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私と貴女の揺れる想い  作者: 明日大
3/10

いつもと、何かが違う?

「ねえ、今日家来ない?」


 学校が終わると、突然桃野がそう言ってきた。


「何で?」

「暇なんだよー。帰ってもすることないしー」

「勉強は?」

「あーあー聞こえなーい」

「まったく……」


 その適当な性格で想像できる通り、桃野の成績は良くない。典型的な勉強嫌いで、地頭は悪くないけど成績は伸びないタイプ。桃野の家で私が勉強を教えた回数も、両手の指では数え切れない。


「それより、家で遊ぼうよー。いいでしょ?」

「仕方ないなー……今回だけだからね」

「それ、毎回言ってるよね」

「うるさい」


 毎回言ってる、って桃野の言葉通り、これは大して変化もない日常の一部。毎日が完璧な焼き直しになるなんてことは有り得ないけど、それでも大抵の人が毎日同じような日常を過ごしているように感じるのは、ちょっとしたことで非日常を感じることそのものが日常の一部だから。非日常というのはその日常の枠から外れるほどの事件であり、だからこそちょっとやそっとで起こりはしない。


 そう考えてたから…日常のレールから脱線した『何か』が起こることなんて考えてなかったから、気付けなかったんだ。


 私を誘う桃野の声が、ほんの少し強張っていたことに。


 私を誘う桃野の手が、わずかに震えていたことに。


 ――私を誘う桃野の目が、決意で固まっていたことに。




 桃野の家に続く並木道を、桃野と二人並んで歩く。こうやって歩いていると、綺麗な紅葉の下に落ちた枯れ葉が、思っていたより多く散らばっていることが分かる。


 いつもはうるさいぐらい喋る桃野が、今日は何故か大人しい。

 私はあまり自然な会話というものが得意ではなく、桃野と話すときはいつも桃野に話を振られていたから、今この場に限っては奇妙なほど静かだった。


 事ここに至って、そろそろ私にも分かってきた。今日は、何かが違うんだ。

 だけど、何なのかが分からない。そもそも、違和感自体が気のせいなのかもしれない。静かなのも、たまたまなのかもしれない。


 人は、頭の中にないことは考えられない。分からないことは、分かっていることで誤魔化そうとする。

 たまたまなんて、そんなわけないのに。私の頭の中には、『そんな事』なんてなかったから。


 だから――私は、気のせいだと思った。たまたまだと、思ってしまった。思い込んで、しまったんだ。

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