第1話 市ヶ谷台にて
初投稿になります。
つたない文章力ですが、大目に見ていただけるとありがたいです。
東京都新宿区市谷本村町5−1。
所在地だけでそこに何かあるのかわかった人がいれば、あなたはミリタリー的なオタクである。
そこは日本の国防を担う防衛省・自衛隊の中枢、防衛省市ヶ谷地区があるところである。
そんなところで深夜まで働く女性が一人。
装備施設本部に属する小野寺雅防衛技官である。
彼女の仕事は主に予定価格の作成である。
予定価格とは落札の基準となる価格で、入札者はその価格よりもよい価格で入札し、なおかつ複数の入札者がいる場合は1番低い価格とならないと落札と判定されないのである。
なので、予定価格は入札された価格と比較するために開札までに作成しなければならない。
彼女にとって不幸なのは、次の開札が明後日の昼であること。
そして予定価格の作成は法的には支出負担行為担当官が作成するものであるため、支出負担行為担当官である副本部長の決裁が必要となってくること。
つまり明後日の昼までに予定価格の案を作成し、副本部長にハンコを押してもらう必要があるということである。
そんな状況にある彼女が今何をやっているのかといえば、地下にあるお風呂に入っていた。
「はぁ、さっぱりした。」
お風呂から出て今治のご当地キャラの付いたタオルで体を拭く。
やっぱりバ○ィさんかわいいよねバ○ィさん。
バスタオルではかさ張るため小さなタオルをつかっているが、慣れたのかあっという間に拭き終わった。
暑い夏の夜といっても地下の気温にはあまり関係がないのか、やや涼しく感じる。
湯冷めしないように用意していた替えの下着とカーマインレッドのシルクのパジャマにささっと袖を通す。
高いだけのことはある。サラサラだ!
シルクの心地よい肌触りに、少しにやける。
脱衣所には備品なのか忘れ物なのかわからないが備え付けのドライヤーがあり、それで髪を乾かしながら現状を再確認する。
まぁ、仕事が山積みなのは変わらないけどね……。
予定価格調書10件、最悪入札当日の明後日に決裁という手もあるが、できれば明日中に決裁まで終えなければいけない。
あまりいい状況とはいえない。むしろ、他の人ならさじを投げてもおかしくない。
為せば為る、為さねば為らぬ、何事も……まぁ、なんとかなる……といいな。
ともすれば落ち込みそうになる気分をなんとか上向きにして仕事に戻ることを決心する。
貴重品や身分証を身に付け忘れ物がないか確認し迷彩柄のサンダルを履いて脱衣所から出た。
地下1階から4階の仕事場に戻る前に自動販売機で翼を授けてくれるとされる赤い牛がトレードマークの飲み物を買う。
私に翼を授けてはくれないが眠気を払うカフェインは十分に授けてくれる。
仕事場に戻るとマニラフォルダにはさまれた関係書類の山が机の上で私を待ち構えていた。
ため息が出る。
が、逃げてばかりもいられない。
「さぁ、やりますかー!」
気合を入れて椅子に座り、書類の山をにらみつける。
すると、今までのはっきりとした意識がうそのようにぼやけていく。
早速か!?早速眠気の攻撃か!?早すぎる!ここで寝るわけにはいかないのに!
意識をはっきりさせようとするもうつらうつらしてしまう。
あー、これはだめだー……ちょっと仮眠しよう。
そう思うと同時に書類の山に突っ伏した。
お読みいただきありがとうございました。
ブックマークやら評価やらしていただけるとありがたいです。
よろしくお願いします。