2話 沙衣、隣に座る
中井祐二は、講堂で講義を受けている。彼はバイトのため講義を休むこともあるが、バイトが無い時は真面目に講義を受けている。
そこに、遅れてきた中野沙衣が祐二の隣に座る。行動の中にどよめきが起きる。男を寄せ付けない中野沙衣が自ら男の横に座ったのである。
祐二は男たちから嫉妬の目を向けられる。鈍感な祐二はそれに気がつかない。それよりも大学内では距離を置いている沙衣が隣に座ったのである。
彼は状況を把握するため頭を高速回転させる。導き出した答えは、祐二の恋心がついに沙衣に伝わり恋人として隣に座ったと言うものである。
祐二は沙衣の肩を抱いて自分に引き寄せて言う。
「やっと僕の気持ちが伝わったんだね。好きだよ沙衣。」
沙衣は祐二の顔面を机にたたきつけると後頭部を右足でぐりぐり踏みつける。近くにいた男子学生がひそひそ話をする。
「見たか。」「ああ、白だった。」
沙衣は聞き逃さない。
「見たわね。」「いや、偶然だ。見えてしまったんだ。」
沙衣は、汚物を見るような目で男子学生を見る。男子学生は心の中で叫ぶ「やめてくれ、そんな目で見ないで。」もう1人は心の中で感謝する「ああ、その目いいです。ご褒美です。」
教授が沙衣を注意する。
「そこの君、講義の邪魔だ。出ていきなさい。」「はい。分かりました。」
沙衣は、祐二を引きずって講堂から出ていく。彼女は中庭のベンチに行くと祐二を座らせる。祐二が沙衣に言う。
「僕の好きな気持ちが伝わったのではないのかい。」「まだ寝ぼけている。2,3発殴りましょうか。」
「大丈夫。目覚めています。」「ならいいわ。」
「どうして僕の隣に座ったの?いつも1人でいるでしょ。」「ロードスターが治ったのよ。」
「あの車、廃車じゃないの。」「勝手に廃車にしないで、修理代はかかったけどね。」
「車が治ると僕の隣に座るの。」「治ったらドライブに行くでしょ。誘おうと思ったのよ。」
「一緒にドライブ!デートだー」「デートではないわ。あくまでドライブよ。」
沙衣はドライブと言うが、誰が見てもデートである。祐二の期待は高まる。そんな祐二を男たちは逃さない。祐二は拉致されオカルト同好会に連れていかれる。
「どうして、お前の隣に中野沙衣様が座るのだ。」「僕は彼女と仲がいいんだ。」
祐二は見栄を張る。
「なぜ、仲がいい。男に興味すら持たない中野沙衣様がお前だけにフレンドリーなわけないだろ。」「彼女の元でバイトをしているんだ。努力しているんだ。」
「何だと、バイトって、アレをしているのか。」「あの噂の荷物持ちか。」「やめろ、死んでしまうぞ。」
男たちが沙衣のところのバイトと聞いただけで青くなる。バイトをしたためにトラウマになったのは良い方で廃人になったとのうわさまであるのだ。
「死ぬのが怖くてバイトが出来るか。」
祐二が言い切ると男たちは負けを認める。




