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第39話 買い占め騒動

 放送局で宣伝した甲斐もあって、反応は上々。

 その日のうちに2社、次の日には数十社が仕様書を見に来て仕様書を持って帰ろうとしていた。

 ということで、仕様書をコピーするわけだが、コピーは人力コピー。フル稼働で対応してもらった。本当に申し訳ない。

 そして翌日、ラジオを流しながら仕事をしている、というか自分の席に座っているだけだけども、そうしているとラジオからニュースが流れてきた。

「今日の朝市のコーナー!なんですが、今日は大変なことが起こっています。どのお店も品物が残っていないんです。」

 ほうほう。

「お店の人の話では開店してすぐに冒険者らしき一団が馬車数十台で食品街に来て品物を買い占めて去っていったとのことです。」

 ほうほう。

「これに対して市民からは怒りの声が上がっており、食品ギルドからは明日の販売分を売りに出すことを検討しているとのことです。」

 ほうほう。

「アデラさん、今日の夕食分の食材って確保してる?」

「いや、まだだよ。」

「なんかね、食材の買い占めが起きてるみたい。どうする?」

「へえ、そいつは一大事だな。」

「なんかあっさりだね。」

「人間1日ぐらい食わなくても生きていけるさ。」

「そうだね。」

「それで済むわけないでしょう!」

 セゴレーヌさんが怒っていた。

「調達できないから夕食がありませんなんてことになったら、文字通りつるし上げられるわよ。仕事してないってことで懲戒処分付きでね。わかったら食材を探してきなさい!」

『はい。』

 ということで、従卒を引き連れてアデラさんとレストラン街に行く。食材を分けてもらうのだ。

「なぁ、なんで買い占めなんて起こってるんだ?」

「たぶん騎士団の入札があるからだと思うよ。」

「何でそれで買い占めなんて起こるんだ?」

「他に需要があると見せかけて高値で落札させたいんだと思うよ。」

「高く売って利益を増やしたいってことか?」

「いや、街中から食べ物を買い占めるなんて、いくらかかるかわかったもんじゃないよ。狙いは私たちのしていることを頓挫させることかな。」

「どういうことだ?」

「この前食品街の値段で食材を取引しようとしたじゃん。今度の入札で今までよりも食品街の値段の方が高いってなったらどうなるかな?」

「それは、色々やって前よりも高くなるんだったら失敗したってことになるだろうな。」

「そう。それで、前に取引してたあのおじさんに話がいって、もうこんなことしませんって約束付きで取引再開するって向こうは考えてるんじゃないかな。」

「なるほど、金はかかるが一時的に買い占めをして食材の値段を釣り上げて、その分長く甘い汁を吸おうってことだな。」

「何の証拠もないけどね。」

 そんなことを話していると大通りに出る。

「じゃ、食材集めよろしくね。」

「おい、お前はどこ行くんだよ。」

「馬車を貸してくれる所に話を聞こうとね。」

 そう言ってアデラさんたちと別れる。




 レンタル馬車のお店には馬車が1台も残っていなかった。

 お店のドアをノックしていると店員さんが出てきた。

「すいません、今日は馬車は借りれそうにないですか?」

「あいにくですが1台も残っておりません。」

「いつ頃まで借りられているんですか?」

「今週いっぱいは貸しだせる馬車はございません。」

「そうですか。馬車が貸しだされた時の状況についてお聞きしたいのですが、今日貸しだされたんですか?」

「いえ、昨日ですが、それがなにか?」

「その時の様子をお聞きしたいのですが?」

「昨日の午後、まだ日が高いうちでした。冒険者らしき人が20人くらい来て馬車をすべて貸してほしいということでしたので、そこで貸し出しました。」

「その冒険者の名前ってわかりますか?」

「はい。貸出契約書がありますので、それを確認すればわかりますよ。」

「教えてください。ついでに紙にメモさせてください。」




 続いて冒険者ギルドに行く。

「その人たちだったら一緒の仕事を受けているわね。」

「誰のどんな依頼か教えてくれますか?」

「依頼は食材収集。なんでも近くの村まで食材を取ってきてほしいって話ね。依頼主は食品街のバルタナス商会ね。」

「そこって騎士団御用達の看板つけてたりします?」

「そうらしいわね。自慢らしいわよ。」

「そうですか。ところで、依頼をしたいのですが。」

「どんな依頼?」

「バルタナス商会の依頼を受けた人を捕まえてほしいんです。生きたまま騎士団の会計課まで連れてきてください。」




 その後、食品ギルドに行くと人でいっぱいだった。話を聞くに食材を買えなかった人たちらしい。その人たちの間をすり抜けて何とか受付までたどり着く。

「騎士団の小野寺雅です。ギルド長さんにお話があるのですが通してもらえませんか。」

「騎士団の!?少々お待ちください。」

 そう言って受付の人が奥に入っていくとすぐに戻ってきた。

「お入りください。ギルド長がお待ちです。」

 そう言われたので、カウンター脇の隙間から中に入る。後ろから怒号が聞こえるが気にしないことにしよう。

 奥の部屋に通されると男性が一人座っていた。

「騎士団会計課の小野寺雅です。」

「食品ギルド長のルーカスだ。今日はどういった要件で?」

「今週いっぱい食品ギルドには迷惑をかけるかと思いまして、献策に参りました。」

「ほう、どのような?」

「多く購入される方に対して値上げを行いましょう。2つ以上等複数購入する人には100倍の値段を請求するのです。日ごろから多く購入しているレストラン街の人に対しては適正価格で売ればよいでしょう。」

「その狙いは何かね。」

「買い占めようとすれば100倍の値段で購入しなければなりません。それが嫌なら一日中食品街で買い物をしなければ買い占めはできないでしょう。いいえ、1日中かかっても買い占めはできないでしょう。一方で一般の方には不便になりますが、複数必要であれば何件かお店を回れば食材を集めることは可能です。何も買えない現状よりはずっといいでしょう。」

「ふむ、まあいいだろう。それで、何が起こっているのかね?」

「騎士団では今まで取引してきたバルタナス商会との取引をやめて、今週末に来週納品分の取引相手を決める入札を行おうとしております。そこで、バルタナス商会が買い占めを行い、市場価格を上げ、経費削減を図る騎士団の試みを妨害しているのだと考えております。バルタナス商会の依頼を受けた冒険者については冒険者ギルドで指名手配しております。後々話を聞くことができるでしょう。」

「買い占めをした冒険者たちは東門から出て行ったらしい。まだ戻っていないようだ。」

「戻ってきたら、騎士団に突き出すように言っているので大丈夫でしょう。」

 そんな話をして仕事場に戻る。




 会計課室に戻るとアデラさんたちは先に戻っていた。無事食材を分けてもらってきたようだ。

「ということで、実行犯については冒険者ギルドの方に指名手配をお願いしましたので、そのうち連れてこられると思います。食品ギルドにも対応をお願いしたので、混乱も収まるでしょう。」

 とセゴレーヌさんに報告しておいた。やっぱり頭を抱えるセゴレーヌさん。

 あとは連れてこられた冒険者の尋問、尋問結果によりバルタナス商会を解体、相場を戻して入札だ。

 というわけで、後は任せたよ、みんな!


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