第15話「次の目的地は……ってなんであんたが?!」
私の提案(我が侭)でサヘラン皇国行くことになった私たち。
メンバーは、私の執事? のロウド、兵隊長のロウド、メイドのナイル、そしてなぜか一緒に来ているビカリス帝国の皇帝、スレンちゃんとその執事? のアルフォ。
行きは、獣魔族が乗る『バッファル』に乗り快適な旅をおくっていた。
最初はサヘランを囲っている城壁に圧倒されていたが、サヘランに入るのは案外苦労することはなかった。
だが、そこでロウドが重大な事実を発表。
なんと一度サヘランへ入るとお偉いさん方の了承を得ないと外へ出る事はできないそうだ。
ちなみに出た後で気づいたのだが、「上から出れるんじゃない?」と聞いたところ、「特殊な魔法で無理です。バッファルでさえ入る事も出ることもできません」とのことだ。
そして、私たち(私だけかも)は開き直って観光していた。
すると、怪しげな仮面をかぶった2人組が男を連れて裏路地へ!
なんやかんやで助けました。
そんで、なんか魔法学校の元教師らしくちょうどよかったので魔法を教えてもらい、かなりのパワーアップが出来た。
ただ、1週間ほどしてある噂が目立つようになってきた。
なんでもアスカンタ王国の王が侵入しているらしい!
もう、こりゃ大変だと思って逃げ出したわけ。
そんで都合よく見つかって(勘違い)捕まったのよ。
そして、王宮の謁見の間らしきところへ連れて行かれて天皇をボロカスに罵りました(テヘッ)。
そしたら、天皇はご立腹。特魔法で周りの者全員が火達磨になるところを私の防御魔法で助けちゃった。
私は天皇を慰めてあーだこーだしてたらいきなりプロポーズ。
まあ、私のこの超美形な顔を完璧なスタイルの前では天皇でも惚れちゃうのは仕方ないわよね。
そんで、同盟結んで脱出方法ゲット!
今更気づいたけど、脱出方法があのでかい扉開けるなのよね……お偉いさんの了承がないと出れないんじゃ……
まあ、そんなこと気にせずに出てきてグレイルを呼んで空の旅再開!
なんか余計なのがついてきているけど……
「カオルちゃ~ん!」
「邪魔!」
あ~、なんでこいつがきてんのよ!
私は疲れて寝てしまって起きた時なぜかペルンが一緒に乗っていた。
しかも私が目覚めた瞬間に抱きつこうと跳んで来る始末!
足であいつの顔を踏みつけてやったわ。嬉しそうなのが気に入らない。
「僕はそのくらいじゃへこたれないよ!」
「ロウド! ペルンをどうにかして!」
私はしつこくまとわりつくペルンをどうにかして欲しくてロウドに懇願した。
すると、どこから現れたのかガッシリした体型で黒いスーツを着ている。、髪は綺麗な黒色でオールバック。少し髭が生えているいかにも執事って感じの者がペルンの首根っこをつかんで止めてくれた。
「ペルン様。あんまりしつこいのは嫌われますぞ」
しかも声までダンディー! 私の中で彼の株は急上昇中!
淫魔だからか、限りなく人に近いのもいいわね。浮いていないし。
「そ、そうか。分かった!」
ペルンは「え? そうなの?」みたいな顔して頷いていた。ナイス執事さん!
ていうか、やっぱりなんで……
「ペルンいつの間に乗り込んだの? 私が火炎鎚で吹き飛ばしたのに……」
私はかなり魔力を込めてのフルスイングだったにもかかわらず、ケロっとしているしすぐに出発したのに乗っているってことはすぐに来たのよね。
すると、ペルンは得意げに言った。
「愛に不可能という文字はないよ」
ぐっと親指を立てて、歯をキラリと(光ってないけど)させている。
チッイラつく仕草ね。
私が不機嫌を全開で睨みつけていると、執事さんが説明してくれた。
「ペルン様はそれくらい薫様のことが好きなのでございます」
「説明になってないわよ!」
あんたもそれか!
私は最後の砦ロウドに助けを求める(どっちかっていうと助けろが正しい)。
「え~っと、そのまんまですね。あんだけ吹っ飛ばされたのにものすごい勢いで帰ってきましたから」
「あなた最近疲れているのね。旅の時くらい休んでいいわよ」
「え?」
全くロウドも仕方ないわね。
今までそんなに無理していたなんて。
こういうときくらい休ませてあげなきゃ。
なんかロウドが「事実……」とか言ってる気がしたけど聞こえてないわ。
だって、感覚的に1000度ある業火を纏った太さ直径1m、横幅3mの巨大鉄ハンマーで殴られて生きてるどころか、ケロっとしてるのに、それが愛の力っていったら私壊れちゃうわよ!
