表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
消えた君と桜がみたい  作者: 木端慎一
5/8

5

彼女は『最後』という言葉をうっかり口にだした。最後ということによって僕が来る確率を少しでもあげようという打算的なうっかりには見えなかった。

そもそも、彼女にそんな器用な事ができるとも思えない。

だからこそ、僕は最後という言葉に違和感を覚えた。でも僕はその事を、追求せず黙っていた。

宮森さんの言った、最後という言葉にたいして僕が関心を示せば、今まで言ってきた発言や行動に矛盾がでてくるし、まるで僕が宮森さんと離れるのを寂しがっているように映ると思ったからだ。

結局その日、僕は「時間とタイミングがあえばね」と同じような意味合いの言葉をならべて話をはぐらかした。

いつもなら吹き出したように笑うはずの彼女は笑わずに「うん、わかった」とだけ答えた。

僕らはそのまま、特に会話もせず電車に乗った。

重たい空気の中、電車に揺られる。彼女の横顔を見ると、珍しく沈んでいる表情なのが印象的だった。

「じゃあ、私、ここだから。今日はありがとう」と宮森さんは最後に笑顔を作り、電車を降りた。

宮森さんの家は僕の家と近いはずだけど、その日、僕とは違う駅で降りていた。


次の日、宮森さんから着信がきていたが、僕はでなかった。

でればきっといつものように、「どうせ暇でしょ?」とか断れば「なんでいつもそうなの?」とかいうに決まっている。

そう思い込もうとしていたが、今回は違う気もしていた。クレープを食べながら話した時の宮森さんは明らかにいつもと様子が違っていたからだ。それならなおさら出たほうがいいのかもしれないけど、僕は宮森さんの言った『最後』という言葉をきにしていて、会う勇気が持てなかった。

半信半疑ではあったが、いつもなら大量にかかってくる着信も一件に止まり、ますます宮森さんの言葉に信憑性が帯びている。

そして、電話にでなかった理由はもうひとつあった。

宮森さんが見たいと言っていた桜を僕は調べた。

僕の住んでいる街には大きな神社があり、そこには大量の桜が咲き、お花見の名所にもなっていた。

しかし、よくよく調べると、そこは昔、駆け落ちをする場所としてよく使われていた神社だという。それにちなんでか、今でも恋を成就させるデートスポットとして人気の場所になっている。

そんなところに宮森さんと桜を見に行き、同級生に見られでもしたら大問題だ。

宮森さんを好きだという男子は意外にもおおい。僕は昔から知っている分、容姿や性格にたいし、特別なにかを思ったことはないが、他の男子生徒からすると、宮森さんと仲よく話す僕を羨み憎むやつもいるほどらしい。

そんな状況で、デートスポットとして有名な神社にいき、同級生にでも見られれば、僕は学校にいられなくなるかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