プロローグ
昔、集落に天女のような美しい女人が来る。女人の周りに人々が集まる。
女人は言う
「私は麗姫と言います。あなた方を盗賊や戦から守りましょう。」
集落の長老が言う
「本当ですか。麗姫様のような美しい方が集落を守れるのですか。」
「もちろんです。代わりに年に1人生贄を用意するのです。」
「生贄ですか。」
「その家に白羽の矢を立てますので、その家の娘を山の祠に連れてくるのです。」
「それは承服しかねます。それにあの祠には鬼が住むと言われています。」
「それでは、隣の集落のようになりますか。」
「なっ・・・」
長老は、皆殺しになった隣の集落のことを思い出す。盗賊にやられたと思っていたがこの女が犯人だったのだ。
「答えはどうしたのですか。」
「分かりました。」
「良い答えです。」
麗姫は、満足すると立ち去る。
長老は、この地を治める国枝相俊に助けを求める書状を書き、使いの者に持たせる。
相俊は書状を読み、自ら1000の兵を率いて、集落へ向かう。彼は鬼女を討伐して名を上げたかったのだ。
集落ではある家に白羽の矢が立つ。その家には、若い娘がいる。娘は怯え、両親は涙にくれる。
そこへ相俊の軍勢が到着する。長老が相俊に事情を話すと相俊は一計を企てる。
相俊は娘をかごに乗せて山の祠へ進む、雅語には兵が付き従う。他の兵は先行して祠の周りに身を潜ませている。
娘を乗せたかごを祠の前に置くとかごに付いていた兵は去って行く。
すると、麗姫が現れ、かごを開ける。すると麗姫の背中に刀が生える。中には若武者が娘に入れ替わって潜んでいたのだ。
隠れていた兵が、麗姫を討ち取らんと向かってくる。麗姫は向かってくる兵を殺しながら逃げる。
麗姫は、兵の囲みを抜けると
「この恨み晴らして見せるぞ。」
と言って消え去る。
相俊は、麗姫を取り逃がしたことを悔しがる。しかし、集落の人々は感謝する。
相俊は集落で歓待を受けた後、城に引き返す。その途中、行き倒れの若い女性に行き会う。
女は兵に介抱されて一息つく。女は相俊に礼を言うが、彼は女に一目惚れする。
「その方、名を何と言う。」
「小雪と申します。」
「名前に劣らず美しい。」
「滅相もございません。」
「行く当てはあるのか。」
「私の集落は滅ばされてしまいました。行く当てもなくさまよっていたところです。」
「なら、私の側室になれ。嫌か。」
「身に余ります。」
「構わん。手を取ってくれ。」
相俊は小雪の手を取ると馬に乗せる。そして、城に帰る。
その夜、相俊は新しい側室を迎えたことで祝いの宴を催す。
宴は夜遅くまで行われる。深夜、皆が酔いつぶれて寝ていると小雪は妖艶な美しさの女に変わる麗姫である。
麗姫は、火を放ち寝ている相俊の刀を抜くと男女関係なく刺し殺していく。城は一夜にして灰燼に帰す。国枝氏は麗姫滅ぼされてしまう。
そして、麗姫は山の祠に舞い戻り、集落の家に白羽の矢を立てる。国を滅ぼされた集落は麗姫に従うしかない。
集落の人々は泣く泣く毎年生贄を捧げ続ける。
何十年もの間、麗姫の言う通り集落は盗賊や戦から無縁に過ごす。
しかし、ある年を境に白羽の矢は立たなくなる。
そして、麗姫と言う鬼女の話だけが語り継がれる。
近代になってその集落を含む地域は国枝町になる。




