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最初で最後の質疑応答

「さて……あまり時間がなくなってきました。先にこれだけは伝えておきます。君は一つ、私からの呪いをさしあげます」

「いらない!」


 咄嗟に叫んでしまった。


「聞いて下さい。あといらなくても避けられません。私の『勇者を支える』という願いで召喚されたことで身に付いてしまう呪いです。君は勇者が死ぬ時、また勇者の死が避けられなくなった時、勇者が私を殺す武器を手に入れられなくなった時、または君が死ぬ時、君の時は戻ります」

「……コンティニューだ!」

「その通りです」


 肯定があっさりしていた。


「でも、それって記憶失っちゃうってやつでしょ? 意味あるの?」

「いえ、記憶は継続します。私の呪い対象であれば、記憶は失われません」

「あ、そんな呪いなら大歓迎です」


 お得なものは有り難く貰う。

 でもそれ、呪いっていうのだろうか。

 というか、勇者ってその呪いにかかってないんだろうか。死ぬ度巻き戻ってるんだろ?

 それを質問してみる。


「勇者には数々の加護がかかっております。その他にも色々かかっていて、生憎と私の呪いは効かないんです」

「呪いとかって聞くとまぁそうなんだろうなぁって思うけど、魔王がしたいことってサポートじゃん? それでも駄目なの?」


 加護がバッドステータスくさい。


「勇者が敵対している相手から簡単に呪われてしまっては役に立たないですからね。今現在、私の気持ちと致命的に噛み合わないだけで」

「無情」


 臨機応変さを加護に要求するのは間違っているんだろうが、気持ちくらい汲んで欲しい。

 とはいえ、呪い避けって聞くと、加護らしいなぁとは思う。


「呪いは効かないけどでも時は遡るの?」

「記憶の継続という呪いは弾かれますが、時を戻すこと自体はできます。それに関しては勇者だけというわけでなく、世界全部が戻りますので。色々複雑なんです」


 規模がすごい。そりゃ魔王と呼ばれるわ。というか、神では?


「はぁ……勇者の加護ってすごいの?」

「えぇ、なかなか」


 雑な評価。


「なのに死ぬの?」

「死にます」

「死ぬのかぁ」


 どんな加護なのか、かえって気になってきた。ほんとに役立つものなのだろうか、加護。


「頑張ってサポートしてあげて下さい」

「うい」


 軽い返事。

 と、は、い、え。俺さっきの感じからすると普通に村人だったけど、村人ができることとかたかが知れているのではないだろうか。


「魔王さんが直接サポートしたり、出向いたりするのは、駄目なの?」

「しました」

「してたか」


 過去形な辺りで多少、察する。


「魔王とわかった段階で、私の言葉を信じなくなり、裏目に出てしまうというばかりでした。それなので諦めました」

「……勇者だしな」

「それに、なまじ私を信頼して同情心など持たれたら、私の殺害に差し障りますし」

「ひどい台詞だな……」


 殺されたがってる魔王という図が、どことなくシュールに思える。もっと簡単に死ぬ方法はないものなのだろうか。


「さて。もうそろそろ世界の巻き戻しも終わるでしょう……君と直接話をするのは、これが最後になります。訊きたいことは、手早く訊いて下さい。またどうにか、君に助言をする方法は模索するつもりですが」


 魔王がサラッと言った言葉に、俺は目をパチパチとまたたかせた。

 コンティニューの度に会話するつもりでいた。


「へ? なんで?」

「君が魔王と繋がっていると、勇者や教会に察されると面倒なので。既に教会は、私がなにかをしたこと……恐らくはなんらかの召喚をおこなったことを掴んでいます。時が戻るとはいえ、あまりこう君と会話をしていて、察知されると困ります」

「な、なるほど」


 教会……そんなものが敵になるのか。セーブ地点って認識しかないんだけど。


「一つ予防策として、君のイメージからこの身体を作りました。君は私の本当の姿も、声も、知りません。君は魔王を知らない。その認識でいてください」

「え、あ、そういう意図だったの! 俺のイメージの魔王像って!」


 正体を隠す意味だったんだその姿!

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