床に寝る。
早朝、たくとは部屋にいる音羽のためにこっそりと朝食を用意して部屋に持ち込む。そして、たくとは部屋にはいらないように母親に言って学校へ行く。
通学路には音羽がいる。たくとは、いつもの音羽がいることにホッとするとともに自分の所にいる音羽が偽物であることを残念に思う。
彼が考えごとをしていると音羽が聞いてくる。
「どうしたの、少し変よ。」「音羽は、僕が女の人と付き合ったらどう思う。」
「少し寂しいけど、何も言えないわ。」「そうか。止めてくれないんだ。」
「友達だから、あなたの幸せを願うだけよ。」「僕は君といるときが幸せだよ。」
音羽は、たくとの言葉に答えてくれない。
たくとは帰宅すると部屋に引きこもる。目の前にいる音羽は偽物だと知っている。
しかし、この音羽は自分を受け入れてくれる。手放すことが出来ない。
朝に用意した朝食はそのままになっている。彼女は、音羽に似ているだけで人間ですらないらしい。
たくとは3日間、偽の音羽を置いておく。母親は気になってたくとに聞く。
「たくと、誰かかくまっているの。」「誰もいないよ。部屋を見ないでね。」
彼はそういうと部屋に戻って行く。母親は心配になってたくとの部屋をのぞく。そこには泥の人形のようなものがいる。
母親は驚いて、父親に言う。
「たくとが泥の人形のようなものを部屋に入れているわ。」「見間違いではないのかい。」
両親はたくとの部屋に行く、そこには泥人形はいない。代わりに父親には初恋の人を見つける。母親は出会った頃の父親を見つける。
父親が言う。
「これはどういうことだ。こんなことありえない。」「父さん、何言っているんだ。音羽だよ。」
「私には初恋の人に見えるぞ。」「私には、若いころのあなたに見えますわ。」
「たくと、離れなさい。」
たくとは両親に部屋から連れ出される。居間で父親が言う。
「あれは化け物だ。おそらく理想の相手に見えるんだろう。」「あなたは、私でなくて、初恋の人に見えたんですね。」
「そんなこと言っている場合か。」「・・・」
父親はごまかそうとするが、母親の視線が痛い。父親は話を続ける。
「知人に幽霊を退治してもらった人がいるから聞いてみるよ。」
母親は話をそらされて機嫌が悪い。父親は、気づかないふりをして、知人にスマホで電話する。
父親は、知人に中野沙衣探偵事務所の電話番号を教えてもらう。
その頃、沙衣と祐二は事務所を閉める準備をしている。祐二にとっては、沙衣と別れる寂しい時間である。
その時、事務所の電話が鳴る。沙衣が電話に出る。
「中野沙衣探偵事務所です。」「村上と申します。化け物の退治をお願いしたいのですが。」
「どのような化け物でしょうか。」「泥人形のようですが、見た人の好意を持つ人に見えるのです。」
「以前、同じようなものを扱ったことがあります。」「退治できるのですか。」
「はい。」「よろしくお願いします。」
沙衣は、高校生の時、沙衣に好意を持っていた大学生が泥人形と抱き合っていたことを思い出す。彼女は祐二に言う。
「仕事が入ったわ。明日、化け物退治するわよ。」
沙衣は、仕事を受けることになる。




