第11話「魔法のお勉強!」
私たちは今、ガイルの家にいる。
内装は、日本の住宅とほとんど変わらなかったのでなかなか好感が持てた。
なお、風呂は電気ではなく、魔法で沸かすそうだ。早くやってみたいな~。
外はもう日が落ちて暗い。
だが、ここには『街灯』があり、そこまで暗くはなかった。ちょっぴり感動。
ここは魔法でかなり便利に過ごせるらしい。
だから学校とかあるのね。
そして、今、私はガイルに魔法を教えてもらっている。
ちなみに娘さんは助け出した(スレンちゃんが)のでこれでガイルに恩はうった。
そして、今はとにかく魔法の基礎について勉強していた。
脳筋で勉強が嫌だった私がなぜか魔法に関しては熱心に勉強していた。
ガイルの教え方が上手いのか、はたまた魔法ということで興味があるのか。
とにかく今夜は長い事勉強していた。
「そろそろ寝ませんか? 薫さん」
「いや、まだ全然いけるわ!」
そう言ったが、ガイルを見ると結構やつれているようだった。
そうか、ずっと光魔法の『光』を使っていたから結構魔力が減っちゃったのね。
ここで今日ガイルに教えてもらったことを思い出した。
『魔力とは、私たちが生きるために必要な生命エネルギーです。つまり、魔力を使いすぎると死んでしまいます。まあ、使いきる前に体が勝手に制御してくれますが』
つまり、今ガイルは魔力がかなり減っているのでやつれているわけだ。
「やっぱりもう寝ます。ありがとうございました」
私は感謝の気持ちを込めて精一杯の笑顔でお礼を言った。
ガイルさんも私の気持ちが伝わったのか、ニコと無理に笑顔を作って、
「どういたしまして」
と言ってふらふらとベッドに倒れた。
ちょっと危険ね。明日からは自重しなきゃ。
私はそう思って自分の用意してもらった布団に入った。
布団は日本とほとんど変わらず、ぐっすりと眠れそうだ。
と、その前に今日の復習をしておきましょうか。
まず、魔力とは生きるのに必要なエネルギーで、普通に生活していても減る。
運動すればもっと大きく減るし、動かなければ少なく減るし、寝ていればもっと少なく減る。
傷を受けると大幅に減る。
例えば、腕が切り落とされると、腕にある魔力が丸ごとごっそりなくなる。
そして次に、魔法には6つの属性がある。
火、水、土、風、光、闇
そして、魔法は大きく3種類に別れている。
・攻撃魔法
・防御魔法
・回復魔法
字面のまんまね。
そして、その魔法の強さによってランクがわかれる。
・序魔法……私の使った『火球』とかの基本的な魔法。魔法を始める者がまず覚えるものね。
・上魔法……これは序魔法の発展版みたいな感じ。『火炎刃』みたいなやつ。
・特魔法……上魔法とは1味も2味も違う魔法。これが使えれるのはあまりいない。これが使える者はかなりの熟練者。
・極魔法……天才にしか使えないような魔法。昔魔界を恐怖のどん底に陥れた人間の少年が使った魔法がこれ。
・天魔法……とりあえずこの国にはいない。魔法先進国でいないのだからおそらく誰も使えない。それにもし使える者がいるのならば、この大陸が消し飛ぶ。簡単に言うと神レベルの魔法。
確かこんな感じだったわね。
ちなみに防御はこれの守りバージョンね。
例えば、
・天魔法……これを使える者がいるならば、そいつ1人の力で1国、いや大陸全土の総攻撃を凌ぐ事が出来るであろう。間単に言うと神ってこと。だって神は基本無敵でしょ?
みたいな(ちょっと遊びが入っちゃった)。
よし、復習はこれくらいにしてもう寝よっと。
私は目を瞑り、そのままスーっと意識がなくなっていった。
~~~~~~~~~~
朝起きると、ロウドとアルフォがどこかに出かけていたらしく、今帰ったところだった。
え? 2人でってことは?!
…………やっぱり怪しいわね。
ちなみにナイルは掃除をしているし、ブラウンは外で体を鍛えている。スレンちゃんはまだスヤスヤとお休みだ。寝顔が天使だわ。
「おはようロウド、アルフォ。何しにいってたの?」
少し怖かったが質問した。
え? 何が怖いのって? そりゃ……おかしなことになってないか……とか?
