プロローグ
皿無川では、人を水中に引きずり込み、内臓を食べる妖怪が住み着いている。
カワロウと呼ばれ、子供位の大きさで全身毛が生え、手と足には水かきがある。
1年のうちに何人もの犠牲者がでるが、村人たちは有効な手を打てずにいる。
村人が困り果てていたところ、村の力自慢の太助がカワロウの退治に名乗りを上げる。
太助は川辺でカワロウが現れるのを待つ。
3日目の夕方、太助は何かに足を取られる。
太助は転ぶが、力任せに川から這い上がると右足にカワロウが取りついている。
カワロウは、陸に上がると水中に逃げようとするが、太助は逃すまいと捕まえようとする。
太助とカワロウはつかみ合い力比べになる。
太助の活躍を村中の人が見に来ている。
カワロウの力に太助は屈しそうになるが、みんなに負ける所など見せられない。
太助は外掛けでカワロウを倒すとカワロウの首を絞める。
カワロウも太助の首を絞める。
しばらくすると骨の砕ける音がする。
村人が見守る中、太助が立ち上がる。
太助は、カワロウの首の骨を砕いたのだ。
カワロウの死体は、その場で村人に焼かれる。
太助は村の英雄になる。
その晩、太助の活躍を肴に村で宴が開かれる。
しかし、太助は宴の途中で倒れる。
村人たちは、太助は戦いの疲れが出たのだと考える。
太助はその日から高熱にうなされ続ける。
半月後、太助はそのまま息を引き取る。
村では、その後、カワロウの被害はなくなる。
太助とカワロウのことは村で語り継がれる。
その話は時代を経て、太助と河童の話になって語られてゆくことになる。
村は西浦町になり、皿無川はきれいな清流を保っている。
皿無川は流れの穏やかな川で、近くにキャンプ場もあり、町の観光資源になっている。
そして、太助と河童が河原で相撲を取ったとされ、川沿いのサイクリングロードには、太助とかわいい河童が相撲を取っている像が置かれている。
長年、皿無川では水死者は出ていない。
ところがある年、続けて4人の水死者が出る。
中には目撃者がいるものもあり、目撃者は一様に見えない何かに引きずり込まれたようだと言う。
町では、皿無川は大切な観光資源である。
町議会で、皿無川の事件が取り上げられる。
「犠牲者の方々にはお悔やみ申し上げます。しかし、これは私たちの死活問題です。」
「河童に引きずり込まれたのではと言う話もあります。」
「困りますな。河童のイメージが悪くなります。」
「とりあえず遊泳区域を設けて監視員を置きましょう。」
「それでは、根本的な解決になりません。」
「マスコミには、何かに引きずり込まれたと書かれていますぞ。」
「これでは町のイメージが悪くなります。」
「何か良い手はないですか。」
「神主にお祓いしてもらいましょう。その後、水死者を出さなければよいのです。」
「そうですな。」
町では、皿無川の河原で神主がお祓いをして、遊泳区域を決め、監視員を置くことになる。




