私、どうすればいいんだろう……
そこからのことは、よく覚えていない。気付いたら、私は部屋のベッドに一人寝転がっていた。
頭は冷えた。やっと落ち着いた。でも、それが何になるというのだろう。
取り返しのつかないことをしてしまった。もう、元には戻れないかもしれない……いや、戻れないだろう。
でも、それは桃野も同じ――なんてことを考えそうになっている自分に気付いて、ついベッドに潜った。『私』から、隠れるように。
冷静になっても、結局こうだ。焦ってたから、うろたえてたからなんて言い訳は、今更通用しない。
これが、『私』なんだ。こんなに汚くて、醜くて、最低で、ちっぽけなのが、『私』。
あんなに嫌がってたのに、桃野を傷つけてまで逃げ出したのに、一度認めると、もう否定することなんてできなかった。
(……認めなきゃ、いけないんだ。そうじゃないと、いつまでも先に進めないから)
『私』は疑いようもなく、桃野を深く傷つけた。でも、そのままじゃ、私は本当に最低な人間になってしまう。
(……謝らなきゃ。許してもらえるかなんて、分からないけど。でも、それでも、謝らなきゃ。謝って――)
そこまで考えて……私は、今まで目を背けていたことを、今更思い出した。
私は、桃野に――告白、されたんだ。なら、返事を返さなきゃいけない。そうじゃないと、何が悪いのかも分からずにただ謝るのと、何も変わらない。
でも……返事、って?
女の子同士の恋愛だなんて、考えたこともなかった。
桃野のことは、嫌いじゃない。むしろ、好き……だと思う。……いや、好き。間違いなく好きだ。
でも、桃野の言っている「好き」は、そういう「好き」じゃない。恋を、しているんだ。私に。……私、なんかに。
私たちの「好き」は、違うものなんだ。……でも、いったい何が違うんだろう。
どこからが、桃野の言う「好き」になるんだろう。それとも、程度の問題じゃなくて、性質からして全然違うものなんだろうか。
考えても考えても、結論は出なかった。それが分からなきゃ、謝ることさえできないのに。
部屋をノックする音で、現実に引き戻されたような心地になった。どうやら私は、今の今まで意識を手放していたらしい。
「おーい、飯だぞー。下りてこーい」
聞こえたのはお姉ちゃんの声。二人暮らしだから、他の人のはずはない。
「ん……いまいくー」
寝ぼけた頭でドアを開けると、お姉ちゃんはいなかった。
私の部屋は二階で、キッチンやダイニングは一階。つまり私をご飯に呼んだお姉ちゃんは、一階にいることになる。
何を考えることもできない寝惚け頭で、私は階段を下りていった。




