2話 呪い
直之は辻家の者を集めて言う。
「辻電工の社長は、私の兄の辻直高です。会社の発展は管狐によるものでしょう。我々は一族のため管狐を取り戻さなくてはなりません。」
「あの行方をくらました直高が会社の社長をやっているのですか。」
「そうです。今頃、のこのこ出てきて、一族の恥です。」
「直高が管狐を持っているのは本当ですか。」
「まず、間違いありません。でなければ辻電工は大きくなっていないでしょう。」
「管狐が直高の元にいるなら、辻家に呼び戻せばいいのではないですか。」
「裏切り者を家長と仰ぐのですか。私には耐えられません。」
「直高が死ねば、管狐は直之の所に来るのではないか。」
「良い考えですね。しかし、あてはあるのですか。」
「殺し屋を雇うのか。ばれれば辻家は破滅だぞ。」
「呪いをかけてはいかがですか。」
「そのようなものに頼るのですか。」
「管狐の恩恵にあずかる我々が呪いを馬鹿にはできますまい。」
「私に呪い屋の当てがあります。直高を呪い殺してもらいましょう。」
直之のいとこが言う。直之は直高が死ねばすべてが手に入ると考える。
辻電工も管狐の力で手に入れようと考える。
「直高の件は任せる。金はいくらかかってもいい。辻家が関わっているとわからないように呪い殺してくれ。」
「分かりました。」
いとこは、以前、ライバル会社のプロジェクトを責任者を呪い殺すことでつぶしたことがある。今回も同じ呪い屋に仕事を依頼する。
五條琢磨は、数年前独立して名前が売れてきている呪い屋である。
いとこは、琢磨に言う。
「辻電工の社長辻直高を呪い殺してくれ。金はいくらでも出す。」
「分かりました。確実に仕留めて見せます。」
琢磨は依頼を引き受ける。
数日後、直高は体調がすぐれなくなる。管狐が直高に言う。
「主よ。呪いをかけられています。」
「そうか、辻家は私を殺すつもりか。呪いは防ぐことはできないのか。」
「私の力では無理です。五條美月に依頼してください。」
「誰だ、それは。」「呪い屋の実力者です。」
「分かった。いうとおりにしよう。」「五條の者に呪いをかけられていると言えば何とかなります。」
直高は、五條家に電話する。
「辻と申します。五條美月さんをお願いします。」「分かりました電話を代わります。」
しばらく待つと電話に美月が出る。
「五條美月です。どのような要件でしょうか。」「私は辻直高と言います。呪いをかけられています。助けてください。」
「依頼は受けかねます。あなたはご高齢でしょう。助けることは難しいです。」「私は五條の者に呪いをかけられています。何とかしてください。」
「分かりました。依頼料は高いですよ。」「お願いします。」
美月はすぐに琢磨に連絡を入れる。
「琢磨さん、対象に呪いをかけていることがばれていますよ。」「そんなはずはありません。」
「今、私に電話がありました。手を引いてください。」「分かりました。」
琢磨は自分がミスをした覚えはない。しかし、美月には逆らえない。琢磨は依頼者に失敗したことを伝える。
「対象を呪い殺すことに失敗しました。」「呪うことが出来なかったのですか。」
「いいえ、私が呪ったことがばれたようです。」「辻家のこともばれていますか。」
「それはありません。」「そうですか残念です。」
直之のいとこは辻家のことがばれなかったことが幸いだと受け取る。
美月は直高に連絡する。
「呪いの件はやめさせました。」「誰が呪いをかけたのですか。」
「教えることはできません。なぜ私に連絡したのですか。」「お答えすることはできません。」
「そうですか、お互い知らないことにしましょう。」「そうですね。」
直高は辻家の者が呪いを依頼したに違いないと考えているが証拠はない。




