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消えた君と桜がみたい  作者: 木端慎一
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自分の思った、感じた事をそのまま言葉にできる人は実際にどのくらいいるのだろう。

僕は本を読みながら、主人公の少年が悪役である髭男にたいし、はっきりと、しかも理路整然と意思を伝えているのを見てふん、と鼻を鳴らした。

「こんな風に言えれば苦労しないよ」と毒づく。そして、所詮これは物語フィクションだな、リアルじゃないと評論家気取りになっていた。

僕がそう思ったのには理由があった。

なぜなら、悪役である、知能の低そうな相手も、それまで言っていた的外れな言動が嘘のように、主人公の言いたい意図を正確に理解し、そして次にどう行動すれば主人公の少年が嫌がるかをわかっているからだ。

こうなってしまえば、八百長と何ら変わらないなと僕は多少ひねくれた目線で捉えることをやめない。ふと彼女の顔が頭の中にぼんやりと映し出され、僕は自分自身に呆れる。

毎日のように僕の前に現れるおかげで、僕の日常と脳は彼女がいることが普通になってしまっていた。

彼女は僕にとって悪役じゃないけど、僕の言葉の意図を正確に理解しているかと言われれば疑問が残る。

クレープを買って公園で食べたのが先週のことだった。人混みをなんとか抜け出して、たどり着いた先は閑静な住宅地になっていて、僕と彼女はどこかの団地の下にある、公園のような広場のような場所で何とも言えない味の納豆クレープを食べた。

「意外といけるね」と彼女は笑う。

「まぁ、食べれないこともないけど……」

「来てよかったでしょ?」

良かったと満面の笑みで返す僕を期待しているような表情をしているが、僕は自分に正直に答える。

「うーん、未知の味を知れたっていうのは貴重な経験だからよかったのかもね」

ぷははと恒例の吹き出した笑いをしたあと僕に対する不満のような言葉を羅列する。

「本当、夏木君は昔から素直じゃないよね。私が褒めても無愛想だし、遊びに誘っても全然きてくれないし」

「僕は究極の効率重視人間なんだ、無駄なことはしないし、無駄な言葉も話さない」

「それ面倒くさがりなだけでしょ」

「ネガティブに捉えるとそういうとこもあるのかもね」と僕は適当に返した。

「本当…… 私が強引に引っ張ってこないときてくれないんだから……」

「僕が君を引っ張って連れまわすことなんて一生ないよ。そんな無駄な事はしない主義なんだ」

「なさそう」と今日の彼女はよく笑う。

「夏木君、実はね……」

納豆の粘りとクレープの甘さが口の中に残って不快に感じはじめた時、彼女は改まって僕を見ていた。

「なに? 言っておくけど、その手に持ってるの食べてっていっても僕はいらないよ」

「そうじゃないの、明日、一緒に桜を見に行かない?」

「なんでそんなに桜が見たいの?」

僕の質問にたいし、彼女は口をもごもごさせている。納豆の粘りけが気になって話せないんだなと都合よく解釈したいが、そういうわけでもないらしい。

「これが最後だから……」

ボソッと彼女はそう呟いた。

「え? 最後?」

はっとしたように、あ、と言ったあと「今のは気にしないで」と付け加えられた。




もしかすると、改稿するかもしれませんm(__)m

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