遅い説明1
薄暗い西洋建築の中……恐らく、城の中で、俺は、何か巨大なものと対峙していた。
「……は? え?」
ココドコ?
先程までいた村とは全然違う。そして今度は、ラインとしての記憶にもない場所だった。
目の前にドクロの様な顔した巨像が佇んでいて、もの凄くびびる。いったいなんだこれ。
キョロキョロと周りを見て、一応歩き回ろうかなと思うけれど、暗くて、怖くなってきたので、ちょっと躊躇。ただ、ここに居るのもそれはそれで怖い。
ふぅ、俺ホラーとか全く駄目なんだよね……
溜め息なんて吐いてアメリカっぽく肩を竦めてみる。内心超びびってるから、おどけてないと泣きかねない。
というか、マジどうなってるんだ今。ここどこ。モンスターとかやめてくれよ、俺……うん、17歳の方の体だな。逃げ足はまだ速そうだ。
「よーし、と、取り敢えず探索……するべき、なのかな」
深呼吸。鼓動は早いけど、取り敢えず、行動を開始しよう。
と思って一歩踏み込んだ時に。
「異世界より訪れし者よ」
「ぎゃあああああああ!」
どこからともなく響き渡った低音ボイス。
思わず跳び上がったあと、逃げようと駆け出して、足が絡んで前のめりに転ぶ。
「つぅ!? っ!」
鼻打った。
「異世界より訪れし者よ……」
声のする方に振り返れば、先程の虚像。目が光り、こちらをじっと見つめていた。
「お、おお……!」
足のついでに舌も絡む。声はギリギリ出るけど言葉にならない。
「驚かせてしまい大変申し訳ありません」
「く、口調丁寧ですね!?」
どうでもいいことに驚いて、少し落ち着いた。
威圧感と恐怖感のある低音ボイスからの敬語。ギャップがすごい。
「混乱しないように、君のイメージにある魔王像を用意してみたのですが、何か違いましたか」
「え、あ、え? み、見た目と口調が……ちょ、ちょっと、整理する時間貰っていいですか!?」
「どうぞ」
少し考える。
「え、この世界なんなの!? 俺の想像の世界なの!?」
「説明が足りず誤解させてしまいました。先程まで君がいた世界は、実在の世界です。あくまでも今この場所だけが、君のイメージをもとに作った世界です」
な、なるほど?
わかるような……わからないような。