呪いに恵まれ、才能に恵まれない
「あとは、大事なこと……そうですね。君の手助けとなる力を二つばかり。一つは、呪いの副作用だから、正確には一つですが」
魔王は指をピンと立てて言う。
「呪いも副作用もニュアンス的に悪い意味にしか思えないんだけど」
「無論良い意味で使っているよ。副作用というのは……説明が難しいから大きく端折るけど、要するに経験値が増えると思っていてくれれば良いです」
「経験値! 貴重なやつ!」
効率化に最重要な技能。
繋がりはわからないけど、便利だな呪い。
というか、経験値なんてものがあるんだ。レベルとかもあるのかな。
「そして、もう一つ。君の目に、微弱な魔法を掛けておきます。この位なら、教会も容易には察知できないでしょう」
「目に?」
思わず目を押さえてしまう。目に何かされるって、すごく怖い。
「ただし、魔法の発動に条件があります。眼鏡をかけていない時は、魔法は発動しません」
「めが、え? 眼鏡? どんな魔法?」
「分析能力、といえば良いでしょうか。君の冒険の支えになると思います」
「ほー」
俺はレーダーを手に入れた。
……という感じで良いのだろうか。なんで眼鏡が必要なんだ? 投影式なのか?
「眼鏡はまぁ良いとして、経験値上昇っていいなぁ。夢がある。魔法とか覚えたりするの?」
魔法。魔法かぁ、大好きだな魔法。浪漫だよな魔法。手からなんか出して攻撃とか、憧れちゃうな!
「いえ、君にはその適性がありませんから」
「……なんて?」
若干耳を疑う、否定の言葉。
「あ。えっと……すみません。君は基本的な技能を修練して強くなることはできますが、こと、資質を求められる技能、運であれ、勘であれ、魔力であれ、そういったものを要求される技能は……すみません」
「すみません!?」
二度も謝られた辺り、自分の資質は絶望的なのかもしれない、という嫌な雰囲気だけはしっかり伝わった。
「え、なんで!? き、鍛えてどうにかならないの!?」
「君のその肉体は、極めて平凡というか、才能を持たないというか……」
「なんでそんなことに!?」
折角運良くファンタジー世界に来たのに、大凶引いた様な話だった。
「……外界からの召喚は初の試みだったので……あまり言うことを聞かない人が来て、暴れ回られると困るなぁと、その肉体を選択しました」
「変なとこでヘタレないでもらえます!?」
「今では後悔しています」
大凶は仕組まれていたようだった。
「あなたの力になるのにあなたに力奪われるって……! 今からでもどうにかなるものではないんですか?」
「残念ながら」
「至極、残念です……」
俺はファンタジー世界に来たのに、魔法を使うことは許されないらしい。ゲームやる時は、絶対魔法使えるジョブ選んでたのになぁ……
……いいもん、弓矢とかも好きだから。