かくれんぼしましょ! あなたが鬼ね!
あなたは街を歩いている。
日差しが強く、ひどく蒸し暑い夏の昼過ぎだ。
こんな日に外出はしたくなかったが、避けようもない用事であなたは自宅を出た。
額に浮いた汗をハンカチで拭いていると、
「かくれんぼしましょ! あなたが鬼ね!」
小学生くらいの子どもたちが突然あなたを指差し、走り去っていった。
あなたは驚きはしたが、最近は妙な遊びが流行っているのだな、と考えて再び歩き出す。
「かくれんぼしましょ! あなたが鬼ね!」
今度は老女だった。うふふふとねっとりした笑い声を残して人混みに消える。あなたは思わず視線をさまよわせるが、見つからない。
「かくれんぼしましょ! あなたが鬼ね!」
続けてスーツの中年男。
「かくれんぼしましょ! あなたが鬼ね!」
続けて若い女。
さすがに不気味になりはじめ、また怒りもおぼえてきたあなたは、人混みをかきわけて女の後を追う。
「かくれんぼしましょ! あなたが鬼ね!」
「かくれんぼしましょ! あなたが鬼ね!」
「かくれんぼしましょ! あなたが鬼ね!」
女を追う合間にも、次々に声がかけられる。
「かくれんぼしましょ! あなたが鬼ね!」
「かくれんぼしましょ! あなたが鬼ね!」
「かくれんぼしましょ! あなたが鬼ね!」
探しても探しても、女は見つからない。
やがて声をかけられなくなる。
気がつけば、あなたの周りにはもう誰もいない。
見渡す限り、もう誰もいない。
少しでも涼しくなりましたら幸いです。
がらっと作風の変わる軽い気持ちでサクッと読める作品も書いてますので、よかったら口直しにどうぞ。
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