暗い森の奥には
こんばんは、遊月です!
クリスマスも終わってしまいましたね。読者の皆様はどんなクリスマスを過ごされましたか? 私は……連休明けと仕事と悪戦苦闘していました(笑)
ということで、本編スタートです!
『フィーアは、森の近くに住む小さな女の子。森の奥に住んでいるお婆さんが寂しくないように、これからお婆さんのおうちへ向かいます。つい1ヶ月ほど前までお婆さんがいることすら知らなかったのですが、少し前にお母さんから神妙な顔で言ったのです。
「フィーア、あなたにはお婆さんがいるの。わけあって森の奥で暮らしているんだけど、たまには顔を見せてあげたらどうかしら? きっと森の奥で寂しく暮らしているから、喜ぶと思うわ」
そう言ったときのお母さんの様子が少しだけ気になりましたが、今までいないと思っていた家族に会えるという期待感がフィーアの中には浮かび上がっていました。フィーアの友達は、よくお婆さんやお爺さんと一緒に遊んだりしています。小さい頃はそのたびに「わたしにはお婆さんはいないの?」と尋ねていましたが、いつしか「お婆さんはいないのだ」と思うことになっていました。
そんなお婆さんが実は生きていて、しかも近くの森に住んでいるというのです。フィーアは胸が踊るのを感じました。
それから更に1か月後のよく晴れた日。フィーアはお母さんに見送られながら、お婆さんの住む森へと向かっていきました。
「途中には悪い狼がいるというわ、寄り道したりせずにお婆さんの所へ向かうのよ。いい?」
「はーい!」
元気よく返事をして、フィーアは森へ歩いていきました。
鬱蒼と茂る暗緑の木々、不気味な鳥の鳴き声。人里離れた森の入り組んだ道を、ただ歩いていきます。微かな木漏れ日以外の明かりはなく、少し怖くなりながらただ歩き続けます。
そして、そんなフィーアに声をかけてくる狼が一匹。
「もし、そこのお嬢さん。そっちには行かない方がいいよ。私と一緒に遊ぼうよ」
「いいえ、お婆さんのおうちへ行かなくてはいけないの。向こうに行って」
「お婆さんの家? いや、そっちよりもこっちの方が楽しいよ、こっちにおいで」
「いやよ。寄り道したらお婆さん寂しがるわ」
「そう言わずに、」
狼の言葉を最後まで聞かずに、フィーアは駆け出しました。しつこく誘ってくるなんて、やっぱり悪い狼なのでしょう。フィーアは森の道を急ぎます。
やがて、道がなくなって、草むらの向こうに一軒の古ぼけたおうちが見えました。お婆さんのおうちです。
「お婆さん、お婆さん。わたし、フィーアよ!」
おうちのドアを叩くと、中から何かが動くような音がしました。
そ し て……
* * * * * * *
村では、フィーアのお母さんが泣き崩れていました。他の村人たちもそんなお母さんを慰めています。村のみんなには、お母さんの涙の理由がわかっているからです。
「どうして、あの子が……。ごめんなさい、ごめんなさい……」
泣きながら謝る声に、返せる言葉は何もありません。
50年に1度流される、後悔の涙。
村にかけられた呪いは、今でも続いています。』
「あら、どうしたの? 怖かったね、サーシャ。大丈夫、私はサーシャを生け贄になんかしない。たとえ世界がすべて呪われてたって、あなたを犠牲になんかするものですか」
お姉さんは、優しく微笑みながらサーシャの頭を撫でてくれます。
その手の温もりにちょっとだけ安心しながら、サーシャは思いました。きっと、お姉さんなら本当に自分のことを守ってくれるような気がする。それこそ、何を捨ててでも、サーシャのことを大切に思ってくれる、と。
けれど、何かを忘れているような気がしました。
サーシャは何かを思い出しそうになったのです。お姉さんの読んだ『どうしてあの子が』という言葉が、胸をざわめかせます。
お姉さんの瞳は、優しくサーシャを見つめています。
前書きに引き続き、遊月です!
今年ももうそろそろ終わりますね。皆様、今年はどのような年でしたか? 私は初の同人サークル活動に初の書籍収録など、色々な『はじめて』を体験できた年でした。
まだまだよろしくお願いいたします!
ではではっ!!