3話 迷い
沙衣は、寒沢から帰る途中、依頼を受けるかどうか悩む。
祐二が沙衣に言う
「初めて怖い思いをしたよ。」
「助手をやめたくなった。」
「それはないよ。助手をやめたら沙衣といられなくなるだろ。」
「死ぬかもしれないわよ。」
「あの石、当たったら死ぬよなー」
「緊張感がないわね。」
「危なければ逃げればいいさ。」
「気楽ね。」
沙衣は、怨霊と戦う時、逃げる選択肢を忘れていた。
彼女はよく考えることにする。
事務所に戻ると、沙衣はとつきに電話する。
彼女は、とつきに言う
「今日、寒沢に岩に行ってきました。」
「どうでしたか。」
「岩に上に年を経た怨霊がいました。」
「退治できそうですか。」
「怨霊がかなり強力な力を持っています。勝てるかどうかわかりません。」
「お願いです。息子のかたきをとってください。」
「少し考えさせてください。」
「依頼料は高くても構いません。お願いします。」
とつきはかたき討ちに必死である。
電話の様子を見ていた祐二が言う
「依頼を受けるの。」
「まだ決めていないわ。」
「僕は断って欲しいと思っている。」
「私が負けると思っているの。」
「今度の怨霊はちょっと違うと思っているんだ。」
「どういうこと。」
「怨霊は岩の上にいたのに河原の石を飛ばして見せたんだ。かなり強いのではないの。」
「強いわよ。だから何。」
「僕は沙衣に死んでほしくないんだ。」
「それって私が負けるということでしょ。」
「勝ち負けはどうでもいいんだ。沙衣と一緒にいたい。」
「私は助手といるだけよ。」
「それでもかまわないよ。」
祐二は、初めて怖いと感じている。
そのため、沙衣に依頼を受けてほしくないと考えている。
沙衣は、祐二の言葉に失望をする。
祐二なら平然として、依頼を断って欲しいようなことは言わないと決めつけていたのだ。
祐二が自分の力量を信じてくれないと思ってしまう。
沙衣には、祐二の信頼など必要としないはずなのに心はそれを求めている。
沙衣は、祐二に力のない声で言う
「依頼は考えてから決めるわ。」
「わかった。」
祐二は言い過ぎたと思いながら答える。
2人はこの後、事務所を閉めて帰宅する。
沙衣は、帰宅すると沙夜に話しかける
「おばあちゃんは、自分より強いかもしれない敵と戦う時、どうするの。」
「作戦を立てて、準備をしてから挑むわ。」
「そんなこと普通じゃないの。」
「自分の舞台に敵を上げてから踊るのよ。」
「自分に有利な状況で戦うのね。」
「強い敵は、いい機会よ。戦いなさい。」
祖母は、超能力者や化け物じみた相手と戦ってきたのである。
沙衣にとって祖母の言葉は重い。
彼女は、祖母に鍛えられてきている。
そして、祖母に負けないくらいの実力を身に着けている。
これは彼女にとって自信の源である。
沙衣は、怨霊に対抗する手段を考え始める。
翌日、沙衣と祐二は事務所を開く。
2人は、必要なことしか言葉を交わさなかった。
しかし、祐二は沙衣が元に戻っているのを感じる。
沙衣は、怨霊と戦う作戦を練る。
そして、3日後、沙衣はとつきに電話する
「依頼を受けることにしました。」
「ありがとうございます。私も一緒してもよろしいですか。」
「あなたを守る余裕はありません。死ぬかもしれませんよ。」
「構いません。怨霊の最期を見届けたいのです。」
とつきは自分を危険にさらしても息子のかたきの最期を見届けたかった。
「分かりました。明日の昼に寒沢に岩に行きます。」
「現地で待ち合わせでよいですね。」
「はい、私たちが行くまで川に近づかないでください。」
「よろしくお願いします。」
とつきは電話を切る。
電話を聞いていた祐二が沙衣に言う
「戦うことに決めたんだ。」
「止めても無理よ。」
「止めないよ。沙衣について行くだけさ。」
「私は勝つわよ。」
「わかっている。」
2人は、わだかまりが解けるのを感じる。
翌朝、沙衣と祐二は、ロードスターに乗って寒沢に向かう。
昼前、前回来た時と同じ食堂に立ち寄る。
店主が沙衣に言う
「まだ、岩のことを調べているのかい。」
「怨霊を退治に来ました。」
「着物の女のことを言っているのか。」
「はいそうです。」
「やめておけ、死んでしまうぞ。」
「私、強いですから。」
「忠告はしたぞ。」
店主はあきれる。
2人は食事を終えると寒沢の岩に着く。
そこには、車が1台駐車している。
沙衣と祐二が、ロードスターから降りると車からとつきが降りてくる。
とつきは沙衣に言う
「先生お願いします。」
沙衣は岩を見ると着物の女が見える。
沙衣はとつきに言う
「岩の上に女は見えますか。」
「いいえ見えません。」
「いま、そこにいますよ。」
「そうですか。」
とつきは目を凝らすか女は見えない。
沙衣は祐二ととつきに言う
「2人は、ここから見ていてください。」
「僕は助手だからついて行くよ。」
祐二が言うと沙衣が説明する
「土手が戦場になるから入ってはだめ。危険になったらもっと離れなさい。」
沙衣は、1人道路から土手へ向かう。




