プロローグ
昔、寒沢と言う川沿いに山城があり、山上秀次と言う若い城主が治めていた。
秀次には、美しい妻がいる。
結婚した年が豊作だったことから稲穂姫と呼ばれている。
稲穂姫は、農民の娘で、秀次が領内を回っていた時に見かける。
秀次は、足繫く通い、気持ちを伝え正室に向かえる。
稲穂姫の噂は隣国に知れ渡る。
寒沢の領地は、農地が狭く小国であったが、秀次と稲穂姫は幸せであった。
ところが狭山の竹ノ内宇国は稲穂姫に恋慕する。
狭山の国力は、寒沢にとって脅威である。
ある日、狭山の使者が宇国の書状を届ける。
書状には、狭山と寒沢で同盟を結びたいという申し出である。
それぞれの国が敵に攻められれば援軍を派遣することなどが書かれている。
その中に稲穂姫を狭山に住まわせることが書かれている。
表向きは、同盟のための使者であるが人質である。
それに宇国が稲穂姫に懸想していることは寒沢にも知れ渡っている。
秀次にとって同盟はありがたいが、稲穂姫を渡すことは容認できないことである。
彼は狭山の使者に書状を書いて渡す。
宇国は書状を読むと怒り出す。
書状には、同盟は受けるが、稲穂姫を使者にすることはできないと書かれている。
宇国の目的は稲穂姫を手に入れることである。
宇国は、何とか稲穂姫を手に入れようと同盟の条件を変えながら秀次とやり取りするが無駄に終わる。
宇国は寒沢に宣戦布告する。
秀次は、山城の利を生かして籠城を決め込む。
宇国は、戦を早く決着をつけて、稲穂姫を側室に向かえることを考えるが思い通りにいかない。
彼は負けを認め兵を引く。
そして、秀次に敬意を表して貢物を送る。
貢物は城に迎えられる。
貢物にはわらが巻かれている。
秀次は家臣に貢物をあらためるように家臣に言う。
家臣が近づくと突然槍で腹を突かれる。
貢物の中から狭山の兵が出てくる。
そして、わらに火をつけられ、城に火が燃え移る。
城内は混乱する。
城の煙を合図にしたかのように狭山の軍が押し寄せる。
混乱した城に攻め入るのは容易である。
城が落ちるのは時間の問題である。
秀次は、稲穂姫を城から逃がす。
宇国は、兵たちに稲穂姫を探させる。
稲穂姫は、城から寒沢沿いの岩場に逃げる。
宇国は城を落としても執拗に稲穂姫を探す。
そして、岩場で稲穂姫を見つけ追いつめる。
宇国は彼女に言う
「こちらに来てくれ、害は加えない。」
「近づかないでください。あなた方を恨んでおります。」
彼女はそういうと崖から身投げをする。
すると地震が起こり宇国のいた岩場が崩れ、宇国と兵たちが谷へ落ちていく。
稲穂姫の身投げした岩場は孤立して人が立ち入ることを拒むように残っている。
それから、その岩場に着物を着た女が度々目撃されるようになる。
地元では、稲穂姫の霊だと言って岩場の近くに花がそなられるようになる。
しかし、稲穂姫のことは忘れ去られてゆく。
その後、釣り人の間では、岩の上に着物を着た女が現れると不吉の前兆で土石流にあったりすると言われるようになる。




