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オタクな女の子は嫌いですか?

初めて書くラブコメです。

よろしくお願いいたします

 

「それでですね。推しはだれなんですか!?あー待ってください。私が当てます、あてますとも、この美空楓花(みそらふうか)がズバッと! 『俺の奥さんがタイムリープしてるわけが無い』は初刊から三ヶ月で4冊も出してコアなオタク達の度肝を抜いてはいる作品ですが、さすがに4巻ですから登場人物も、絞られてきますからねぇ〜。ズバリヒロインの瀬戸さんでは!」

「あ、あのぉ......」


 夕暮れ指す部室の一室。目の前で何やらよく分からない事をずっーーーーーーーーーーーーーーーーーーと楽しそうに喋るこの美空楓花先輩。僕は何がなにやら分からないでここまで来てしまった。


 いや幼少期から物事を断れないとか、臆病だとかそうゆうのが現在の状況を作ってるんだと思うんだけど...さすがにこれは......。


「あー意外とサブヒロ好きな感じですか?それはそれは失礼いたしました。いやはや私がヒロイン萌なもので、じゃーサブヒロインの萩路さんですか?いやはやお目が高いですよ〜。

 確かにツンデレ系は使い古されてね?って私も思いましたが、古き良き一回ぞっこんになるとめっちゃくちゃにデレるタイプツンデレだとは私も驚きましたよ!ええ、ええ、それでお答え―」


 僕は耐えきれずに自分でも大きすぎる声を出してしまった。


「あ、あの!」

「ふええ?あ、そうですよね。私ばっかりがお喋りしすぎて、その申し訳ないです〜。お久しぶりにこうゆう会話をしたもので......。」

「い、いえそう言うことでは」

「......?」


 キョトンと可愛らしくはてなマークを頭上に挙げながら、小首を傾げる美空先輩。様々な状況も相まってなんて言い訳する暇もなく、僕の心臓は飛び跳ねてしまう。


 長く漆黒のような黒髪。シルクのような艶に、お手入れされているのだろう、枝毛?が多分一本もない。男の僕にはそういうの分からないけど。


 陶器のような白い肌に、大きな瞳に女子高校生が欲しいと切望しているであろう綺麗なまつ毛、整った鼻筋、しかしおっとりとしたような幼さが目の前の彼女からは流れ出ている。あまりのおっとりさに背景にお花が見えたような気がしたのは僕が初めてではないはず!


 そしてその幼さとは大きく無縁のような無敵なスタイル。


 あれこそボンキュッボンとも言えるだろう、ジャージの上からでもわかるあの破壊力!

 そして揺れる度に、ほのかに香る甘い香り。香水の嫌いな僕でも、もっと吸っていたいと思ういい香りだ。


 つまるところ彼女の美しさ、可愛らしさを説明するのに人目見た僕でさえ読書感想文数十年分の量が必要になるほど、目の前の彼女は可愛かった。


 うわっ、自分で思ってて、死にたくなってきた......。


「そ、それでそれで、せ、正解は......。」


 続きを促すようにテーブルに前のめりになり、その豊満な爆弾が二つ導火線のように揺れる。じっと見られると恥ずかしくて耳まで赤くなってしまう。


「え、ええと...その......」

「はい...はい......!」


 もう隠し通せない。いや、隠そうとか考えていた訳では無いけれども。ここはしっかりと言うべきなんだ!


