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第4話「暇だから城の中探索しよ~っと」

 早朝、まだ朝日が昇って間もない時間帯に薫は起きる。

 魔界には電気がなく、あまり夜遅くまで起きてられないため、夜は早く起き、朝は早く起きるのだ。現代っ子には見習ってほしいわね。

 まあ、一応明かりをともす蝋燭や、魔法があるのだが、蝋燭は高価なものだし、明かりは|レアル(魔力)を使うため、長時間は使えない。

 

 そんな魔界の生活もここ1ヶ月で慣れてきた。

 王の座(最初にいたところ)で私はいつものように朝食をとっていた。

 

「ねぇ、ロウド。今日は『アスカンタ王国の町』について話してよ。国民の暮らしとかも知っといたほうがいいんじゃないかしら?」


 そして、私はいつも食事をしながら少しずつこの世界のことも聞いてきた。

 

 この大陸は縦長の長方形のような形をしている。そして、南西には小さなでっぱりがある。

 その真ん中付近を少し右斜めに切ったのが、人間界と魔界の境界線である。

 人間界と魔界の境界線には、険しい山が連なり、そう簡単に行き来出来るものではない。

 ただ、勇者は抜け道を知っていて、そこを通ってやってくるらしい。

 抜け道を知ってるならバンバン攻め込まれてもおかしくないのにね。 


 それと、魔界の勢力図みたいなのを見せてもらった。

 この世界にも言語があるようだったが、あいにく私には読めなかった。魔王として召還された(運ばれた)んだからそれくらい読めるようにしといてほしいわね。魔力総量レアルトルは高くしてくれたのに。

 

 その勢力図では、私の国、『アスカンタ王国』は魔界のど真ん中にあった。

 ただ、高い山々が囲っているのでなかなか攻めて来れないらしい。……じゃあ、この前のあれは一体……

 ちなみにアスカンタ王国の大体の面積は100万平方kmと見た(目測)。

 城が真ん中にあって、東西南北の山までおよそ1000kmといっていたからね(本当かは分からないけど)

 そして、人口は2000万人ほどらしい。他の国と比べて国土面積も人口も1番多い大国だ。



 そして前も教えてもらったとおり東には『ビカリス帝国』。小さな山がたくさんあり、その中でビカリス帝国は過ごしているらしい。武力があるということで東一帯はビカリス帝国の領土だ。ここの種族は『獣魔族』と言って、魔力レアルを具現化(魔法に)することを苦手とする。


 南には『サヘラン皇国』。ここは、なかなか攻めるという行動はとらない。シュルンダ王国とは友好関係を築いている。領土は南の半分くらいだわ。ここの種族は、『|スピリット(精霊)族』と言われ、魔力レアルが多く魔法を得意とするものが多い。


 西には『ゴンタウル共和国』がある。魔界が割れたとき、少数民族は西へ集まり、この国を建国したらしい。領土は西から北まで広がっている。現在ビカリス帝国と領土をめぐって均衡状態が続いている。


 最後に、南西の半島には『ペルメス』という少数民族が住んでいる。唯一ゴンタイ共和国に加わらなかった少数民族である。戦闘能力が極めて高く、大人だとビカリスの正規兵だったら1人で1万人に匹敵すると言う。だが、領土は半島のみでペルメスの人口も更に少なくなっているらしい。魔力レアルは多いが、魔法は苦手とする(らしい)。


 なかなか覚えるのが大変だったわ。話しの途中で国の名前が出たら「そこどこだっけ?」って何回も聞いちゃったしね。

 そして、今日は町の様子を聞いてみようと思う。


「そうですね。民の様子を知れば、何が不満なのかなど知ることができ、反旗を翻すこともなくなると思いますからね。

 町の様子はと言うと……行って見たほうが早いですね。また今度散歩ついでに行きましょうか。薫様はここ最近運動不足ですし」


 ロウドは私の体を上から下まで一瞥して言った。

 

「うっ……確かにお腹のお肉が気になってきたころだけど……別に太ってるわけじゃないし……このナイスバディな体を維持出来てる……はず、だし……」


 肩身を狭くし、もじもじしながら言い返す。言葉がどんどん尻つぼみになっていく。

 ロウドは軽くハハッと笑うと話を戻した。


「では、散歩は明日でいいですか?」

「え、あ、うん」

 

 いきなりのことで呆気にとられる私。切り替え早すぎるよ……

 

「それでは、今日のところは軍隊の訓練を見に行きますか」

「分かったわ。軍事は大切だものね」


 私は両手を体の前でグッと握り言う。

 ところが、ロウドは相変わらず、


「やる気を表すのはいいですけど、早く食べないとせっかくの料理が冷めてしまいますよ」

「あ、はい……」


 冷たく――というより淡々と――言い放つのだった。




 城の裏にある、訓練所はなかなか広く、およそ1万人ほどが剣を持って訓練している。あくまで目測だけどね。なお、他の兵士はそれぞれの町でキチンと訓練しているらしい。

 訓練所といっても、ただの平地なのだが。まあ、自由に動けるからいいのだろう。

 もちろん地面は砂で、掛け声で兵士が踏み込むたびに砂煙が舞う。

 