「それより次はどうするのじゃ?」
「ペルンを送り返す」
私は即答した。
1秒でも早くこんなやつと離れたいもの。
スレンちゃんは「いや……それは……」と困っている。
「薫様、サヘランに戻るのは無理そうです」
「なんでよ」
アルフォが私に言ってきた。
ついイラついてた私はアルフォにあたるように怒気混じりの声で聞いた。
そんな状態の私のアルフォはとんでもないことを言った
「グレイルが帰りたくないと言っています」
「は? なにそれ? 私の最大魔法最大出力で消し炭にするわよ」
脅しでそう言うとアルフォは慌てて私をなだめる。
ロウドもブラウンもナイルも全員でなだめに入る。
ペルンもドサクサにまぎれて入ろうとしていたので光の強化版の『閃光』で目をつぶしておいた。ちなみにみんなと私は目をつぶらせた。
なんとか落ち着いた私はもう1つの案を出した。よく考えたらグレイルを消し炭とか何考えてるんだろう……
「ペルンを突き落とすしかないわね」
……最初からこういえばよかった。
なんかペルンはいまいち理解していなく「え? どゆこと?」とキョドってる。
まあ、都合がいいわ。有言実行!
そう思ってペルンへ歩み寄ろうとするとまたもやみんなに止められた。
なんで止めるの? 最善策じゃない。
ナイルが呆れた様子で「どんだけ嫌いなんですか……そんなに一緒にいないのに」と呟いた。
ん? そういえばそうね。私そんなに嫌いじゃないわね。
……好きでもないけど。
私は大人しくペルンとは一番離れた反対方向に寝転がった。
ふわ~、寝てたけどまだ眠いわ……
私は丸くなり、完全に寝ようとする。
「ちょちょちょ! じゃからどうするのじゃ!」
スレンちゃんが私の肩を持ってゆさゆさと揺らしてくる。あ~、すごい気持ちいいわ。なんかゆりかごみたいで。
私がスレンちゃんの優しい揺さぶりで夢の世界へ入ろうとしたとき、
「あ~、もう起きるんじゃ!」
地震が起きた。しかも震度7。
なんてことはなく、‘ただ’スレンちゃんに肩を持たれて‘ちょっと’強く揺さぶられただけだった。
あ~、死ぬかと思ったわ……
今も世界がグワングワンしているし。
「それでこれからどうするんじゃ? わし、もっと面白そうなところに行きたいのぅ」
最後の1言は「つまんないよ~」という子供のようでキュンってきた。
でも、スレンちゃんの面白いって危険なことよね……そう思うと可愛くなくなるわ。不思議ね~。
じゃあ、とりあえずどこ行こうかな~。
私が頬に掌を当てて考えているとペルンが1言言った。
「魔界を統括するならペルメスを説得に行ったほうがいいんじゃない?」
「へ~、なんか理由でもあるの?」
なんか真面目に答えてたから話を聞こう。
なぜかみんなは口を半開きにして唖然としているが(執事さん以外)。
「なんか最近ペルメスが領土拡大しているらしいんだよ。つまり、人口が増えてきて戦力が整ってきたってこと」
「なるほど」
ずっと前に聞いた話ではペルメスは身体能力が化け物らしいものね。
ただ、数が少ないためビカリスの獣魔族には負けたそうだけど。
それでも接戦だったらしいわ。ペルメスの戦力100に対して獣魔族は1万で挑んだのに。ちなみにこれは国が分かれる前の話ね。
それだけ個々の戦闘能力が高いらしいわ。それに誇り高い民族でもあるんだって。
「多分ペルメスの戦闘員が1万を超えたらいくらアスカンタやビカリス、それにサヘランでも勝てる気はしないね」
ついでにゴンタウルも、と言っていたけどなんなの? その桁外れの戦闘力。
なんでもサヘランの情報によれば今はなぜか人口が爆発的に増えてて、今年で5000人を超えたらしい(戦闘員以外も含めて)。
ちなみに情報はちゃんと情報部隊があちこちに潜伏して、なにかあったら知らせに来るようになっているんだって。
それでも半年に1回報告にこさせるらしい。生存の確認も含めて。
なお、入るときは普通に入ってくるが、出る時は大男50人も動員せねばならないので大変だとか。
「今のうちに同盟を結んでおかないと面倒だと思うよ。唯一ゴンタウル共和国に入らなかった部族だし」
「う~ん、そうね。確かに早めに手を打っといて損はないわね。あそこは山が連なって過酷な環境だし、スレンちゃんも楽しめるわ」
「なに! 魔物もたくさんおるのか?」
スレンちゃんが這い這いで近づいてきて、その純粋な瞳をキラキラと輝かせて聞いてくる。
今の這い這いのスピード速すぎる……
「もちろんよ。そりゃ、今までよりも段違いに強いのがわんさか出てくるわよ」
「おー! 楽しみじゃ!」
わずか10歳くらいの子供が強い魔物と戦うのが楽しみって……さすがに、ねぇ?
