1話 探偵
武藤は休日の度に坂口町や会社のある札木町で女を当てもなく探していた。2つの町は山間にある町なので大きくはなく、探せば会うことが出来ると考えてのことだ。
結局、武藤は女に会うことが出来なかった。彼は探偵を雇うことにする。札木町にある黒木探偵事務所を訪れる。黒木治夫は武藤に言う。
「お困りごとですか。」「ある女性を探しています。」
「お名前とか知っていることを教えてください。」「その女性に1月の大雪の日に助けられたのです。」
「では名前とかは分からないのですか。」「はい、分かっているのは助けられたのが長田村で20代くらいの色白の髪の長い女性です。」
「そんな若い女性が大雪の日にあなたを助けたのですか。」「私は吹雪の中で意識を失いそうになった時、現れて私を抱えて、近くの民家まで運んでくれたのです。」
「幻覚を見たのではないのですか。」「幻覚なら、あの時、死んでいたでしょう。」
「そうですか。しかしあまりにも現実離れをしていて、情報も少ない。私には・・・」「お願いです。プロの力が必要なのです。」
「しかし・・・」「私は忘れることが出来ないのです。難しいことは承知しています。」
「ではこうしましょう。仕事の期限を1カ月に決めて、見つけても見つけなくてもそこでこの話は終わりと言うことにしましょう。」「分かりました。よろしくお願いします。」
黒木は武藤からできる限り顔の特徴、服装などを聞いて言った。黒木は何とか武藤の願いをかなえようと考えている。
黒木はまず坂口町と札木町が設置している防犯カメラの映像を借りて探すことにする。両町は小さいとはいえ町で設置しているカメラの数は多い。
映像の確認はアルバイトを雇って行うことにする。黒木はアルバイトを3人雇うことにする。黒木自身は坂口町、札木町、長田町の駐在所に武藤の出会った女に心当たりがないか聞き込みをする。
駐在所の警察官たちは口をそろえて言う。
「管轄の住民の顔はほとんど覚えているけど、探しているような女性には心当たりがないね。」「そうですか。よそから来た人かもしれませんね。」
「それだったら余計に目立つよ。美人ならなおさらだろ。」「そうですね。」
黒木は情報が得られず引き上げる。だが、長田町の駐在所は話に続きがあった。




