6話 恋の果て
祐二は沙衣の動きが止まったため、顔を見ると沙衣は目を見開いている。
「どうしたの。沙衣。」「いるのよ。」
「何が?」「鬼女よ。」
沙衣はそういうと店の奥を指さす。そこには色白の美人がかき氷を食べている。
「あの人?」「そうよ。人間ではないわ。」
色白の美人も沙衣に気づき、こちらを見る。沙衣と祐二は真直ぐ美人のいる席に行く。
「同席してもいいかしら。」「どうぞ、ご勝手に。」
沙衣はかき氷を3つ頼む。美人が言う。
「お嬢さん2つも食べるの。」「1つはあなたのよ。」
「お礼は言わないわよ。」「倉狩峠の鬼女で合っているかしら。」
「雪の鬼女ともいわれているわよ。」「すぐに見つかって幸運だわ。」
「お嬢さん、ただものではないわね。」「気配を殺しているのに気づいたから。」
「いいえ、血の匂いがするわ。どれだけ化け物を殺してきたの。」「いちいち数えていないわ。」
「私、ここでは戦わないわよ。」「奇遇ね。私も戦闘を避けるためわざわざ町の中を探したのよ。」
「用件はなあに。」「この冬に武藤と言う男を助けたわね。」
「最近、同じことを峠で言われたわ。」「食い殺したんでしょ。」
「私の食事の場所にいたからよ。」「今度はついて来てもらうわよ。」
「分かったわ。」
沙衣は武藤に電話する。
「今、鬼女を見つけたわ。札木町のコインパーキングの前のかき氷屋よ。」「分かりました。すぐ行きます。」
武藤は会社を飛び出し、道路を駆ける。そして、かき氷屋に飛び込む。武藤は大きく息をしながら前を向く。そこには夢にまで見た女がいる。
「やっと、見つけたよ。会いたかったんだ。」「私の正体を知っているんだろ。」
「知っているよ。それでも気持ちは変わらない。」「バカな男。」
「一緒に暮らしてくれ。だめなら、お前の手で食い殺してくれ。」「私の負けだ。名前を付けてくれ。」
「名前か、雪の日に出会ったから雪子はどうだ。」「センスがないね。でも気に行ったわ。」
武藤と鬼女の雪子は一緒に暮らすことになる。祐二は沙衣に言う。
「あっさり、かたがつきましたね。人間と鬼女のカップルはありですか。」「人が人外のものと夫婦になった話はいくつもあるわ。」
「それなら、僕と沙衣が夫婦と言うのもありですね。」「何か言った。」
「いいえ。」
祐二は武藤が幸せになることを願った。
武藤は毎日同じ時間に帰宅した。仕事をいつも定時に終わらせて急いで帰宅している。それは雪子が笑顔で玄関に迎えに出てくれるからだ。
その日もいつものように玄関のカギを開ける音がする。雪子は笑顔で玄関に迎えに出る。雪子は突然、腹に痛みが走る。玄関にいたのは憎しみで鬼の形相になった中年の女性だった。
雪子は包丁で腹を刺されたのだった。雪子は仰向けに倒れる。女は叫びながら何度も包丁で雪子を刺す。
「返して、返して、あの人を返して・・・」
そこへ武藤が帰って来る。武藤は女を羽交い絞めして包丁を取り上げるが雪子はすでに息をしていなかった。武藤は女の顔を見てハッとする。彼女は黒木の妻だった。
彼女は探偵を雇って動向を探り、合鍵も手に入れていた。彼女は武藤に言う。
「さあ、私を殺して。あんたの愛する者を奪ったのよ。」
武藤は涙を流す。しかし、彼女を手にかけることはできなかった。




