第13話「あれ? なにか足りないような……ま、いっか!」
今日は間に合いました(*^-^)
明日も11時に間に合わせたいと思います(>_< )
他国の王が結婚を申し込んでくる。
それはどういうことか。
王と王の結婚ということはなんやかんやで同盟みたいになる。
あ~、なんていうんだっけ? 政略結婚?
あれ? でもあれは王の娘とか息子じゃないっけ? ん? もういいや。
とにかく王と王の結婚とはお互いに攻撃しない保障? でもある(のかな)。
まあ、私たちに有利なのは変わんないのかな?
それが今天皇との謁見の間で起きている。
「僕の妻になってください」
「はぁ!?」
急に天皇は私の前で跪き、私の手をとり、私の目をまっすぐ見てプロポーズされた。
突然のことに私は怪訝な顔をするばかりで何も言えない。
ロウドとアルフォはやれやれと首を振っていて助けてくれる気配はない。あいつら……
それよりも天皇ね。さっきからずっと私の言葉を待っている。
…………どうしよう。
無下に断ったら何が起こるかわからない。
私がしばらく何も言わないと、何を勘違いしたのかもう一度言った。多分私が自分の耳を疑ってるとか思ったんだろう。はっきりとした口調で言った。
「僕の妃となってください!」
「え? 嫌ですけど」
はっ! しまったつい本音が……
しまったと思ったときにはもう遅い。
天皇は私を見て、口を半開きにしたまま固まっていた。
私があたふたしていると、徐々に意識をとりもどしてきたのか、目に涙が浮かんできた。
え? また泣くの?
そう思った時天皇からものすごい魔力が溢れだすのが感じ取れた。
やばい!
そう感じたときだった。謁見の間が激しい業火に包まれた。
私は急いでここにいる全員に簡易防御上魔法の『壁』を展開した。
全員にそれぞれ6方面に茶色の壁ができ、囲うことに成功した
だが、それは時間の問題だった。この業火の前ではもって5秒。
私はその間に思考をめぐらして何をすべきか考えた。
…………あ~! なにも思いつかないわ!
私は自分の頭の悪さに怒りながらも、防御の特魔法を唱えた。
もう少ししてからみんなに見せて自慢したかったのに…………
「『防壁』」
今度は強固な鉄の壁が全員に6方面に発生した。
今度はなんとか防げそうね。
と、ほっとしたのもつかの間、なにやらぶつぶつと聞こえてきた。
「……僕って天皇なのに……あれ? 天皇の妃ってどんな女の人でもなりたいんじゃないの? あ、そうかそんなになりたいものだけど僕が夫なのはそれ以上に嫌なんだ……」
なんかすごい暗い落ち込んだ声が目の前から聞こえる。
あ~、天皇だ。手を握ってたからそのまま一緒に防壁の中に入ったのね。
ってさっきの様子からこの攻撃したの天皇よね? おそろしいわ……
「ねえ、天皇様。この攻撃止めてくれない?」
「僕なんてゴミ以下の存在なんだ……じゃあ、そんな僕がいる世界なんて一緒に滅ぼしちゃおうか……」
あちゃ~、これは重症だわ。
どうしましょう。これの原因ってなんだったかし……!
いろいろ考えていると特魔法の防壁までもが溶かされようとしていた。
なんて威力なの! 恐ろしい子……
「うんしょっと」
まあ、もう少し魔力を込めれば余裕で防御力が上回るけどね。
さて、どうやってなだめようかしら。
「ねえ、天皇様私と結婚したいの?」
「そうだ!」
さっきは無視だったのにこれは聞くんだ。なんかイライラするわ。
「でもね、私たちはお互いの名前すら知らないし、性格とかも知らないのよ」
「そんなの関係ない! 僕は君の優しさに惚れたんだ!」
え? 優しさってなに? あんな罵詈雑言浴びせられたのに?
