勇者の加護
水の都レインの邪境討伐当日。今日は緊張しているのかだいぶ早く起きてしまった。
俺はその空いた時間を使って軽く準備をする。武器などのレベルアップをし1時間くらいが経過した頃、誰かがドアをノックする。こんな朝早くからなんだ?と思いつつもドアを開ける。
そこにはレインの宿屋の主人が立っていた。
「神楽坂京さんですね。お荷物が届いております。それと...」
「ありがとう。」
荷物?俺は何か頼んだか?袋を受け取り再び主人を見た。なんだろう、横に見覚えのある少女が立っている。
あぁ、武器屋の親父防具をくれやがった。
「あっあの、一緒に邪境と戦わせてください!!」
昨日ゴロツキから助けた少女だ。
「え、えぇ。」
そこで、昨日レインに向かって歩き始めた時のことを思い出す。あの時、俺は確かに誰かに後をつけられていた。
「お前、昨日俺のこと尾行してたか?」
「えっ!あっ!はいぃ...」
「朝、掃除しようと外に出たら店の前に寝ておりまして。」
「主人、荷物ありがとさん。ここからはこいつと二人きりで話す必要があるっぽいんでな。」
「ごゆっくり。」
と言い残すと宿屋の主人は歩いていく。
「さて、どういうことか説明してもらおうか。」
「はい。昨日勇者様に助けていただいた後、武器屋に入るのを見まして。」
「ああ。」
「それで、防具をつけて出てきたので冒険者か何かだと思いついて行ってみることにしました。」
「うんうん。」
「レイナから出て徒歩2時間あたりを過ぎた時に、道端からナーワルディアーが出てきて危ないと思い助けようとしたのですが勇者様が突然手に持っていた武器を構えナーワルディアーに向けて撃ちました。」
「ああ、撃ったな。」
「それまでは勇者様の武器は何処かの国の最先端の武器や何かだと思っていたのですが、ナーワルディアーを倒した後手に持っている武器が消え、別の武器が出てきたのです。」
「ああ、勇者だからな。」
「お名前を聞いてもしやと思っていたのですが、そこで確信しました。」
「勇者ってことに?」
「はい。」
ああ、そうゆうことか。つまり自分はゴロツキから身を守った俺の力になりたいと。
「勇者様!!失礼かもしれませんが、大好きです!」
別に可愛いからいいけど、そしてその格好で言われてもなぁ。
「急にどうした?」
「私は勇者様の勇敢さに感動し、力になりたいと思い共に邪境と戦いたいのです。」
な、なんか急に人柄が変わった気がする。
「わ、わかった。仲間にしてやる。ただ、お前の武器は?」
「あ...」
この反応は持ってないな。確か俺の武器、複製できたような気が。おお、これだ。
「どういう武器がいい?遠くから強力な弾を撃つか、近くで走りながら撃つかだ。」
「えっ、えっと〜遠くから強力な弾を撃つ武器がいいです。」
「分かった。」
俺はスナイパーライフルを複製して渡す。強さは...大丈夫だ。さっきLv50まで全ての武器を強化した。
「こんな思いものを勇者様は軽々と扱っていたのですか?」
「重いか?これ。」
「重いです。ですが勇者様が与えてくださったもの。必ず使いこなしてみせます!」
「そうか。頑張るんだぞ。」
「はい!」
そんなこんなで朝から色々あったが、仲間が増え邪境に向かって宿屋を出た。
邪境の侵食が進んでいる方向に向かって足を進める。
「おい、防具は大丈夫なのか?」
「はい。攻撃を受けなければ大丈夫なので。」
そういえば名前を聞いていないし、敬語だと堅苦しいな、よし。
「っていうか名前を聞いていなかったな。」
「ユーリです。」
「ユーリちゃんか〜。じゃあユーリって呼ぶぜ。」
「ありがとうございます。」
「なぁユーリ。俺に敬語使うのやめろ。」
「え!」
「堅苦しいし、ユーリともっと仲良くなりたい。すごく俺のタイプだしな!」
「わ、分かった。ありがと、京。」
「おし!それでいい!」
と、気づいたら大地が黒く変色した場所が見えてきた。
「あれが邪境か。」
「確かにあれっぽいね。」
その黒い大地には日本のゲームや漫画で見たことのある悪魔のような魔物が数千とうろついていた。
「いいか、ユーリ。リロードを忘れるなよ。」
「うん、分かってる。」
正直言って俺の銃色々とチート性能だと思う。弾がなくなったマガジンを引き抜いたらそのマガジンに勝手に弾が入りマガジンを差し直すだけ。どうやら俺の銃のステータス、複製品にも反映されるらしい。
「ねぇ、京。この戦いが終わったら、アサルトライフルも使ってみたい。」
「ああ、いいんじゃないか?多分お前に似合うぞ?」
そんなことを話しながら、俺達は悪魔に向けて引き金を引いた。