でも、アルフォは心配するどころか「こんなに逞しくなられてアルフォは感激です」と涙する始末。なぜ?
ロウドはさも当たり前のようにたたずんでいる。
「獣魔族なので。戦うことが至上の喜びとしている種族なので」
ロウドが耳元で教えてくれた。
ついでに、「ペルメスも獣魔族ほどではありませんが好戦的です」という情報も入って固まったのはいうまでもない。
ペルメス1人で獣魔族100人に匹敵する強さの持ち主よ。それが好戦的ってもう終わりじゃん。
1人で絶望しているとスレンちゃんが私の肩にポンと手を置いて1言。
「楽しみじゃな!」
泣きそうになったわ。
~~~~~~
私たちはグレイルが向かっている方向をアスカンタからペルメスの住む半島へと変えた。
さっきはサヘランへ戻れと言ったら断ったくせに……この鳥風情が……
なんとか怒りを抑えて私は空の旅を過ごしていた。
あまりにも暇なので空に向かって火球の特大版を放ったり、水球を前方上空へ放ってそれに高速で『土球』を放ち破裂させ雨みたいにして降らせたりしてたが、すぐに魔力の無駄だと気づき止めた。
サヘランで死ぬほどたらふく食べてきたから大丈夫よね。サヘランの上級魔術師20人分以上を満タンにしたんだからこれくらい平気よね。
ガイルの家では魔力を使いに使って死ぬ寸前まで使ったので、授業(修行よ、あれは)の後は2mの豚丸ごと食べたわ。それでも足りないけど。だから最後の方は満タンになるまで実験として2mの豚10頭は食べたわ。懐がさびしい……
そんな自分への言い訳をしつつ、暇だな~、と寝転んで空を見上げていた。
本当になんもないな~……早く着かないかな~……そういえばペルメスの半島には竜も生息してるのよね。見てみたいわ~。そして食べたい。
竜の肉にかぶりつく様子を思い浮かべたらよだれが出てきた。
別にお腹は減っていない。
魔力=生命エネルギーだから、私の場合約5ヶ月以上は食べなくても生きていけるわ。嫌だけど。
ちなみに水だけはとらないと脱水症状になるんだって。万能じゃないのかよ……
ということで……
「ナイル! ご飯作って~」
まるで子供のようにナイルにご飯を頼む。
ナイルは「はいはい」と少女をあやすような笑みでこっちを向いた。
ナイルは出かけるために用意していた荷物からりんごそっくり(てかまんま)な食べ物を取り出し、綺麗に皮をむいていく。
ちなみにグレイルの背中は驚くほど揺れないので手を切ったりしないから安心ね。
「あいた!」
うっそ~ん。
ナイルは指をかなり深く切って血がブシャーと噴出していた。
なんでりんごの皮むきでそんなことに……?
でもそんな怪我をしても「あいた!」で済ませるところがすごいわね。
もうメイドじゃなくて兵士のほうが似合ってるんじゃない?
私はナイルのそばに行き、ナイルの切った指を掌で包む。近くで見たら半分くらいいってた。どうしたらそうなるのよ。
回復魔法をかけてナイルの怪我を治して上げる。
「あ、ありがとうございます」
「ドジにもほどがあるわよ……」
私は呆れながらそう言ってナイルの膝の上に落ちたりんごと包丁を手にとる。
ナイルが「あっ」と手を伸ばすがお構いなし。私がりんごの皮むきを始めた。
皮がみるみる削られていく。
ナイルはそれをただ、呆然と見ていた。いや、なんか尊敬のまなざしに変わったぞ。
皮をむき終えた私は掌の上で8等分にカットしてみんなに1切れずつ渡して行く。
なぜかみんなは「え? あ、ありがとうございます」と言って受け取る。
スレンちゃんなんて「すごいのぅ!」と大絶賛だ。
全くりんごの皮むきぐらいで……
私の思いとは裏腹にみんななぜか拍手をする。
「「「お~」」」
「なんでよ!」
なんだか馬鹿にされてる気がするわ……
全くなによその「いつもはあんなんだけど意外にできるんだ」みたいな目は!
もう不貞寝してやる!
私が寝転がると同時くらいにアルフォが言った。
「ペルメスの半島が見えてきました!」
「タイミングってものがあるでしょうが!」
結局これで私は跳ね起きてみんなにクスクス笑われることになったのだった。
もう心が折れそう……
とにかく目標の10万文字目指して頑張ります