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お出かけってこれで合ってますか? 3

「はえ〜凄いですねぇ〜ここ」

「ですよねですよね!テンション上がりますね!」


 僕は先輩に連れられ、大きなデパートのような場所の6階。ゲーム売り場と、でかでかと書かれたフロアにいる。


 あの後僕のスマホのケース?みたいなのを買ったあと、今度は先輩の買い物に付き合うことになった。


 大きなテレビや、モニターに移る様々な映像達。所狭しと置かれたゲームのパッケージと、老若男女の入り交じったような店内。


 みんなが好きな場所なんだろうな、なんて事が店内のお客さんの顔から伺える。まぁ横に居る先輩が、すんごく嬉しそうなのもあるんだけど。


「私基本的に近場のゲーム店しか行かないので、久々に大きなところに来るとアガりますね!あ、これ発売してたんですね!

 これは来月発売のゲームの試しプレイ!?気になっていたんですよね!日向くん、日向くん。行きましょ!」

「はい、でも店内は危ないので―って危な!」


 小走りで向かおうとする先輩がカーペットが躓きそうになる。咄嗟に後ろから先輩のお腹に腕を回して、転ばないようにした。


「もう、言ったそばから......」

「す、すみません...へへへ......」


 へにゃっと笑いながら、少し顔が赤い先輩。


「で、では、気を取り直していきましょう!」

「はい!」


 そう言う先輩はすぐにお目当てのゲームコーナーを見つけ、新発売と大きく書かれたゲームを手に取る。


 新発売と書かれているだけあってか、他に並んでいるものより確かに残り僅かって感じだった。


 僕はてっきりそれでお会計で終わると思ったが、先輩は鼻歌を歌いながら店内を回り始めた。


「こ、これは数量限定で、ネットにも出ていないものが!むむ、でも中古品にしては少しお高いですね。今回は見逃します。」

「買いたいやつが他にもあったんですか?」

「いえいえ、これだけですよ〜。」

「?」


 はてなマークを浮かべる僕に、先輩は説明を始めてくれた。


「大きな店舗でしか置いてないゲームとかあるんですよ〜。そうじゃなくても、見てるだけで楽しいですし」

「そういうものなんですか?」

「そういうものです!」


 力強く力説する先輩は本当に楽しそうだった。ゆっくりと店内を歩きながら、先輩はゲームの説明や思い出を語ってくれる。


 チラホラと見える大きな機械。あれ、確か部室に置いてあったやつだと思うんだけど。


「そういえば日向くんは普段ゲームします?」

「ゲームですか?うーん、昔に少しだけやりましたけど......」

「ほほう!さすがの日向くんもゲームはやっていましたか!」

「さすがって......」

「それでそれでどんなゲームですか!?ハードはなんですか!あ、ハードって言うのはゲームの機種のお話で......」

「んーすみません。あんまり覚えてないですね。ソフト?とかそういう感じの見れば分かりますけど......」

「では探してみましょう!」


 その後くまなく探したけれど、昔僕がやったゲームは一向に現れない。バラ売りの所も行ったけど全然見つからなかった。


「というか最近はこういうゲームなんですね。すごい薄かったり、小さかったり......」

「え......!?」


 僕の言葉を聞いた先輩は何やら怖いことでも聞いたような表情になった。あれ、僕何かおかしなこと言ったかな?


「え、えっと......」

「ちょっとこっちのコーナーに来てください。」


 何やら真剣な表情の先輩の手を引かれ、僕は新しいもので飾られたショーケースの森から抜けて、古ぼけたようなものが多く飾ってある場所まで誘導された。


「ここは?」

「今のゲームの根源たるゲームたちが眠っている場所です。だいたいプレミア価格が付いているのでマニアしか来ませんが......」


 そう言われ、周りを見渡して見ると先程居た場所は子どもや親子の姿が多くあったけど、ここにはおじさんと言われる人が多い気がする。


 僕はゆっくりとショーケースに並べられた古めかしいゲーム達を眺めて歩く。先輩も同じように、眺めながら歩いていると。


 見つけた。


 大きく箱ありと書かれた文字、初版限定品プレミア価格とも書かれ、騎士が姫を守りながら何やら魔物みたいなものと向かい合っているパッケージ。


 右上にはハイパーコンピューターと書かれたそれを。


「あ、先輩ありました!これですコレ―」


 僕が嬉しそうに指さしたものを見た瞬間、深刻な表情で膝をつきながら、言葉を吐く美空先輩。


「ハイコン時代かよォ......!」

「?」


 はてなマークを浮かべる僕と、地面を叩くように拳を振り上げる地面を叩く先輩。もしかして僕、何かやってしまいました?


 何か気がついたような先輩は咄嗟に経つと、また僕の手を引いて今度は違うコーナーに連れていく。


 そこは大きな画面が多くあって、そこでは映画が何やら放映されているようだった。少しほかと違うのは、さっき見た少し箱の大きさの機種が目の前に置いてあることだろうか。


 目の前では、ゾンビのような敵と戦うおじさんと歳若い女の子の映像。こんなに映画放映しても大丈夫かな?


「こ、これみてどう思いますか......?」


 慎重に言葉を選ぶような先輩に少し違和感を感じたけれど、僕は素直に感想を述べた。


「こんな映画やってたんですね〜。というかなんで映画コーナーに―」

「これ、ゲームです......」

「......え!?」


 思わず大きな声が出て、しばし店内の視線が僕に注がれる。はっと気づいたが、その視線はどこかへ消えていく。良かった......良い意味で他人に興味がない人達で。


 ほっと胸をなで下ろすもつかの間、まるでお化けでも見るような目をした先輩が僕に言葉をかける。


「こ、ここのヤツ全部ゲームなんです...けど......」

「えええ!映画の中みたいですよ!」


 僕は慌てて見渡す。画面の中では、侍のような格好の人が、夕日に照らされる黄金色の畑のような場所で戦っているし、民族衣装に包まれた少女が機械のような生き物と戦っている。


 ええ、これが全部ゲームってすごいなぁ。


 感心しながら眺めている僕に先輩は、残念そうな人を見る目を向けながら肩にぽんと手を置いた。


「タイムスリップ?」

「してないですよ!」


 その後、半信半疑の僕は実際にゲームプレイするまで先輩の言葉を信じられなかった。


 本当にゲームなんだと理解するまで、いや理解してからも先輩にゲームプレイさせられ、店内から出る頃には夕日が差し込んでいた。




ゲームショップって、テンション上がりますよね。

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