 訓練の光景を見ながら私はブラウンと話していた。


「こういうのもいると思うけど、もっとレアルを集中させる訓練もしたらどうなの?」

「いえ、それは出来ません。

 魔力総量レアルトルは生まれた時から決まっています。少ない魔力レアルで『ブースト』するより、元を強化したほうが使えます。

 魔力レアルが少ないとすぐ切れますし……」

「ちょっと待って。ブーストって?」


 急に知らない単語が出てきて焦る私。

 普通に考えたら分かるけどね。 

 そんな私を全く気にせず説明してくれた。


「ブーストとは身体能力強化のことです。

 なお、目や耳に魔力レアルを集めてその部位の機能を高めることはブーストとは言わず、『グッダー』と言います」


 いろんなことが出てきたけど一応理解できたわ。忘れるのが怖いけど……

 なるほど、魔力レアルって生まれながらに魔力総量レアルトルが決まっているのね。

 でも、ブーストくらいは出来たほうがいいわよね。10階から飛び降りても平気なんだし、どんだけ強いのやら。


「じゃあ、もっと兵士にブーストの訓練をしましょ!

 10階から飛び降りても無傷なのよ。すごくない?!」

「ですが、そのくらいになるためには20年はかかりますよ……」

「20年?!」


 ブラウンの一言に私は衝撃をうけて、思わずブラウンのほうを向き、目を見開いた。。

 ロウドは10年であそこまでいったって言ってたわよね……ロウドってすごいんだ。いまさらだけど。


 ブラウンはそのまま話し続ける。


「ただ、やっぱりブーストが使えるのは良いことですよ。一人でもいればものすごい戦力ですから」


 アスカンタ王国では、あまり魔力レアルが多い子供は生まれて来ないようね。まあ、生まれてきても才能がないと意味がないけどね。

 

「ちなみにここの兵士で全員なの?」

「いえ、それぞれの町に別れています。ただ、それでもこの前の戦闘で数万もの兵士がなくなってしまいましたが……」


 ブラウンは剣を振っている兵士たちを見て言った。

 あちゃ、私の目測は当てにならないわね。

 

「でもご安心ください! 

 私が必ずやどこにも負けない屈強な軍隊に育て上げて見せます!」


 ブラウンは胸を手でドンと叩き潔い返事をした。

 う~ん、でも普通の兵士でも魔力レアルはあるのよね。それじゃあ……


「うん。頼むわ。

 それで相談があるんだけど……」

「はい? なんでしょうか?」

「あのね、ものすごいコストがかかると思うんだけど……」


 私の考えをとりあえず言ってみる。

 するとブラウンは冷静に振舞っているつもりだろうが驚きを隠せないようだった。

 

「そんな無謀に等しいこと上手く行くんですか?!」

「やってみなきゃ分からないわよ。とりあえず何人かで実験してみて

 期間は3ヶ月。その間にここの兵士全員が出来るようにしといて」

「さすがに無茶が……」

「あら、優秀な訓練官はどこへ行ったのかしら?」

「やらせていただきます! 必ずや!」


 その後、私はブラウンと少しだけ話してその場を後にした。





~~~~~~~





 ブラウンと話しが済んだ後、私は城を歩いて周っていた。

 ここ1ヶ月でずいぶんと魔王らしくなってきた(と思いたい)。

 

 そして今、私はあの魔力レアルが流れてきた扉と同じくらい大きな扉の前に立っている。

 扉に手をついて扉を開ける。残念ながらこの扉からは魔力レアルが流れて来ない。

 扉を開けると熱気と共に、肉が焼けた香ばしい匂いが漂ってきた。

 

「あ、薫様。こんにちわ。

 今お昼ご飯を作っているところです。少々お待ちを」


 ここは厨房である。

 鉄を薄く延ばしたフライパンのようなもので肉を焼いている料理長の姿が見えた。

 

 料理長の名は、『サイトン・ピーグ』。

 およそ150cmほどしかなく、ぽっちゃりしている。

 顔はいつも汗まみれで、油ギッシュだ。


「う~ん、待てないわ!」


 私はピーグの近くまで行き、横にあった完成した品をつまみ食いした。

 ピーグをやれやれと頭を振り、調理を続ける。


「全く、毎日毎日つまみ食いばかりするなら量を減らしますよ」

「え~! ちょっとそれは勘弁して! ね?」


 私は同じ目線まで屈み、両手を合わせてウインクした。

 ピーグはまたもややれやれといった態度で、


「毎日がデジャブですか……」


 そう呟きため息をついた。


 いいじゃない、毎日こんな可愛い子が可愛いしぐさしてるんだから。

 って言ったら、は? って顔をされたのでもう一口つまんでやった。





 お昼ご飯はもう少しかかりそうなので、厨房を後にして、今度は小さな扉の前に立っていた。

 この扉はいろんな魔法がかかっており、普通は中に入れない。いわゆる結界魔法というやつだ。

 扉に触ろうとすると、軽く電気が走ってはじかれる。


「そこに入りたいのですか?」


 突然後ろから声がして驚きながら振り返る。

 そこにはロウドが立っていた。相変わらず影で私がなにかやらかさないか見張っているのね。子供扱いしてくれちゃって。

 私は少しむくれてロウドに言った。


「もうそろそろここを見せてくれてもいいと思うんだけどな~」


 この部屋はなにやら大事なものがしまってあるらしい。

 ちなみに結界はロウドが張ったものだから、余程腕の立つ結界魔術師(そのまんまで結界専門の魔術師)か、ロウドしか解けないらしい。


 ロウドは相変わらずの無表情で、


「時が来たら開けて差し上げますよ」


 そう言ってまたどこかへ消えるのだった。

 



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