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第16話「ペルメス到着!」

 ペルメス半島。

 本当の名前は決まっていない。

 細長い種のような形している。

 中は傾斜が急な山が連なり、険しい山脈地帯になっている。

 川は特に見えず、生物の影も見えず、とても生き物が住んでいるとは思えない風だ。

 そんな半島の手前の平原に、バッファルこと『グレイル』が降り立った。

 

「ん~! 地面はいいわね~!」


 私は地面に跳び降りて、土を踏みしめる。

 そして、顔をあげ、手を組み、掌を上に向けて伸びをする。

 パキパキと気持ちいい音が背中から聞こえてくる。

 私が向いている方向には木など高いものがなく、あたり一面草しか生えていない光景が見える。青々しい草が太陽の光を受けて元気そうに風に揺られている。

 上を見ると、真っ青な空にふわふわと小さな白い雲がまばらに漂っていた。雨が降るなど微塵も感じられないほどの晴天だ。太陽がまぶしいわ。

 そして、視線を右か左に移すと、遠くに海が見える。

 海からは遠くても視認できるほど大きな魚? が跳びはねていた。おそらく飛んでいる鳥? を食べていたのだろう。

 

 そして、振り返ってみるとそこには!


「…………なんかもう帰りたい」


 山には草など微塵も生えていなく、どこか不安をかきたてる様な雰囲気をかもしだす。

 上を見ると、平野の清々しい青空が嘘のように、紫色の雲に覆われていた。雨どころか槍でも降ってきそうだ。

 そして視線を左右に移して半島のそばの海を見ると、真っ赤に染められた海が見えた。空から見えていたが実際に降りてみて見ると禍々しく感じられる。

 

「これは……なんとも……」


 アルフォも苦虫を噛み潰したような顔でこの光景を見ている。

 アルフォだけじゃない。他のみんなもいつも間にか降りてこの光景を見て居た。

 ロウドは無表情を崩さなかったが、雰囲気がここにいたくない、といっている。

 あの能天気なスレンちゃんも「うわ~……」と引いている。

 

 私たちは今からこの‘生物が入ってはいけない’みたいな雰囲気を出す半島に入らなければいけないのかと思うと自然と肺から重い空気が出てきた。

 深い息を吐いた後、覚悟を決めて顔を上げた。


「よし! 行くわよ!」

「「「え~……」」」


 全員からだるそうな声が聞こえてきた。

 おい! え~ってなによ!

 せっかく人がやる気になっていざゆかん! って時にさ。

 

「別に無理していかなくてもいいんですよ」


 ロウドが1歩前に出て振り返らずに言う。

 なんかこういう場面何回も見たことあるわ……


「私は薫様について行きます!」


 力強く言ってナイルが大きく1歩出る。

 これ絶対あーいうパターンだね。


「…………」


 無言で、しかし存在感を大きく出しながらブラウンが1歩出た。

 ごめん、ブラウン。完全に忘れてた。


「わしも退屈じゃからのぅ。いくぞい!」


 スレンちゃんはピョンと跳ねて私の横に来る。

 スレンちゃんは私を見上げるとニカっと笑う。か、かわええ~。

 ってここからはお約束のパターンね。つまんないからもう行くか。スレンちゃんと一緒にアルフォもいることだし。

 

