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雪の下のサーシャ  作者: 遊月奈喩多
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知らない子ども

こんにちは、遊月です!

サーシャのお話も更新させていただきます♪


今回のお話は、知らない子ども。

それは、ある雪の降る街の、小さなお話です……


本編スタートです!

『イワンは、お父さんとお母さんと、それからお兄さんと4人で暮らしています。みんな仲良しで、何をするにもいつも一緒。特にお兄さんとはとても仲がよくて、お兄さんのすることは大体なんでも真似してしまうような具合でした。

 それは、ある雪の日のこと。

 イワンはひとりで遊びに出て、そこからの帰り道に街の子どもたちが話していた噂話を耳にしてしまいました。


「なぁなぁ、知ってるか?」

「なんの話だい?」

「最近な、“知らない子ども”が紛れ込むんだってさ」

「えっ、なにそれどういうこと?」

「自分の家に、いつの間にか知らない子どもが紛れ込んでるんだって。ほとんどの人はその子どもが自分の家族だって思い込んじゃうらしいんだけど……」

「それ、怖くないか?」

「あぁ、まぁな。でも、気付かないうちなら怖くないんだ。本当に怖いのは気付いてからなんだよ」

「気付いてから?」

「うん……、もし自分の家に“知らない子ども”がいることに気付いても、それを“知らない子ども”に気付かれちゃいけないんだ。それを気付かれちゃうと、すっげぇ怖いことになるんだってさ」

「うわぁ、いい加減なオチだなぁ~、そんなんじゃ何もわかんないじゃん」

「俺だって隣のアレクセイから聞いただけだからよ~」

「ははは……」


 “知らない子ども”。

 その噂話は、イワンの心を妙に捕らえて離しませんでした。だって、もしそんなことが本当にあるなら、本当は知らない子どものことを「ずっと昔から一緒にいる」と思い込んでしまっているということです。

 自分の心が、自分のものじゃなくなってしまっているような気がして、イワンにはその“知らない子ども”自体よりもそちらの方が恐ろしく感じました。

 そして、そんな噂話を聞いてしまったことがきっかけだったのでしょうか。イワンはその夜、気付いてしまったのです。


 いつもなら部屋の鍵は開けっぱなしにしてあるのですが、今日はちゃんとかけてあります。けれど、そんなのはもう意味がありませんでした。だって、イワンは気付いてしまったのですから。

 ドアは目の前でボロボロと腐り落ちていきます。蝶番(ちょうつがい)が錆びてボロボロと地面に落ちて、ドアノブも落ちてしまいました。必死に押さえようとしても、意味がありません、だって、押さえようとするドアがなくなってしまうのですから。

 イワンは泣きながら、部屋の中にいた(、、、、、、、)お兄さんに言いました。


「あーあ、きづいちゃったんだね」


 雪は、しんしんと降り続けています。』



「どうしたの、サーシャ? ふふふっ、大丈夫よ。私はあなたのお姉さんよ? あなたが生まれたときからずっと傍で見てきたんだもの、紛れ込んだりしようがないわ」

 お姉さんは、思わず黙りこんでしまったサーシャを抱き寄せながら言いました。その温かさを、サーシャは確かに小さい頃からちゃんと知っているように思いました。

 きっと、大丈夫。

 お姉さんは“知らない子ども”なんかじゃありません。


 でも、思ったのです。

 可哀想なのはお兄さんじゃなくて、イワンの方だったんじゃないかな、と。


「わかってるわ、サーシャ。あなたは、“知らない子ども”だと気付かれてしまったことを知ったイワンが可哀想になったのよね? 確かに、お兄さんは部屋の鍵を閉めて中に閉じ籠っていたもの、きっとイワンのことを怖がってしまっていたのね。

 それに気付いてしまったときのイワンはどんな気持ちだったのかしら。お兄さんのことが大好きなままだったら、それってとても寂しいことでしょうね」


 言いながら、お姉さんはサーシャを抱き締める力を少しだけ強くしました。


「サーシャ、私はあなたのことを離さないわ。私の誰よりも可愛い妹ですもの。絶対にあなたをひとりにさせないから……」


 どうやらお姉さんもサーシャと同じ気持ちだったのでしょう、少し涙ぐみながら、そう言ってくれました。そして、お姉さんの白い指がページをめくります。

「あら、この本は次の話で終わりみたい。それじゃあ、読むからね……」


 雪の中に、お姉さんの声はまるで空気に染み入るようでした。

前書きに引き続き、遊月です!


イワンの知ってしまった真実、お兄さんが知ってしまった真実。どちらの側に立っても、怖いですし悲しい気持ちになってしまいます……(書いたのは私だけど)


ということで、この物語も残すところあと1話となりました。


あと少しお付き合いくださいませ。


ではではっ!!

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