第12話「天皇とごたいめ~ん!」
あらら、13時に間に合いませんでした(T_T)
明日は12時に間に合うように頑張ります!
あれから1週間。毎日魔法の練習をして、今はもう6系統すべての特魔法が使えるようになった。
ガイルは私の成長振りにとても驚いて「こいつは100年に1人の逸材だ」とか言う始末。
なんか興味があったからやったたけなのにすごいことになったわね。
そんな風に過ごしていたときだった。
「なあ、知ってるか? サヘランにアスカンタの王が乗り込んでるらしいぜ」
「え?! そ、そうなの?」
いつもどおり魔法の練習をしているとガイルが急に話してきた。
ちなみに特魔法を練習しているのだが、空に向かって放っているので町に被害はない。
「ああ、全く物騒だよな。しかも相手は魔王だぜ。噂では、極悪非道、血も涙もなく冷酷な女って聞いてるぜ」
「誰よ! そんな噂流したやフム!」
私が怒鳴っているといつの間にか現れたロウドに口を押さえられた。
そして、耳元で事の大きさを教えてくる。
「どうやら私たちのことがばれているようです。町でもそんな噂が流れていて、兵士も巡回しています」
なるほど。それは大変ね。
私がコクリと頷くと手をはなした。
「ガハハ! 何をやっているんだ? まあ、いいわ。
それより、薫!」
「はい!」
急にガイルが大声で言ってきてびっくりした。
ガイルはニヤっと笑ってこういった。
「もうお前に教えられることはない! こんな短時間でよく頑張ったな!」
「……え?」
一瞬何を言っているんだ、と思ったがすぐに理解できた。
「じゃあ、もう私は……?」
「ああ、もうお前は俺の知っている魔法すべて使える。ついでに言うなら俺よりもはるかに性能が高い」
「ぃやったー!」
私はバンザイをしながら何度も飛び跳ねた。
なんか認められたってことがすごくうれしい!
「ということだ。別にまだここにいてくれてもいいが……お前らはこれからやらなきゃいけないことがあるだろ?」
ガイルはニヤッとして言った。
まあ、こんな規格外なやつだし、メイドみたいなのもいるし、執事までいたらばれるわよね。
少しだけ考えて口を開いた
「……うん! ありがとね~! それじゃ、ロウド! 早速みんな呼んで逃げ帰るわよ!」
「はい。わかりました」
そう言ってロウドは疾風のごとくかけていった。
ガイルは「やっぱりか」とつぶやいて、
「悪いやつには見えないしな。それに娘の恩人だし。なんとか頑張って逃げ切れよ」
そう言って家に入っていった。
いつから気づいていたのかな?
と、考えているとガイルと入れ替わりでロウドたちが出てきた。
では、早速逃走劇の始まりね!
「そんじゃ逃げるわよ!」
ル○ンのように逃げ切って見せますか!
そうしてみんなに変装をかけてガイル家を出た。
ありがとねガイル! この恩はしばらく忘れないわ!
そして、家を出てしばらく走って大通りに出たときだった。
王宮? の方向から兵士がこっちに向かっていた。
多分100程度かな?
とにかく面倒ね。
「おい! そこの怪しいやつ! 止まれ!」
出来るだけ目立たないように早歩きで逃げようとしたら、兵隊長らしき者に見つかった。
「え?! もうばれたの?!」
「え……? なんか怪しいな。とりあえずこいつらも捕まえろ!」
私はつい、振り返って叫んでしまった。
そのせいでターゲットじゃなかったのにターゲットにされちゃった。ごめんね。
私たちは兵士が追ってくるのでとりあえず逃げる。前を見るとこの前の怪しい仮面がいた。
なるほど……確かに怪しい……私の馬鹿!
余計な勘違いでわざわざ敵に見つかるなんて……
あ~! もうどうしよう!
と、いうときのロウド頼み。
「ねぇ、ロウドどうする?!」
「え~っと、選択肢として3つほどありますね。
1つ目はこのまま逃げて、脱出の方法を探る。
2つ目は事情を説明して出してもらう。
3つ目はこの国を滅ぼす」
「3つ目! ロウドどうしたの?!」
ロウドがいつになくとんでもない発言をした。
ロウドもピリピリしているのかな?