……あ! そうか分かったわ。この子はマゾなのね。
う~ん、困ったわ……
あ、でも有効でもあるわね。
上手い事使えば戦争せずに取り込めるわ。
ふふふ。ってなんか私が悪人に見えてきたわ……
「でも私は結婚はお付き合いをしてお互いの事を知ってからじゃないとしたくないの」
「それはつまり、その‘おつきあい’とやらをすれば僕と結婚してくれるのか?」
え~っと、なんかおかしな方向にいってるきがするけど……
「ええ、気があえばいいわよ」
そういうとパッと外の業火は消え去った。やっぱりこの子がやっていたのね。
結婚云々については、とりあえず曖昧な答えをしておけばどうとでも言えるわね。……うんひどいことってわかってるわよ。
さて、ここからが本題ね。まあ、ちょっと可哀想になったから名前くらいは名乗っておきましょうか。
「私は橘薫って言うの。よろしくね」
「え? あ、ああ。僕はサークス・ペルン。よろしくな、カオル」
私が手を差し出すと不思議そうな顔をして相手も手を出す。
そして握手をした。
そのあとはみんなの防壁を解いてあげて、なんとか話しはまとまったわ、とロウドに目で伝える。
さて、続けましょうか。
「ねえ、改めていうけど私アスカンタ王国の王様なの。私戦争が嫌いだから、出来るだけ争いたくないの。軍門に下れとは言わないから、同盟になってくれない? ちなみにビカリス帝国とも」
ビカリス帝国と言うとペルンはビクッと大袈裟にびびっていた。
「う~ん……お? もう終わったのか?」
アルフォにおんぶされていたスレンちゃんが起きた。まだ眠そうに寝ぼけなまこだ。
そして周りを見渡して、ペルンを見つけると、
「あ! おぬしはわしが小さいころ『遊んだら』泣きながら帰っていったペルンじゃないか?」
「は、はい! そうですスレンさん!」
スレンちゃんがしゃべるとやたらと背筋を伸ばして礼儀良くしゃべりだした。
スレンちゃん遊んだって言ったわよね……はは~ん。
私はこれからの事を思うと思わず笑みがこぼれた。
「ねぇねぇ、ペルン。スレンちゃんってビカリスの皇帝なのよ」
「ええ! あの子が?!」
あんな小さい子がありえない……とペルンはぶつぶつと呟いていた。
よし、脅しスタート。
「ねえ、スレンちゃん。またペルンと遊びたくない?」
「うぬ! もう一度遊び……」
「同盟の件了解した!」
……ッチ、早いわよ面白くない。
まあ、いいわ。とりあえず同盟の件はどうにかなったし。
「スレンちゃん。しばらくペルンと遊んできてもいいわよ」
「よし! では行くぞペルン!」
「え?! ちょ?! えぇ~!」
さて、これからどうするか……
うん、こんなときのロウドだね。
「ねえロウド。これからどうする?」
「特に用もなくなりましたし、帰りましょうか」
「そうね。それじゃ帰りましょう!」
私たちは意気揚々と王宮を出て行こうとした。
あ、いけない忘れてた。
「どうやったらサヘランから出て行けるの?」
中にいる者全員に聞いてみる。
でも、誰1人答えようとしない。
あ、アルフォだった。
「アルフォ、解いてあげて」
「わかりました」
アルフォがなにか唱えると全員一斉にしゃべりだす。
「あんた天皇様になんて口を!」
「あんた自分がなにやったのかわかってるのか!」
「これはサヘラン皇国への宣戦布告ととってもよいのだぞ!」
「あんな汚い言葉の数々をよりにもよって天皇様に!」
「よりにもよって無能の役立たずのそこにあるような塵よりも無価値な者だと!」
そこまで言ってないわよ。てか私はそんなこと1言も言ってないのに……
とりあえず、声に魔力を込めて脅すような声にする。本当に便利ね。
「静まれ! もうアスカンタ、ビカリス、サヘランは同盟国だ。それを分かれ!」
空気がピリピリする。
自分でもちょっとびびっちゃうわ。まるで機関銃を至近距離で顔に向けられたみたいだわ(そんな経験ないけどね)。
とにかく、みんな黙ったことだし、
「で、どうやって出るの?」
今度は優しく問いただす。
急な変わりように戸惑いを感じながらも淫魔のメイドが、説明してくれた。やっぱあのスタイルでエプロンは反則よ。美人だし。
「あの大きな門のどれかを開ければ帰れます。あれは、屈強な男たち50人が全力で押してようやく開くくらいの重量です。もちろんその労力はこちらが確保しますので」