 喉を飲み込む音が聞こえたような気がした。それは僕からなのか、それとも美空先輩からなのかは分からないが、張り詰めた糸が揺れるようなそんな気さえする。


「す......」

「す......?」

「すみませんでしたァァァァ!僕はそのラノベ?っていうの初めて知りましたァァァァァ!」

「え、え、えええええええええぇぇぇぇぇぇ!?!?!?!?!?」


 僕の突然の発言に美空先輩は大きく叫んだ。その後僕の肩をガシッと掴み、必死の形相で僕に詰寄る。


「え、嘘ですよね?嘘だと言ってください。うそだといってくださあーーーーーーいぃぃ!!!」

「あわあわあああわああわあ先輩揺らさないでください......ウエップ」

「じゃあ、じゃあ私の早とちり!?え、本当にラノベを知らないんですか!?」

「えっと......」


 僕は頼りない記憶を辿りながら、当てはまりそうな文学作品を言葉にした。


「ら、羅生門なら少々......」

「あー確かに毛抜き婆さんと男の恋愛って意外と萌えますよ―それ教科書のやつーーーーー!!!」


 とても綺麗な先輩の、それはとても美しい声でのノリツッコミと呼ばれるものだろうか。なんだかそれはとても、面白くて、僕は思わず笑ってしまった。


 そんな僕を見て先輩も同じように笑って、二人して部室いっぱいに大きく笑っていた。


 どうしてこんなことになったんだっけなぁなんて僕は呑気に考えながら―。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 朝の通学路。僕は木々の間から差し込むような木漏れ日に照らされながら、学園から渡された鞄を持ちゆっくりと歩いている。


 綺麗な紺色の制服を擦りながら、白く輝くような大きな壁を眺め、僕はここに通っているんだなぁ、なんて当たり前のことを考えている。


 僕は花影日向(はなかげひなた)。この王将院学園に通う高校一年生だ。この僕の通う王将院学園、周りからはお金持ち学校なんて言われているらしいけど、僕はその評価は少し見当違いだと思う。


 お金持ちではなく、超が三つ以上着くほどのお金持ち学校だ。


 小中高一貫のこの学校は、ありとあらゆるお金持ちが通っている。僕も一応そのひとりなんだろうけど、あんまり実感湧かないのが実情だ。


 そのことはおいおい話すとしよう。


「おーい!日向、おはようー!」

「花ちゃん〜おはよう〜暑いねぇ」

「桜雅君!それに、もち丸君もおはようございます!」

「だー高校生ってのに堅苦しいぜ、日向!そこはおはようでいいんだよ。言ってみな?おはようーって」

「お、おはよう?」


 この元気な子は翡翠桜雅(ひすいおうが)君。幼稚園の頃からの幼馴染で僕の大親友。金色の短髪でピアスもしてるようなちょっと怖い外見だけど、ものすごく頭が良くて、いつも助けて貰ってる。


 それにこのポカポカで過ごしやすいのに、滝のような汗を流しているのは、皐月駿(さつきしゅん)くん。僕達や親しい人達からはもち丸くんって言われてるお菓子メーカーの一人息子。


 僕達は入学して1ヶ月立った日からも、こうして登下校を共にしている。


 そんな何ともないような一日の終わり。


 高校生活も一ヶ月となるとある程度授業のパターンも決まってくるし、どの曜日が早く帰れるとかも分かってくる。


「あ、委員長〜これ落し物らしいんだけど、ちょっと届けてくんない?」


 その日の最後の授業が終わりを迎え、帰りの支度をし始めた僕に、クラスメイトの男の子が話しかけてきた。


「ん、落し物?」

「そそ、ごめんね委員長。俺これから財閥の披露宴があってさ!本当にごめん、これの埋め合わせは必ずするから!」

「え、ちょっと......!」


 そういうと彼は急いで鞄を持ちながら教室から出ていってしまった。

 財閥の披露宴なんて僕初めて知ったけど......。ま、そういうこともあるかと一人納得し、僕は落し物と言われた小説を持って図書室へと向かった。


 僕は断れない性格なので、当然残り物になってしまったクラス委員を押し付けられてしまった。昔から目立たない僕にとっては少し迷惑だったが、そのおかげか話しかけられることも増えて今では誇りを持ってやっている。


「えーと、図書館はこの6階エレベーターに乗ってっと......」


 マンモス高校でさらにお金持ちのこの高校は学内の移動でも、エレベーターやエスカレーターなんて当たり前。12階からなるこの学園では、屋上にヘリポートなんてあるらしい。


 そして一年生は1階にあるクラスなんだけど...どんどん人が増えてきたな。うわ、柔道部が乗ってきた!


