選択肢はあったが拒否権はなかった
風邪を引いているけれどゲームは楽しい。
というか、風邪で寝てるのも辛くて、ゲームやってた方がマシっていう状況。
なんか小学生の頃に学校サボった時にもそんなこと思ったけど、今もう四十代なんだよな。人間変わんねぇ。
最新ハードで、4K画面なのに、目がぼやける所為であんま恩恵ない。頭ぼーっとするからストーリーが入ってこない。アクションゲームだからあんま関係ないけど。
でも、親死んでるし、一人暮らしで、独身で、仕事の同僚いるけど土日遊ぶようなやつ一人も居なくて。
……ゲームでもしてないと、滅入る。
アクション大好きだからなのか、ソシャゲはなー、合わなかったんだよなー。オンライン系もなー……やってたら友達少しはできたのかなぁ……
陰鬱ってきた。雑魚退治飽きてきた。
………
毛布羽織って、寝巻きで、会社休んで、なにやってんだか。
頭がクラっとして、目の前が霞んで、頭を振ったら、モニターに表示されてた選択肢がどうにか見えた。
いやに荒いドットで書かれた、ゴシック体の文字。
『あなたは ゆうしゃ を すくいますか』
RPGというより新興宗教感のあるフレーズ。
「世界とかじゃねーんだ……」
胡乱な頭で、ゲームを先に進めたい一心で、俺は『はい』を選んで決定を押した。見間違えでなければ、今『はい』以外なかった気がするが。
『あなたは えらびました』
どうせなら、選ぶより選ばれたいなぁ。
そんなことを思ってから、とうとう風邪に耐えられなくなったらしく、俺は前のめりにぶっ倒れた。