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雪の下のサーシャ  作者: 遊月奈喩多
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エイミーの子守唄

こんにちは、遊月です!

2つ目の童話は、『エイミーの子守唄』です! 優しいお姉さんの優しい声で朗読してもらえる童話……、図書館とかだと司書さんとかが読み聞かせてくれる機会があるみたいですね……。


ということで、本編スタートです!

『エイミーには、ある日課がありました。

 それは、毎晩子守唄を歌ってあげることです。といっても、歌ってあげるのは子どもではありません。大好きなお父さんです。お父さんがよく眠れるように、歌ってあげるのです。

 エイミーのお父さんは時々悪い夢を見てしまうと、まるで小さな子どものように泣いてしまいます。そんなお父さんを慰めるのも、お父さんが元気になれるように応援するのも、エイミーの歌でした。


 お父さんが出掛けていく前にも、お父さんが帰って来た後も、エイミーはお父さんの傍にいます。お父さんが家からいなくなったときだけエイミーはひとりきりになりますが、そういうときにお父さんの気持ちを考えたりもします。


「エイミー、エイミー……」

 涙声でそう呼び続けるお父さんに、エイミーはただ優しく寄り添います。そんなときのお父さんは、まるでガラス細工の人形みたい。エイミーが触ってしまったら、壊れてしまうかもしれない――というくらい。けれど、悲しそうにしているお父さんをたったひとりにしてしまうわけにはいきませんでした。


「エイミー、君に会いたい……」

 そう言った日から、動くこともしなくなってしまいました。わたしはここにいるよ、と呼び掛けても、お父さんは何も言いません。どうして、何か言ってよ、それでも、もうお父さんには話をする元気もないみたい。

 どうすればいいのかわからなくて、いつもの歌もお父さんを笑顔にできなくて。


 ただ、祈りました。

 お父さんの悲しみを癒すことができますように、と。

 お父さんがまた笑える日が戻ってきますように、と。


 それを聞いているのは、蒼白い月光。

 夜空でぽつんと光る、孤独な光だけ。


 ある日、お月様が祈り続けるエイミーに言いました。

「お父さんの所へ行きたいのかい、エイミー?」

「はい、またお父さんとお話したいんです」

「そうか、君は毎晩一所懸命に祈ってくれているから、その願いを叶えよう。これで、君たちはずっと一緒だ」

「ありがとうございます、ありがとうございます……」

 エイミーは、ただ心の底から感謝しました。


 次の日、たまたま空き巣に入った男が見つけたのは、天井から首を吊っているひとりの男の亡骸でした。家の中には本当に何もなく、あるものといえば男の足元に不自然に転がっている、壊れたオルゴールくらいだったといいます。

 男は数年前、流行り病で一人娘のエイミーを亡くしてから、ずっと娘の名前を呼んでいたのだそうです。


 埃の積もった床の上で、ようやく役目を終えたオルゴールが満足そうにその身を横たえています。』


「あら、どうしたの、サーシャ? うん、そうね。悲しいお話だったね」

 サーシャはお姉さんに抱きつきながら、思わず泣きそうになってしまいました。きっと、お話のエイミーだってこうしたかったはずなのに……そう思うと、胸が苦しくてたまりません。

 お姉さんはいなくならないかな?

 ふと不安になったサーシャに、お姉さんは優しく微笑み返しました。

「大丈夫、私はいなくならないわ、サーシャ。あなたを置いてなんかいくものですか。私たちは、ずっと一緒よ、サーシャ」


 お姉さんは優しく微笑みながら、サーシャの頭を撫でてくれます。

「きっと、どんな物にも心って宿るものだと思うの。あなたのような優しい子には、きっと私だけじゃない、あなたの周りにあるいろんなものが、あなたの優しさに対して『ありがとう』の気持ちを持っていると思うわ」

 それから、そっと抱き締めてくれました。お姉さんの体温がじんわりと伝わってきて、サーシャは心が温かくなるように感じます。

 そんなサーシャの(ひたい)にひとつキスを落として、お姉さんは優しく笑いました。


「次はなんのお話にしようか? まだまだ時間はあるもの、サーシャが聞きたいお話はなんでも読んであげる。え、これ? そう、わかった」


 雪は、静かに降り続いています。

前書きに引き続き、遊月です♪

もしかしたら、別作品を読んでくださっている方は「エイミー」という名前で察していただけたかも知れませんね(別作品ではある博士が亡妻に似せて作った人造人間の名前です)。

今回は、一応実在の人間です。

アニミズム的なお話となっておりますが、なんか、そういうのってありそうですよね、ちょっとね(擬人化とかありますし)


ということで、今回はこの辺りで。


ではではっ!!

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