 僕の体が悲鳴をあげる前に6階に無事ついてくれたんだけど、僕は投げ出されるように外へ。フラフラのまま、僕は図書館へと向かったんだけど、あまりにフラフラで目の前をちゃんと見ていなかった。


「きゃっ!」

「うわっ!」


 図書館から出てくる女性に当たってしまった。頭を抑えながら、小さく震える女性に僕は膝をガクガクと鳴らしながら大きく謝った。


「すすすすすす、すみませんでした!僕、前を見ていなくて...え、えーと大丈夫ですか!?」


 その女性は二年生の制服に身を包み、床を見ながら、プルプルと震えていた。しまった、怒らせてしまった。このお金持ちばかりの生徒達を怒らせてしまうとは、僕の人生はどうなってしまうんだ!とも考えていたんだけど。


「そ、それ......」

「へ?」


 彼女が指さしたのは僕が持っていこうとした小説だった。ん、初めて背表紙見たけどなんか可愛らしい女性が描いてあって―。


「同士!」

「へ、へ?」

「この学校でそのラノベを読んでいる人は初めて見ました!野良で会うのは初めてです!ここだと人の目がありますね...。ささ、こちらへ!」


 僕は彼女の手をそのままなすがままに引かれ、部室と言われた部屋へ通された。

 そこは部室とは名ばかりの普通の部屋のようだった。


 テレビに冷蔵庫にエアコンに、ええ!?トイレまで!


 数多くの本棚に所狭しと置かれている本。ん、なんかここら辺の本凄く薄いな。なんだろう?あとテレビから伸びるなんか機械が多いけど、なんか初めて見るばかりだ。


「ここら辺に〜ポッドとかあったんですけどぉ〜えーとぉー」


 おそらく先輩であろう彼女は可愛らしく腰をフリフリしながら、茶器が入っている棚を開けたり閉めたりしている。


「あ、そこに座って下さい〜。私はお茶の用意を―。あ、ちょっ!」


 そう言いながら、水を入れたポッドをひっくり返し水浸しになってしまう先輩。制服から除くワイシャツが透けて、そこから大人びた下着がァ!?


「せ、先輩前々!」

「ふえぇ〜。またやってしまいました...。ちょっと待っててください。こんなこともあろうかとジャージの予備が......」


 予備!?予備って言った?ここ完全に家じゃないの?すんごいなこの学園。そう思っていると先輩は本当にジャージを持って奥の部屋へ行ってしまった。


 手持ち無沙汰の僕はとりあえず促されたソファーに腰を落とす。うわ、すんごいふかふか。なんだろうこのままだとダメな人間になりそうな感じが......。


 僕は初めて得られるその快感に負けないように近くにあったクッションを手に取る。


 そのクッションはとても可愛らしい女の子がプリントされたようなもので、僕は初めて見るそれをじっと眺めていた。


「ふーん。最近ってこうゆうのが流行りなのかなぁ?ん、裏もプリントされて...って!ほぼ裸じゃん!」


 なにか見てはいけないものを見てしまったような気がして僕は直ぐにそれを裏返し、おしりに引いた。


 そうしているうちに先輩は、着替えたようでジャージ姿に身を包みながら、ぽわぽわとした花弁を背景に出てきた。


 僕は一応目をゴシゴシと乱暴に吹いたが、花びらはそれでも消えなかった。


「す、すみません〜。私昔からドジって友達に言われて...気を取り直してお話を始めましょう!」


 なんだか良くない流れを感じて僕は先輩に聞いてみることにした。


「お、お話とは?」

「ん、そんなのひとつじゃないですかぁ。」


 うふふと笑いながら当然わかってるくせにぃという雰囲気を出しながら言ってきた。


「オタク談義です!」


 可愛らしくそう言い放つと談義とは名ばかりの先輩だけの独断トークがそこから始まった。それこそ、夕日が差し込み、冒頭のような状況になるまで。


 僕は話し出すタイミングを失い、魂が抜ける感覚に陥りながらも先輩の話を聞いたんだ。




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