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天才魔道士の不遜なる密技  作者: 小池
一章 ついてる
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ある日のティータイム

 ――俺が今の新式魔法を開発することになったきっかけはこんなものだ。

 今でこそ俺は「新式魔法の生みの親」だの、「魔法術式の神」だの言われているが、あの頃はすべてが手探り状態だった。

 何せ、マナの定義自体を見直す必要があったからな。人間がマナを視覚的に認識できず、極めてあいまいな感覚に頼るしかなったのだから、本質を見誤ってもしかたない。

 俺がここまで来れたのも、魔導書グリモアの力があってこそだというのは重々承知している。

 ――まあ、俺の溢れんばかりの才能と、たぐい稀な発想力があってこその成果だというのも事実だかな。

 鼻高々に言い放つ俺を、ヤツは胡乱げな目で見ている。

 コイツは魔法の才能はからっきしなくせに、俺の研究に懐疑的だ。才能がないからこそ理解できていないだけかもしれんが、それなら黙って感心していればいいものを。

 そのくせ困った時は俺に泣きついてくるのだ。

 ――言いたいことがあるなら言ってみろ。

 ヤツをじっとりと睨むと、慌てて表情を取りつくろいやがった。今さら感心したふりをするな、余計にむかつく。

 思ったことがすぐに顔に出る上に、表情を偽るのが壊滅的に下手くそなヤツだ。そのせいで余計なトラブルを招く。上級生や同学年の成績上位者には、どうやらヤツの挙動がやたらと癇に障るらしい。その点については俺も同意見だ。

 しかし、なぜか俺に懐いたヤツは虎の威を借る狐のごとく、俺の威光を借りて難を逃れようとする。おかげで俺もトラブルに巻き込まれるはめになるのだから、いいかげん縁を切っても良さそうなものだ。

 へらへらと笑うヤツの顔を見やる。俺は深いため息をついた。

 何だかんだと言ってヤツを見捨てられないのは俺だ。また泣きついてきたのかと呆れつつも、なんだかんだと手を貸してしまう。

 ――意外に大物かもしれないな、お前は。

 ヤツはきょとんとした顔で首を傾げる。

 ――この俺をタダでこき使うヤツなど、お前以外にいるまいよ。

 俺はテーブルの上の焼き菓子を口に運ぶ。ヤツの唯一と言ってもいい長所は、手土産を選ぶのがうまいことだ。

 今日の手土産も美味かった。サクサクとした触感と、じんわりと広がる甘さが絶品だ。

 あっという間に食べ終わった俺は、二つ目の焼き菓子を手に取った。


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