第18話 会議の後で
団長が退出した後、カードのテストについていつからやるのかという話になった。
そのときに問題になったのがお店への手回しと必要な枚数、つまり幹部が何人いるのか。
私の言った大通り沿いの店のみというのは向こうにとってはやりやすいらしい。
というのも、店が奥に行くほど識字率が低くなるらしく、通知やマニュアルなどを作ったとしても対応が難しくなるらしい。
その点、大通り沿いの店は識字率は100%。どのお店でも素晴らしい対応をされるという。
だが、準備にかかる時間が減ることはあっても0にはならない。
大通り沿いのお店だけなら1週間でいけるだろうとの銀行側の認識に追従することとした。
そして、騎士団の幹部が何人いるかという前に騎士団の組織について簡単に言っておくと、騎士団およそ650名。6の部隊と総務課、会計課からなる組織だ。
団長、副団長、部隊長、副部隊長、課長、総務課長補佐、そして私が幹部扱いらしい。
マリルーさんに要らないか訊いてみたのだが、お断りされてしまった。
曰く、
「自分で自分の仕事を増やすなんて考えられません。」
とのこと。
大丈夫、10人も20人も30人もたいして結果は変わらないだろうから……。
というわけで、団長1名、副団長1名、部隊長6名、副部隊長6名、課長2名、課長補佐1名、私1名の合計18枚を製作することになった。
そこで、私の悪い癖だが、変な思いつきをしてしまったのだ。
カードの番号を10面ダイスを使って決めようと考えたのだ。
私は仕事を処理しようとするマリルーさんの腕を引っ張ると無理やり街に繰り出した。
とりあえず大通りの真ん中、東西の大通りと城から南門に走る道のど真ん中に立つ。ちなみに、人通りや馬車の通りが多く、迷惑千万だった。
そこで私がサイコロを作りたい旨伝えると、マリルーさんは、
「そんなことのために私を連れださないでください!」
と怒っていた。帰る途中に衣料品街によって下着で怒りを収めないとと真剣に考えるほどだった。
そんな彼女が連れてきてくれたのが職人街。
木工や骨細工といった工芸が主のところらしい。
木工細工のほうが簡単かと思い適当に木工を扱う店に入ってサイコロを作ったことがあるか訊いてみた。
すると、木工で一番最初に作るのがサイコロらしい。意外と真四角って難しいもんね。
次に10面サイコロについて訊いてみたが、こちらの反応は鈍かった。
まぁ、仕方ないと思いつつ話を続けると、正20面体ならできるということが発覚する。
なんでも正多面体は割と作るらしい。何に使うのやら……。
ということで、正20面体の面に0から9までの数字を2か所入れることで乱数を発生させる基を作った。
慎重を期してソフトボール大の大きさで作ってもらったらビアンカさんからもらった大銅貨がまた消えた。
加工してもらっている間にマリルーさんの下着を手に入れるため衣料品街へ向かう。
大通り沿いを進んだので私でも迷わずに店に来れた。
お店につくと、もう下着は完成していたようでマリルーさんが試着をすることとなった。
途中、着け方がわからないと店員さんを呼ぶが、トラブルがあったのはそれくらい。
帰る頃には、何やら上気した表情で、
「最新の下着ってすごいんですね。」
とか言ってた。
木工のお店に戻ると、もう少しかかると言われたので、何をしようか迷っていると石鹸のことを思い出したので、石鹸を買いに行くことにする。
石鹸は食料品街に売っているらしい。何でと思ったら、石鹸を売るのは薬屋さんで作るらしく、また薬に必要な薬草などは食料品街で売られていることからそうなったらしい。
食料品街に行くのは好都合。なにせ買うものがあるからだ。
それはすっぱいもの!特に妊娠してすっぱいものが食べたくなったわけではない。
石鹸はアルカリ性なので、体についているとあまりよろしくない。特に髪は傷んでしまう。
そこで、すっぱいものの登場だ。クエン酸を使ってアルカリ成分を落とす。
これできれいで清潔な髪の出来上がりだ。
マリルーさんに連れられて食料品街を歩くと黄色い小さな果物を発見した。見間違えでなければレモンだ。
マリルーさんの腕を引っ張ってそのお店の前に行く。
途中マリルーさんが誰かにぶつかったのか謝る声が聞こえたが気にしない。
お店の人にレモンのようなものがすっぱいかどうか確認すると、とてもすっぱいらしい。
かじって食べる人はいないそうだが、飲み物に混ぜて風味を変えたりするらしい。
マリルーさんにねだって買ってもらった。銅貨1枚の貸しができてしまった。
マリルーさんの下着の入った袋にレモンを3つ入れる。
そのまま持ってもらうのは忍びないので荷物持ちをする。
そして歩くと薬屋さんについた。
中の雰囲気は、
何のお店だろうという感じだった。というのも、草は干してあったり、すりつぶされてドロドロになっていたり、水に青色1号を入れたような青い液体が試験管に入っていたり、要するに正体不明だった。
「ここに石鹸が売っていると聞いてやってきました。」
私がそう言うと、店員さんは小さな木箱を持ってきた。
中を見ると、豆腐が固まったようなものが見える。調理前のカチカチの高野豆腐を4枚くらいくっつけた感じだろうか……。
これでいくらになるのか訊くと、大銅貨1枚とのこと。
マリルーさんを上目遣いでみると、あきれたような表情になり、大銅貨1枚出してくれた。
感謝の気持ちで抱きつくと、今度大銅貨2枚にして返すと言っておいた。
木箱でくれるのかと思ったが、木箱は型枠のようなものらしくそのままはもらえなかった。
店員さんはナイフで隅に切れ目を入れると箱の裏をトントンと叩いて落とそうとしていた。
時間がかかりそうかと思いきや、数回叩いただけで落ちてきたのは驚きだ。
落ちた先には紙が置いてあり、それでくるんで渡してくれた。
買い物も終わり、木工のお店に行くとちゃんと完成していた。
まあ、表面に何が書いているかわからないのだけど、一応完成したらしい。
それを受け取ると、文字を勉強しないとと思いながら、仕事場に戻っていった。
ブックマークが増えてたり評価していただいたりユニーク1000人到達していたりでありがとうございます。
今後ともよろしくお願いします。