「私としては、2番がよろしいかと」
アルフォが口を挟む。
「え? なんで?」
捕まったらダメかもしれなのに。
アルフォは少し考えて話しだした。私に分かりやすく頭で整理したのよね?
「ここからは逃げれない。国を滅ぼすほどの戦力も……ないとはいいませんが止めたほうがいいです。なら、一応天皇に会って話し合ったほうがいいでしょう。こっちには2つもの大国の長がいるのですから」
な~るほど!
手をポンと叩いて納得した。
よしそうと決まったら……
「みんな立ち止まって! 兵隊さ~ん! 降参しま~す!」
「はぁ!?」
兵隊長さんにすっごい怪訝な顔をされた。
降参するっていってるのに。
でも私たちが両手を挙げて武器などなにも持っていないからか、警戒を少し緩めた。手を挙げても魔法があるのに、馬鹿だな~。……使わないけどね。
兵隊さんは私たちを後ろで手を拘束した。
だから魔法使えばイチコロなのに……
でもなにか魔法を殺す効果でもあるのかと思って小さく『光』を使ったらすんなり使えた。ここって魔法大国でしょ?
「よし! これで5人全員拘束できたな! いくぞ!」
「え?」
5人? え~っと、私、ロウド、スレンちゃん、アルフォ、ブラウン…………あ。
そして、私たちはさっき見た王宮へと連行されていった。
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さてしなく高い天井。
大理石のように(見たことないけど)綺麗な壁や床。
200mほど先には階段があり、上には天皇と思わしき者が。
この距離だと簡単に殺せそうね。……殺らないけどね。
でもさすがに天皇だから簡単にはいかないわよね~。……だから殺らないけどね。
私たちは(おそらく)謁見の間にいる。手枷をはめられ、正座をさせられて。
まあ、当然よね。分かってるけどイラつくわ。今まで王だったのに急にこんなことさせられて。
しばらくすると天皇らしき者がしゃべった。
「おぬしらがサヘランに侵入した不届き者か」
「侵入もなにも扉に鍵なんてかけてなかったじゃない!」
急に侵入とか言われて事実をつきつけた。
だって本当に鍵なんてかかってなかったし。
「口を慎め! 我を誰だと思っておる!」
そういや『グッダー』使ってなかったわね。
私は目に魔力を集めて天皇の顔を見てみる。
お、ここの天皇は18歳くらいかな? しかもイケメンで淫魔。
言動が気に入らないけど、こっちの世界に来る前なら一目惚れしてたわ。まあ、今は……
「天皇?」
私がわざとらしく首をかしげて聞き返す。
天皇の眉がピクッと反応した。これは面白い。
「そうだ。まさか知らなかったなど……」
「へ~! すごいね~! 初めて知ったわ!」
ザ・棒読み! これは頭にくるだろう。
天皇に青筋が見える。かなりご立腹の様子だ。もうちょい。
「でも天皇だからどんなに貫禄があるのかと思ったら、たいしたことないのね~。私と同い年くらいだし」
今度は怒るどころか涙目になってきている。
ロウドとアイコンタクトで会話する。
(どうするの? 本当にこれで大丈夫なの?)
(大丈夫ですよ。それよりももっと挑発して怒らしてください)
私がなぜこんなことをやっているか。
国を出たいなら天皇の機嫌を損ねずに上手く会話して出してもらうのがいいんじゃないの?
そう思っていたが、ロウドが頑なに、
「大丈夫ですから」
というので今精一杯挑発をしている。
「あれ? 天皇サマ~どうしたの~? 泣きそうなの~? 大丈夫でちゅか~?」
なんか私すごい悪人みたい。
アルフォなんて私を外道を見るような目で見てくるし。
ちなみにスレンちゃんはおねんねしている。すごい肝の据わった子ね。
天皇はもう今にも泣きだしそうに目をうるうるさせている。
多分今まで天皇の子供とかで甘やかされてきたんだろう。この程度で泣くなんてね。
ロウドにもう一度アイコンタクトをする。
(止めを)
短くそう目が言ってきた。よし。
「あらら~。天皇ともあろう方がこんなところで泣くなんてね~。そんなんでよく国を治めることが出来るのね~。もしかしてもうみんなに見放されているとか? かっわいそ~! 今も周りの者も助けてくれないしね~」
あれ? 私ってなんなんだ? 外道?
