4話 町の中の戦い
沙衣と祐二は、翌日から調査を再開する。日中は大学に出て夜遅くまで歩くので2人は疲れが貯まってきている。
それに加えて沙衣には、ナンパ男が寄って来るので始末が悪い。
何日かたった夜、沙衣は道端に座り込む女の霊を見つける。沙衣は女の霊の前に立つ。女の霊は言う。
「女に用はないわ。」「私にはあるのよ。」
「何の用。」「たまより様を知っているでしょ。」
「知ってどうするのさ。」「退治するのよ。」
「分かった教えてあげる。」「協力的ね。」
「男の関心を買うのに飽きてきたのよ。」「まるで娼婦ですものね。」
「私は生きていた時からそんな商売をしていて、死んだら妖怪にこき使われて疲れたのよ。」「案内したら成仏させてあげるわ。」
「約束よ。」「ええ。」
女の霊は盛り場に入ってゆく、そして、さびれた風俗店に入って行く。沙衣が入ろうとすると店員が止める。
「お姉ちゃんが入る店じゃないよ。働きたいなら別だがな。」「中に用があるのよ。」
店員が掴みかかると体をかわし、店員の足を引っかけると店員は道路に転がる。
沙衣は祐二に外で待つように言うとそのまま店に入って行く、すると別の店員が立ちふさがる。
「お姉ちゃん、このまま帰れないよ。」「私は奥にいる女に用があるわ。」
「ママに用があるって、どこの者だ。」「私は敵討ちの代行に来たのよ、たまより様。」
「何言っているんだ。」
店員が殴りかかる。沙衣は腕を取り殴りかかってきた力を利用して店員を投げ飛ばす。ママと呼ばれた女が言う。
「ただの祓い屋ではないね。場数を踏んでいる。」
「あなたは風俗店の経営者には見えないわ。人間に見えないもの。」
盛り場の道路の消火栓が破裂する。ものすごい勢いで道路に水があふれだす。店の外では騒ぎが起きる。
店の中に霧が発生する。沙衣が霧をコントロールしている。ママが目をカッと開くと沙衣は弾き飛ばされる。沙衣は水の刃を作りだしママに切りつける。
ママは次第に膨張して皮膚が裂け青い肌が出てくる。ママだった体は店を破壊する。沙衣は外へ逃げ出す。ママだったものが外へ出てくる。
ぬめっとした青い肌に人の3倍はある巨体に頭には大きな眼が2つ付いていて、頭部から背中にかけて黄色い髪の毛のようなものは生えている。
沙衣はその姿を見て嫌悪感を覚える。
「醜いわね。これがたまより様?」「そうです。多くの女の霊を従えています。」
女の霊が言う。沙衣の周りでは人々が化け物の出現に逃げまどっている。
沙衣は、水の槍を作ってたまより様に投げつける。槍はたまより様を貫く。
するとたまより様は倒れていた店員を2人食べる。女の霊が説明する。
「たまより様は男の霊魂を食べて自分の命にしているのです。」「霊魂を消費しつくすまで殺し続けないといけないの。」
「そうです。」「ほとんど無敵じゃないの。」
「魂には限りがあります。」「・・・」
ここには人がいっぱいいる。たまより様は先ほどのように人を食らえば霊魂を補給できることになる。その前に倒さなくてはならない。
沙衣は、道路の水を集めて大きな水の塊を作る。するとたまより様の眼が赤くなる。沙衣は持ち上げられ道路にたたきつけられる。
水の塊は消え、沙衣は道路にうつぶせのまま動かない。たまより様は沙衣に近づいてくる。たまより様の手が沙衣に届くとき、雑居ビルが倒れてくる。
たまより様はビルの下敷きになる。ビルの下から血が流れ出てくる。それはかたまりになって形作って行く。そして再びたまより様になる。
沙衣は起き上がると水の槍を作ってたまより様に投げつける。槍は体を貫く。さらに水を薄い円盤状にしてたまより様に投げる。
円盤はたまより様の首をはねる。首は落ちるが、傷口から頭が生えてくる。沙衣はたまより様の気配を感じ取っている。
たまより様はビルにつぶされた時、気配が弱くなったが。そこから変化がほとんどない。まだ倒すビルは残っているが2度目は通じないだろう。
沙衣は別の方法を考える。
たまより様は使役している女の霊を呼び戻しているが一向に戻ってこない。使役されている女の霊はたまより様に騙されて死んで霊になった者が多いので反抗はしなくとも反感を持っている。
突然道路が陥没してたまより様が落ちる。そこへビルが倒れてくる。沙衣は水を操って道路の下の土を流して空洞を作り落とし穴にして、ビルの基礎のコンクリートを水で破壊して崩し倒壊させている。
沙衣は道路の水を集めて再び大きな塊を作る。そしてビルの下から血が流れ出てくる。血はかたまりになる。沙衣はその血の塊を水の塊に吸収する。
たまより様は水の中で形作ろうとする。すると無数の水の刃がそれを削って行く。たまより様は何度も再生を繰り返すがそのたびに水の刃に削られてしまう。
沙衣は水の塊の維持に精神力を使う。たまより様は魂を削って再生を試みる。双方の持久力の戦いになる。
夜が白み始めたころ、たまより様は再生できなくなる。沙衣はたまより様の気配が消えるのを確認する。彼女は水の塊を下水に流す。
沙衣はへたり込む。女の霊が言う。
「約束覚えていますか。」「覚えているわよ。」
沙衣は女の霊に手をかざすと陽の光を当てる。女の霊はゆっくりと消えていく。そこへ祐二が来る
「お嬢さん、大丈夫ですか。」「大丈夫に見える。」
「おぶるよ。」「恥ずかしいわ。」
「僕は恥ずかしくないよ。お姫様抱っこがいい。」「おんぶでいい。」
沙衣は祐二におんぶされて帰って行く。沙衣は言う。
「今回の仕事、割に合わないわ。」「町を壊しておいてそんなこと言うの。」
「仕方なかったのよ。」「苦戦したんだね。僕には何もできないよ。」
「おんぶしているでしょ。」「そうだね。」
沙衣とたまより様の戦いの跡はニュースになる。大きな被害の割には、行方不明者が3名だけだった。




