2話 とつきの依頼
とつきは沙衣に言う
「お母さんに変わって、怨霊を退治してくれないか。」
「どういうことですか。」
「寒沢と言う所に岩があるのだが岩の上に怨霊が出るのだ。」
「どうして、退治したいのですか。」
「息子がロッククライミング中に怨霊に殺されたのだ。かたきを討ちたい。」
「その怨霊が母にかかわっているのですね。」
「はい、20年前、オカルト番組のスタッフが2人岩から滑落して死亡している。」
「番組では、鎮魂祭を行ったんだが、怨霊が土石流を引き起こして、沙也加さんが戦ったのですが、返り討ちにあって重傷を負ったのです。」
沙衣は少し考え込んでから言う
「私に退治できるか調べてから、受けるかお話します。」
「お願いします。良い返事を待っています。」
とつきは事務所から帰って行く。
祐二が際に言う
「沙衣のお母さん行方不明なのですか。」
「私の両親は、一緒に行方不明になりました。」
「それは大変ですね。」
「物心ついた時にはいなかったから祖父母が親代わりよ。」
祐二は、沙衣を落とすのに両親と仲良くなるのもありだなと思っていたが当てが外れる。
彼は、沙衣の祖父母に近づくことを考える。
しかし、彼の場合、実行力が伴っていない。
沙衣は五條家に電話する。
普段はスマホで美湖に電話するのだが、今回は美月に用事があるのだ。
電話には樹が電話に出る
「沙衣、こちらに電話するのは珍しいですね。」
「今夜は美月さんに話があります。」
「分かりました。電話代わりますのでお待ちください。」
しばらく待つと美月が電話に出る
「沙衣、どうしたのですか。」
「20年前に寒沢の岩で母に何があったのですか。」
「それを聞いてどうするのですか。」
「先ほど、寒沢の岩の上の怨霊について退治の依頼が来ました。」
「なんてことです。」
「母は怨霊と戦ったんですよね。」
「沙也加は仕事の依頼を断っていたのです。でも巻き込まれて戦うことになったのです。」
「母は、怨霊と戦うのを避けていたのですか。」
「危ないと考えていました。」
怨霊はどんな攻撃をするのですか。」
「土石流を操り、石や岩を飛ばしてきます。」
「厄介ですね。」
「沙衣、この仕事は断りなさい。」
「依頼人は息子を怨霊に殺されています。」
「あなたも死にますよ。沙也加は稲荷の勾玉があったから助かったのです。普通なら死んでいましたよ。」
「私の目で調べて判断します。」
「私の話を聞きなさい。」
「ありがとうございます。でも私のやり方があります。」
沙衣は電話を切る。
電話の様子を見ていた祐二が沙衣に言う
「美月さん、仕事を受けるのを反対したのではないですか。」
「そうよ、仕事を受けたら死ぬと言われたわ。」
「なら、やめておきましょう。」
「祐二は、ただの助手でしょ。言われた通りにしていなさい。」
「僕は、沙衣に何かあっても何もできないんだ。」
「何を言っているの。」
「僕が沙衣の心配しちゃダメなのか。」
「余計なお世話だわ。」
「でも・・・」
「今日は帰って。」
「沙衣は、人に心配かけていることが判らないのか。」
「もう帰りなさい。」
祐二はムッとして事務所を出ていく。
祐二は沙衣にけがをしてほしくない。
沙衣が塚の怨霊に切られた時は、自分はどうすることもできないことを思い知らされている。
今回は、美月に死ぬかもしれないと警告されている。
自分は沙衣を止めるべきではないかと思っている。
でも、沙衣を止めることはできないだろう、彼女は僕の言葉を聞いてくれないのだ。
このままただの荷物持ちでよいはずはないと思うが、何もできないのが現実なのだ。
沙衣は、事務所の中で1人頭を冷やしている。
美月が止めるのは当然だと思う。
でも祐二に止められるのは腹が立つ。
祐二はいつもそばにいて自分の活躍を見ている。
彼なら「何とかなるよ」とか言ってもいいと思う。
しかし、彼は自分を止めようとする。
助手のくせに・・・
考えると頭に血が上ってくる。
沙衣は祐二に認められないのに不満なことに気づいていない。
彼女は事務所を閉め家に帰ることにする。
家に帰ると祖父母の古馬竜弥と古馬沙夜が夕食を待っている。
沙衣にとって親代わりである。
彼女は夕食を食べながら祐二について不満をぶつける。
竜弥と沙夜は笑いながら聞いている。
竜弥は言う
「今度、祐二君を家に招待しなさい。」
「なんで、ただの助手よ。」
「いつも祐二君の話をしているだろ、会ってみたくなったのさ。」
「私は嫌よ。」
沙夜が言う
「生きているうちに孫の婿の顔を見たいね。」
「そんなんじゃないわよ。」
沙衣は赤くなる。
翌日、沙衣は事務所で祐二に言う
「明日、寒沢の岩を見に行くわ。」
「ついて行ってもいいの。」
「祐二は私の助手でしょ。」
「首になるかもって思っていたよ。」
「私の助手は祐二にしか務まらないのよ。」
沙衣は断言する。
2人は、昨日の言い合いについては触れない。
翌朝、沙衣と祐二は、沙衣の運転するロードスターで寒沢へ向かう。
昼前に目的の岩の近くに着き、食堂に入る。
沙衣は、食堂で岩の上の怨霊について聞く。
店主は沙衣に言う
「マスコミの人かい。」
「いいえ、怨霊について調べに来ました。」
「関わらない方がいいよ。」
「何かあるのですか。」
「昔、オカルト番組が取材したら死人が出たのさ。最近もあそこで大学生が3人死んでいるよ。」
「ありがとうございます。」
沙衣は礼を言う。
食堂を出ると沙衣は祐二に言う
「油断しないでね。」
「僕は霊に鈍感だから大丈夫だよ。」
「岩が飛んでくるかもしれないわよ。」
「気をつけます。」
祐二は岩が飛んできたらと身の危険を感じる。
2人は寒沢の岩に到着する。
そして、土手に出て岩を見る。
沙衣の目には、岩の上に着物の女が見える。
彼女は、年を経た怨霊だと判断する。
彼女は、怨霊と目が合う。
怨霊の目は憎しみに満ちている。
河原からこぶし大の石がいくつも飛んでくる。
石は、勢い良く飛んできて、土手にドスッと音を立てて突き刺さる。
沙衣と祐二は、慌てて土手から離れる。
沙衣は、怨霊がかなり強力な力を持っていると判断する。




