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雪の下のサーシャ  作者: 遊月奈喩多
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いたずら者のケビン

こんばんは、遊月です!

お姉さんの読み聞かせるひとつめの童話は『いたずら者のケビン』です。いったい、どのようなお話なのでしょうか……?


本編スタートです♪

『小人のケビンは、いたずらが大好きです。よく人間の家に入り込んで物を隠してしまったり魔法で人を驚かせたりします。たとえば、家の鏡に自分が映らなかったり、写真で頭だけが消えたりしてしまった場合は、きっとケビンのイタズラです。

 他にも信号の色をめちゃくちゃにしてしまったり、テレビをジャックして個人宅で仕掛けられていた隠しカメラの映像を全国に流してしまったりしています。


 もちろん、ケビンにとってはそれらは全て悪意のないイタズラです。ただみんなのことを驚かせて遊んでいるだけです。自分の楽しいことはみんなも楽しい――そう思ってしまっているだけなのです。


 そんなケビンには、もうひとつ好きなものがあります。

 それは、雪の降ったあとの静かな景色です。見渡す限り一面真っ白で、まるで世界に自分ひとりだけになったみたいな、そんないつもと違う感じ(、、、、、、、、)が、とても好きだったのです。ずっと見ていられたらいいのに、と思うくらいに。

 ところで、ケビンのいたずらは、恥ずかしいことや危ないこと、怖いことが多かったので、みんなから少し迷惑がられていました。中には、けっして見られてはいけないものをみんなに見られて外に出られなくなってしまった人もいたりして、少しずつケビンに手を焼き始めていたのです。

 ある街の住人たちは、それぞれに知恵を出し合いました。


「どうすればケビンはいたずらをやめてくれるだろう?」

「うちの娘はあれで人間が怖くなったそうだ」

「私も、鏡に大熊が写ったので思わず猟銃で撃ってしまって大損害だ」


 などなど、いろいろな不満が出てきます。そして街の人々は、神様にお願いしました。どうかケビンのいたずらを止めてください、と。すると、神様は言いました。


「ケビンには悪気はないので、すぐに禁止にするのは可哀想ではある。けれど、ケビンのいたずらに困る人が大勢いるのも事実なので、あと1回だけにさせてはどうだろうか」


 街の人たちもケビンに悪気がないことはわかっていたので、1度くらいなら……としぶしぶ神様の言葉を聞き入れました。

 さて、神様からいたずらはあと1度きりにしなさいと言われたケビンは、困り果てました。あと1回しかいたずらできないなんて……! けれど、素直な妖精のケビンは、ずっと悩んで、青々としていた木葉がすべて冬風に散らされた頃、ようやくひとつに決めました。


「そうだ。最後だからとびっきり驚かせたあと、とびっきり綺麗なものを見せてみんなに許してもらおう! それで、またみんなと仲良くなるんだ!」

 そして、ケビンは笑顔でいたずらを仕掛けました。


 その夜、街は例年にない猛吹雪に見舞われました。普段は穏やかな雪しか降らない地域にある街なので、備えなんてほとんどありません。たちまち街は凍りつき、全てのものが雪に覆われてしまいました。

 吹雪のやんだ朝、ケビンは満面の笑みで雪に覆われた街を眺めます。木々はもちろん、並ぶ家々もその屋根まですっぽり雪の下です。


「あぁ、やっぱり雪の景色は綺麗だなぁ! きっとこんな綺麗なものを見たら、みんなも笑ってくれるよね!」


 早く誰か出てこないかな。

 朝日を浴びる雪だけが白く輝く静かな朝。誰かが起き出してこの雪景色を一緒に見てくれることを信じて、ケビンはひとりで待っています。

 今も、ずっと……。』



「サーシャ、『いたずら者のケビン』のお話はどうだった? 雪に覆われてしまった街で、ケビンはいったいどうするのかしら……」

 お姉さんは本を閉じて、優しい笑顔でサーシャに問い掛けます。

 サーシャは、お姉さんにお話を聞いた感想を伝えます。するとお姉さんは少しだけ顔を曇らせて「そうね」と言葉を返しました。


「そうね、もしケビンが街に誰もいなくなっていたことに気付いたら、きっととても寂しいと思う。いたずらっ子の彼を気遣えるサーシャは優しい子ね。もしかしたら、サーシャもいたずらっ子だからかしら?」

 お姉さんのいたずらっぽい笑顔に、サーシャはちょっと恥ずかしくなりました。いたずらしていたのは昔のことです。それに、いたずらだったらお姉さんもしてたのに……!

「ふふふ、そうね。それは私もだよね。私はね、ケビンはまだ幸せなんじゃないかと思うの。雪が溶けるまでは、ケビンにとっての(、、、、、、、、)街の人たちはまだ生きているんだもの。それって、夢のあることだと思わない?」

 サーシャには、お姉さんの言うことは少し難しくてわかりません。

 けれど、きっとケビンは幸せなんだろうな、と思いました。だって、お姉さんがこんなに優しく笑っているんですもの。


「それじゃ、次はなんのお話にしましょうか。え、これ? わかった、いいよ」


 お姉さんの声は、どこまでも朗々と響きます。

前書きに引き続き、遊月です!

今回で把握していただけたかもしれませんが、本作はこうした(童話→お姉さんの話)構成となっております。

冬に紡がれる優しい童話は、まだ始まったばかり……


ではではっ!

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