遅い説明2
「えっと、要するに……あ、はい、説明お願いしても、よろしいですか?」
何がわかってて何がわかっていないのか、それさえ整理が付かなくて、全部まとめて放り投げることにした。異世界から訪れし、とか言ってきたのだから、少なくとも、俺より色々知っているだろう。
「そのつもりでここに呼んだので、こちらとしても、説明をさせて頂きたいのですが、よろしいですね」
「お願いします」
威圧感のある低音とフレンドリーな低姿勢のコラボレーションに、まだこうミスマッチさを感じてしまって落ち着かないけれど、一旦それは考えないように努力する。
「まず、君は松岡道治として死に、こちらで蘇りました。そして17年が経過した今、前世の記憶を取り戻したのです」
死んでる気はしていた。しかし、死んでると言われると、なんとも、呆気なく思えてしまう。
「前……死んだのか俺。俺死ぬ頃の記憶ないんだけど」
「記憶は見せてもらいましたが、覚えているはずです。死ぬ間際に、勇者を救うと、君は選択をしましたよね」
「選択? あー……あー、なんか、あれゲームじゃなかったのか」
ゲーム進めてて、コントローラーで選択したような気がしぼんやりする。そう、あの時は確か風邪で……
「え、あの直後死んだの!?」
「そうですね」
「そ、そうなのか? ……そうなのか」
風邪で、か。風邪で倒れてそのままってことか……えー、そんな死に方……そんなもんなのか。
あぁ、なんかこう、凹む。長いこと誰も気付かなかったりとかしてたら、ごめんね、死体掃除する人。マンションの管理人さん。
「……よし、呑み込んだ。次」
悲しいことに迷惑をかける相手もいないので、深く考えるのはやめた。
「君が勇者を救う選択をして頂けたので、こちらに呼び寄せた、というのはわかってもらえましたね」
「応……あ、はい」
「では、君を呼び寄せた理由、君にやってもらいたいことの説明をします」
そう言うと、巨像の目がキラーンと輝いた。
「勇者を導いて、魔王を殺して欲しいのです」
俺のイメージする魔王像の相手が、魔王を殺せと言ってくる。正確には、魔王を倒す手伝いをしろと。
「えっと、なんでですか? なんで魔王を殺すんですか。なんで俺が殺すとかではなく、回りくどく勇者を手助けするんですか」
「魔王を唯一殺せる武器を使いこなせるのは、勇者だけなのです」
あー、選ばれし者。いいなぁそういうの。というか、俺選ばれてないんですな。なんか寂しい。