 私たちはペルメス半島へと歩きだした。


「しょうがないな~。この天皇であり、天才魔術師である僕もついていって……あれ?」

「見事においていかれています」


 後ろで「なに~!」とか聞こえた気がするが気にしたら負けだ。

 お約束過ぎてつまらなかったわ~。

 ……でも、なんだかんだでついて来てくれるって嬉しいわね。


 そんな感じでペルメス半島最初の山へと向かって行った。





~~~~~~







 私たちはいきなり問題にぶち当たった。


「…………でか!」


 ペルメス半島に入るには、本島と半島をわけるかのように連なる山脈を越えねばならない。

 しかし、その山脈が馬鹿みたいに大きい。しかも急勾配。鬼畜ね……

 それを前にしばらく呆然と立ち尽くしていた。

 

「何をみんなしとるんじゃ? 行かんのか?」


 スレンちゃんが私たちを見て聞いてくる。

 いや~、行きたいのは山々なんだけどね……

 あ、そうだ。


「アルフォ、グレイルって……」

「無理です」

「まだ言ってないのに~……」


 瞬時に言おうとしていることを悟られ、強引に話しを止められた。

 

「なんで?」


 私は簡単には引き下がらず理由を問う。


「あんな禍々しいオーラを放つ山脈に、毒々しい色をした雲の下をグレイルに通らせるなんてダメです。あんなところを通ったらグレイルが焼き鳥になりますよ」


 あ、焼き鳥って言った。

 まあ、諦めるしかないわよね。ペルメスの話をきいたときに多少の……いや、かなりの無茶は覚悟していた(つもり)。

 崖の1つや2つ飛び越えるくらいの覚悟はあるもんね(見栄)

 私は全身を魔力レアルで強化して一気に跳び上がる。忘れてたけど、全身を魔力レアルで強化なんてするのは化け物並らしいのよね。

 まあ、スレンちゃんはそんなことしなくても地の力で私と並ぶけどね。獣魔族おそるべし。

 

「みんな行くわよ~」


 急勾配の山を少しの出っ張りを探しながら登っていく。

 登るというよりは、出っ張りに足を引っ掛けてピョンピョン跳び上がってるんだけどね。

 ロウドは私と同じように足を魔力レアルで強化出来るからいいとして、ナイルは大丈夫かな……ペルンは知らん。

 心配していると(もちろんナイルだけ)下から笑い声が聞こえた。


「はははは! カオルは面白いね。魔法が使えるなら風魔法で飛ぶか、土魔法で足場を作ればいいじゃないか!」


 ペルンが1人でこちらに飛んで来ている。

 おそらく風魔法で自分の体を上へと吹き飛ばしたんだろう。

 そして、勢いがなくなったらまた唱えるか、足場を作ってそこからまたなにかすればいい。

 ……べ、別に気づいてないことなんてないんだからね! あ、あえてやってなかっただけだから! ほ、ほら、ロッククライミングってのあるじゃない。

 なんか自分に言い訳するのが惨めになってきたので、腹いせにあいつ(ペルン)の頭上に土魔法ででっかい岩を作ってやった。

 

「まあ、そんなおっちょこちょいなカオルも僕はすぶへ!」

 

 なにか聞こえてたけど見事に岩石にあたったようね。ついでにそのまま落とすか。

 下から「あぁぁぁああ!!!」って悲鳴が聞こえるけど気にしない。

 ちなみにナイルは地道に登って来ていた。腕を魔力レアルで強化してほぼ腕の力で登って来ている。







 私とスレンちゃんでが1番に登ってようやく山の頂上付近までこれた。

 下を見ると馬鹿(ペルン)を落とした岩石が豆粒のように見えるわ。

 そして上に視線を動かすと、


「近くで見るともっとすごいわね……」


 毒々しい色をした雲がまるで生き物のように蠢いていた。

 私の‘なんか嫌だ’レーダーがガンガンに鳴り響いてるわ。

 スレンちゃんを見ると相変わらずこの険しい山を楽しそうに登っているわ。

 みんなはかなり近くまで来てるから問題はないわね。あるとすれば馬鹿(ペルン)まで近づいていることくらいかしらね。

 そうやって下へ視線を移して前へ戻したときだった。

 私のレーダーが最大級の危険を知らせると共に雲が不自然な動きをした。

 風にのって巡回していただけの雲が急にまとまり始めた。

 それでも雲が分厚いせいか青い空は見えないのだけれど。

 とにかくなにかが来ることは間違いないっぽいわね。

 私は山から生やすように土魔法で足場を作り、しっかりと固定した。

 忘れてたけど、最近術名を唱えなくても魔法が出来るようになったのよね。まさに天才の所業ってやつ?! 威力とかは落ちるけど……

 それはともかく、雷だったら即座にみんなを土魔法の『土壁スオロ・パリッド』で守れるように集中する。雲から出る攻撃って大体雷よね。

 そう構えていると雲が一瞬動きを止めた。

 そのまんま、雲が一切動かなかった。

 一瞬とはいえ、時が止まったのかと錯覚しそうだった。 

 その次の瞬間。

 強烈な光と轟音と共に、強烈な雷が私たちに向かって落ちてきた。

 いや、雷なんていう小規模じゃなかった。

 え~っと、すごい電圧がかかった100tハンマーで殴ったような……ええい! 分からん!

 とにかくそんなすごいものが落ちてきた。

 私は瞬時に土壁スオロ・パリッドを作った。なおかつ魔力レアルを最大限に込めて。

 雷が私の土壁にぶつかる。

 

「うっ……」


 これは半端ない威力ね。多分特魔法くらいはあるんじゃないかしら。

 対してこちらは魔力レアルをかなり込めたとはいえ、上魔法。

 結果は目に見えてる。

 ほんの数瞬後、土壁を破って雷が私に向かってくる。

 あれ? 雷って土を通るから突き破るなんて出来ない……あれ?

 なんてわけわかんないことが頭をよぎる。

 いまさらそんなこと考えても無駄なんだけどね。

 私はそのまま雷打たれて意識が遠のいていった。


「薫様!」


 遠くでロウドの声が聞こえた気がするけど、意識はもうなくなっていた。