「いや、自分たちで開けるから大丈夫よ」
今の私たちならそれくらい余裕だもの。
スレンちゃんだってこの1週間ただ、ぼけっとしてたわけじゃないんだから。
でもメイドさんは勘違いして、
「え?! まだ町にお仲間がいるんですか? ……いや、普通そうですね。こんな少人数で敵国に来るわけがない。でも、扉をくぐった人はここ最近この人たちしか……はっ! つまり前々から……」
なんかすっごいぶつぶつ言って勘違いしてる。
「……だから今動き出して……」
「ちょっとメイドさん! 勘違いはほどほどに。私たちはここにいるので全員ですよ」
あれ? 全員って言葉に違和感……
あ、スレンちゃんがいないからか。
メイドさんはそれを聞くとまた「え?! そんな少人数であれを?! ……やっぱり悪魔に魂を売って……」と言い出した。悪魔に魂を売るって……自分らが悪魔なのに。
まあ、大変な(面倒な)メイドさんは放っておいて行きましょうか。
「それじゃ、ロウドかアルフォ。スレンちゃんを迎えに行って来て」
「「かしこまりました」」
うわ……2人がはもると気持ち悪い……
ドラキュラと犬……絶対合わないでしょ。
さて、ここに残ったのは私とブラウン。
ブラウンってば最近すっかり影が薄くなったわよね。
「ねえブラウン」
「はいなんでしょうか?」
ブラウンも無表情で返答する。
むー。ロウドの真似?
「もっと笑ったほうがいいわよ。あと、もっと自分の意見をいいなさいね」
私がそういうと、わずかだがブラウンの口角が上がった。
うんうん。その調子。
そう思っていると、ブラウンから、
「では1つだけ意見を言わせてもらいます」
と言ってきた。
早速2つともやるなんて。頑張るわね。
「もちろんいいわよ」
「では、失礼かもしれませんが。やっぱり女性が蟹股になるのはよろしくないかと思います」
「……っ! っるさい! もう……」
私は顔を赤くしながら、(まだ直ってなかったんだ……)と少し落ち込んだ。
まさか、今までいろんな者にこの蟹股を見られていたの?!
そう思うと泣けてきた。泣いてはないけど。
なんてことをやっているとスレンちゃんを迎えに行った2人が戻ってきた。
スレンちゃんは2人の間で両方手をつないでもらっている。なんか微笑ましい光景ね。
あそこにアルフォのかわりに私が入ったら、まるで家族……
「スレン様をお連れしました。では行きましょうか」
「ひゃう!」
いつの間にか目の前にいて、急に話しかけられたからびっくりしたじゃない……
まあ、そんなことはおいといて。
「本当に帰るわよ~」
ようやく、終わったわ。
すっごいハプニングがあったけど、そのおかげでサヘランとも同盟を結ぶことができたわ。
なんやかんやで大変だったけど、結果オーライってことで。
私たちは、この1週間のことを思いだし、話し合いながら王宮をあとにした。
よ~し、これであとは『ゴンタウル共和国』と『ペルメス』のみね!
もうひと踏ん張り! 頑張らなくっちゃ!
こうして私の『サヘラン皇国との同盟結んじゃお~』計画は無事成功した。
……ん? こんなのいつ考えたかって? もちろん今でしょ。
なんかちょっと前の流行でそんなのあった気がする……
ま、いっか!
考えるのを止めてロウドたちのおしゃべりの輪に私も加わる。
「ねえ、今何話してるの?」
私はロウドの後ろから話しかける。
みんな振り向いて真ん中を空ける。私に来いってことかな。
私がそこに入るとロウドが答える。
「はい、今なにかが足りないとのことでしゃべっていました」
みんな頷く。え~っと確かになにかが足りないわね。
私は後ろ――王宮――を見てみる。みんなも私につられて見る。
ちょうど目があったさっきの『勘違いメイド』さんが手を振っていた。
全くあのメイドは……うちのメイドを見習って……
「「「「「あ~!」」」」」
みんなからすっかり忘れられていたナイル。
かくいう私もなにか足りないと思いながらもすっかり忘れてたわ……ごめんね。
「た、多分ガイルの家にいるわよね」
私はちょっとどもりながら切り出した。
「そ、そうですね。早く行きましょう」
ロウドがそう言うとみんなが頷く。
あ~、なんでナイルだけ捕まっていないのよ……
ちょっと逆切れしながら私たちはガイルの家へとダッシュで行った。