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お出かけってこれで合ってますか?

カクヨム様でも投稿しています。


また、今日は私の誕生日ですので、三話分投稿していきます。

お付き合いの方よろしくお願いします。

「かなり早くついたけど、ここでいいんだよね......?」


 太陽が照らす駅の改札の外。土曜日だからか多くの人達が行き交う中、僕は腕時計の針を追いながらどこかソワソワしていた。


 シャツの襟を確認したり、改札の鏡で前髪なんてものを確認したりしてる。


 僕は今、春葉原という駅の改札で、ある人を待っている。


 どうやらここはかなりオタク?とか言った人達が聖地?とするような場所らしい。


 全く分からないが、でも同じ姿の人達が多いし、何やら会話も専門的なことをずっと興奮しているように話しているので、多分この駅だと思うんだけど......。


 今日何度目かの時計の確認をしていたら、少し改札の方が騒がしくなるような気がした。


 いや、この待ち合わせ場所で待ってて静かな時なんてなかったんだけど、なんだろう。可愛い人を前にした男の咆哮みたい......。


 そう思って僕が目を向けた先には、待ち合わせの相手が小走りでこちらに向かってきていた。


「す、すみませ〜ん!お待たせしましたぁ〜」


 はぁはぁと息を漏らしながら、ほのかに染まる赤い頬。光を少し透かす綺麗な黒髪が風に揺れ、端正な顔が僕を見上げるように置かれている。


 可愛いという次元ではないと...思う。こんな可愛い人と僕は今まで話していたのかと思うと、心臓が運動会を始めてしまう。種目はなんでもいんだけど。


「...?」


 キョトンとしたような美空先輩。栗色のカーディガンに、可愛らしいロングスカート、肩掛けの鞄を持っているがその全てが彼女の良さをあげるために存在しているとさえ思う。


 そう、こんな可憐で素敵な先輩と僕は今日一日、お出かけに行くことになっているのだ。


「日向くん、私服似合いますね!」


 しまった!あまりにも見惚れていたから、先手を打たれてしまった!


 僕もかろうじて鳥が泣くように声を絞り出す。


「せ、先輩もとても似合っていて...その...可愛いです......。」

「ふ、ふわぁ...あ、ありがとうございます......!」


 嬉しそうに両手を顔で仰ぎながらそんなことを言う美空先輩。他の人にはどう見えているのだろうか。僕は釣り合っているのかな?なんてそんなことを考えてしまう。


「では、行きましょうか。戦場へ......」

「先輩...格好可愛いのに滅茶苦茶かっこいいですね......」


 ごおおと立ち上るような湯気と熱気と、あとなんか熱そうな何かを背景に携えて先輩は歩き始めた。


 今日はただのお出かけではなく、僕のスマートフォンを手に入れる為のお出かけだ。先日連絡先交換できない事件簿の後、どうせならスマホ買いませんか?と、美空巡査に言われて今に至る。


 色々と疑問はあったけど、高校生にもなったし僕も買いたいと思っていたので、快く了承しこのお出かけになった。


 僕がスマホを買うとなって家での大騒動があったけど、ここでは割愛する。つかつかと歩く先輩の後を追って、横に並びながら僕は疑問を先輩になげかけた。


「ところで、未成年でスマホって買えるんですか?」

「勿論です!色々と書類が必要ですが、そのために連絡をしようと昨日...連絡......あ」


 ダラダラと汗を流しながら、先輩は少し涙目で僕を見つめる。うん、連絡取り合うためにスマホ買いに来たのに、連絡は取れないです......。家の電話も教えてないし......。


「あたしは失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した―」

「こ、怖いですよ、先輩!」

「でもでもだってぇ〜!」

「まぁ一応保護者代理にはスマホ買うこと話したので、書類は預かっていますよ。」


 春香姉さんに持たされた書類と、一応何かがあったとき用の電話番号が書かれた紙。最悪僕の身分を明かせば、花影という家のお陰で買えないものはないだろうと言われたけど......。


 ふええと泣きそうな先輩にハンカチを渡しながら、僕は微笑んだ。その様子に少し調子を取り戻した先輩が僕の手を引いて歩き始めた。え、手を引いて?


「せ、先輩歩けますよ!」

「で、でも人が多いのではぐれない為です―」


 そう言い終わろうとした瞬間、先輩が人の波に呑まれて消えてしまった!


「はぐれるって、先輩の方ですかああああ!」

「ごめんなさ〜い!ひ、人がゴミのよう...だ...プゲェ」


 なんか鳴っちゃいけない音がなった気がするから早く助けに行かないと!


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「つ、ついに着きましたね......」

「は、はい...辛く険しい道のりでしたが...ついにdokemoに着きました!」


 ボサボサになった髪の毛の先輩と、シャツがシワシワになった僕はようやく念願のスマホショップに着くことが出来た。


 駅から離れていないはずなのに、ここまでかなりの時間と体力と何かを吸われた気がする......。スマホ買うのって大変なんだね......。


 ボサボサの髪を少しだけ直すような先輩の髪の毛にごみがついているのを僕は気づいた。


「先輩...髪の毛にゴミが。」

「え、どこですか?」


 どこですどこですと探すが、一向に取れる気配がない。自分で取るのって意外と難しいよね、気持ちはわかる。


「先輩、じっとしてください。」

「え、あ、あわわ......」


 じっと目を瞑り、僕の方に少しだけ顔を上に向ける先輩。唇がしっとりと、なんだか艶かしい。髪の毛がボサボサなんて思ったけど、その乱れた髪の毛がなんだか少し―。


「取れました...か......?」

「え、あ、はい!取れました!」


 今日何度目かの見惚れている自分に気づき、すぐさま髪の毛のゴミを取ると僕は平静を装った。うん、自制しないと。


「さ、行きましょう!」


 ふんすふんすと何やら興奮しているよういつもの先輩に、少しだけ笑みが溢れ、僕達は自動ドアの向こうに歩みを進めた。



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