~~~~~~~~







 目を覚ます。

 体中が痛い。動かそうとすると激痛が走る。

 一応無詠唱で回復魔法を念じる。詠唱するとなんかダメな気がするから。

 でも、やっぱり無詠唱だとそこまで効果は高くない。結構魔力レアル込めたのにな~。

 それでも何回か念じていると次第に楽になってきた。

 楽になったところで一旦落ち着く。

 そして首を少しずつ動かし、周りを見る。周りに誰かいたら動いたってばれるから最小限の動きで。

 周りを出来るだけ最小限の動きで見て行くと、誰もいないことがわかった。さっきから息の音すらしなかったしね。

 まだ痛む体に鞭打って上体を起こす。ゆっくりと起こす。

 どうやら私は体を拘束されて牢屋に入れられているっぽい。

 え! まさか私はこのまま性奴隷ルート?!

 そんなことが頭をよぎる。

 ……アホらし。寝よっと。

 そんな風に自分の置かれている状況をよく理解していないまま私は眠りについた。







~~~~~~~~








 起きるとそこには男がいた。

 長身で2mはないけど180はあるほどの長身。

 手足もスラリと長い。太くはないけど細くもない。だけど、無駄な脂肪などついていない。すべて筋肉で出来ていて、それが凝縮したような感じだ。

 髪は銀髪のサラサラヘアー。うなじがギリギリ見えるか見えないかくらいの長さで切りそろえられている。

 そしてなにより美形!

 凛々しいという言葉がここまで似合う男はいないんじゃない? ってほどの美形。なにより、人間に近いからすっごく好感が持てる。唯一違うのは耳がとんがっていることくらいかな。ってエルフみたいね。まさかこれがダークエルフ?

 

 なんて見惚れていると、なにか話しだした。


「ワタシノコトバガワカリマスカ?」


 なんか変なしゃべり方だったけど一応意味は分かったので首を縦に振る。

 美形のお兄さんは私が頷くのを見るとホッとして胸を撫で下ろす。

 そして言葉を続けた。

 

「アナタハナンデココニキタノデスカ?」

「え~っとね、あなたたちと同盟を結びに来たのよ」


 なんとなくこのお兄さんがペルメスだと思い、とりあえず同盟を申し込む。違っても同盟を結んでおいて悪いことはない(と思う)からね。

 でも、お兄さんは同盟という言葉を知らないのか、繰り返し呟いて首をかしげる。絵になるわね~。

 私はもっと分かりやすく説明する。


「えとね、私はあなたたちと友達になりたいの」


 ペルメス? のお兄さんは一瞬明るい顔をしたが、すぐに困ったような顔をした。


「ワタシタチ、トモダチはツクリマセン」

「なんで?」


 今度は私が首をかしげて聞く。


「ムラノミンナノヤクソク。マモラナイトダメ」


 なんだかこのお兄さんの村は大変そうね。

 って肝心なこと聞いてなかったわね。


「あなたはペルメス?」

「ハイ。マワリノクニカラハそうヨバレテイマス」

 

 やっぱり私の感は冴えてるわ!

 でも同盟はダメみたいね……どうしようかしら?

 ってそんなこと考える前に現在の状況を確認しないと。

 私は手と足をロープで縛られて、上手く動けない。

 これは無詠唱で威力の下がった炎なら焼き切れそうね。詠唱したら私の腕が灰になっちゃう。

 そんで今は運ばれたのか、どこかの部屋にいる。

 おそらくお兄さんの部屋だろう。

 ってことはやっぱり私は性奴隷みたいな感じに?!

 無詠唱でも特魔法ならこいつ1人くらい消し炭に出来るわ。さっさとやってここから逃げ……


「×¥○~@/~!」


 たくさんの子供が理解出来ない言語をしゃべって元気良く部屋に入ってきた。

 そしてお兄さんに抱きつく。

 お兄さんはニコニコと笑顔を絶やすことなく接している。そしてなにかいうと子供たちはまた元気良く部屋を出て行った。

 …………やっぱりもう少し様子を見ましょうか。それにこんな美形にヤられるなら本望! なんつってね。


「スイマセン。ワタシノコドモタチガサワイデシマッテ」

「いえ、いいですよ。そういえばあなたの名前は? 私は薫」

「ワタシノナマエハ『ペルー』デス。ヨロシクオネガイシマス」


 私はペルーが手を差し出してきたので握り返して握手する。

 ペルーの手は大きくてゴツゴツしていて、まさに戦士って感じだった。

 そうか、ペルメスって戦闘民族みたいなものだものね。決してサ○ヤ人とかじゃないわよ。

 そして、私は意外にも落ち着いて今の状況を聞いていた。



毎日更新はきついっすσ(^_^;)アセアセ...

それに…………頑張りまっす!

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