とにかくロウドにもう一度。
(やりすぎじゃありませんか? さすがに酷だと……)
(やれっていったのロウドじゃない!)
(でもあれはちょっと……まあ、いいですよ。ここで私たちを国から追い出させるようにしゃべってください)
ロウドにちょっと反抗のまなざしを送りながら天皇の方へ目を向ける。
もう涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃだ。あれ? なんでだろう? 私すっごい悪い事した気がする。
でも、とりあえず私たちを帰らせるように煽るか。
「あ~あ、泣いちゃってるわ。なさけな~い。こんなやつの国にいたくないわ~」
ちなみに周りが何も言ってこないのは、アルフォの特殊能力でしゃべれなくしているそうだ。自分より強い相手には使えないけど、弱いやつならかなりの数に使えるんだって。
この1言で天皇がノックダウン。さっきまで背筋を伸ばして天皇として座っていたが、今は背を丸めて顔を手で覆って泣きじゃくっている。
嗚咽が静かな謁見の間に響き渡る。
…………あれ?
特に何も言われないし、帰れないし、これってただ私が年下の子をいじめただけみたいじゃない。
私はロウドに目で講義をする。
(話が違うじゃないの!)
(いえ、ちょっと薫様の言動がきつすぎたのですよ)
(知らないわよ! ロウドが叩きのめせっていったんじゃない!)
(それでもこれは酷ですよ……私だったら自殺します)
(え?! これで?! たったこんだけで?!)
(…………薫様はどんだけドSなんですか)
最後にロウドに呆れられて目を逸らされた。このやろう。
「天皇様。確かに薫様は弱虫ですぐ泣く無能で役立たずの置物……いや、もはや空気な天皇だと言いました」
ロウドがしゃべった。てか、そこまでいってない。
天皇の嗚咽はもっとひどくなった。もう! どうするのよ!
「でも考えてみてください。天皇様はこれからまだまだ伸びることが出来るのです。薫様は天皇様に罵詈雑言を浴びせて挫折して、また這い上がって欲しいと思いあんなひどいことを言ったのです」
ものすんごい口からでまかせ言ってるわね。多分自分でも何言ってるかわかんなくなってない?
まあ、今の天皇だとこんくらいでコロっと落ちちゃうわよ。
予想どおり天皇は涙と鼻水だらけの顔を上げてロウドを見ている。
「つまり、今までの言葉はすべてあなたを思ってのこと! 薫様に感謝すべきです!」
なんか私に感謝しろみたいなことでまとめやがった。
なんか違わない?
「うっ……くぁ……かお、薫さん……あ、|あびがどうどだいだじだ《ありがとうございました》……」
何言ってるかわかんないわ。
でもとりあえず天皇を取り込めた? わね。
私は軽い熱魔法で手枷を溶かした。もちろん肌は火傷しないようにね。
みんなも拘束を解いておく。相変わらずスレンちゃんはおねんねしたまんまね。
スレンちゃんはアルフォにおんぶされてスヤスヤと気持ちよさそうに寝ている。マジ天使だわ~。
私たちは天皇が少し落ち着くまで待っていた。
しばらくすると嗚咽も小さくなって立ち直ったみたいだ。
私たちは天皇のすぐそこまで来ていた。
天皇が顔を上げる。ひっどい面してるわね。
私は無言で布を天皇に渡す。
「顔ひどいわよ。拭きなさい」
これでまた号泣をした。なにに泣いたのよ!
後ろを見るとなぜか「なるほど、薫様はすごいですな」とアルフォが呟いている。だからなにがよ。
天皇が顔を拭いて、落ち着いたときだった。
天皇は顔をバッと上げて私の顔をジッと見据えた。
そしてありえない1言を言った。
「僕の妻になってください!」
「はぁ!?」
いつになったら帰れるんだろう……?