変な事を考えていると、ロウドが話し始めた。
「昨日夜遅くまで『光』を使わせて勉強していたでしょう。魔力も大分減っているはずですので回復のためにと思いまして」
なるほど。私のかわりにいろいろ考えてくれていたのね。
やっぱりロウドは頼りになるわね。
私が分かった、と頷くとロウドとアルフォは市場で買ってきた豚みたいな(2m以上ある)動物を解体し始めた。
少しうるさかったのか、ガイルも起きてきた。
「あ、すいません。うるさかったですか?」
「いや、普通に起きる時間だったからいいぞ」
そうはいっても、まだ朝日が昇ってほとんど時間が経っていない。おそらく5時とかそこらへんではないか?
まあ、気を使ってくれたと思って感謝しよう。
「さて、じゃあ今日も魔法の勉強を頑張りますか」
「ええ、よろしくお願いします!」
ガイルからやりましょうと言ってくれたので私は心からお願いしますと言った。
「今日からは魔法の授業だ。まあ、学校でも昨日教えた事を3日くらいかけて教えたら後は魔法ばっかりだしな」
「やったー!」
とうとう魔法が覚えられるわ!
そういえば、偶然にも私の考えた魔法名が3つともあってたことにはびっくりしたわね。
火球と水球と火炎刃だったわね。
「でも、その前に魔力を回復しないといけませんよ。やる気はいいですが」
外からロウドが苦笑しながら言ってきた。
私たちも「ははは」と苦笑して料理が出来るまで喋って待っていた。
~~~~~~~~~~~~
「さて、料理を食べて魔力も回復したし、早速魔法の勉強始めるか!」
「はい!」
私は庭に出て、ガイルから魔法の授業を受けていた。
「よし、まずはお前の魔力総量を見るか」
そう言ってガイルは懐から水晶玉みたいなものを取り出した。
「これは『クリスト』って言って魔力総量を調べる道具だ」
「どうやって調べるの?」
「すまん、それはよく分からない」
「まあ、いいわ。とりあえず計りましょうか」
私がそう言うとガイルが、「クリストに手を置けばいい」と言ってクリストを私の前に出した。
私は言われたままクリストに手を触れた。
すると、体内になにかが入ってきて、出て行く感じがした。血液に違う液体が混ざったようで、ちょっと気持ち悪い。
終わったようで、ガイルがクリストを覗くと驚いていた。
「お~! これ1個じゃ計り切れないそうだ。これは1個でこの国の上位の魔術師と同じ魔力だと言うことがわかる」
つまり私の魔力はサヘランの上位だということね。
「ちなみに今腹はいっぱいか?」
「いいえ、全く膨らまないの。食べても食べても足りないの」
太るか心配、は言わないでおく。
すると、ガイルはわなわなと震えて家に駆け込んだ。
私が呆気にとられていると両手にクリスタをいっぱいに持って帰ってきた。
「これを連結させて、計れる上限を上げるからちょっと待ってろ」
そう言っておよそ20個ほどのクリスタをなにかやってつなげていった。
そして、出来たのかガイルは立ち上がって、
「端っこのやつに触れてみろ」
そう言った。
私はそのとおりに端っこのクリスタに触れた。
また、血液に違う液体が混ざった感じがした。
だが、今度の量はさきほどよりもはるかに多い。
やがて、すべての液体? が返って落ち着くとガイルの魂が抜けていた。
「ちょ! ガイルしっかり!」
「っは! お前化けもんだな」
ガイルはそう言ってガハハと笑った。
私はなんのこっちゃと首をかしげると説明してくれた。
「簡単に言うと、お前はサヘラン皇国上位魔術師20人分以上の魔力があるって事だ。しかも魔力総量ではなく、今ある分だけでだ」
「へ~」
「なんだその返事。お前めっちゃすごいんだぞ」
「だってこの国の上位がどんな者か知らないもん」
ここに来てまだ2日目なのでこの国のことなんてほとんどわからない。
毎日を生きるので精一杯。
「まあ、とにかく化け物並みにすごいってことだ。こりゃ教えがいがあるぜ!」
ガイルはそう言うと気合を入れなおした。
「じゃあ早速授業するか!」
「はい!」
さっきまでとはガイルの目が違う。
なにかを期待しているような目だ。
まさか私を世界1の魔術師にでもするつもり?
なんて妄想は止めて授業に集中しよっと。
「まあ、授業といっても特に教えることはないんだがな」
「というと?」
「魔法は技の名前を口で言いながらその技を出すイメージをするんだよ」
あ~、血液を搾り出すようにして、アグラ・スペーラって言ったら水球が出来たみたいな。
つまり妄想力が鍵を握るのね。ふふふ、私の大得意なことよ!
「じゃあ、とりあえず6魔法の初級の攻・防・回をやってみるか」
「はい!」
「じゃあ、まず攻だな。とは言っても火と水と同じで、少しイメージしたら簡単に出来るぞ」
「分かりました!」
私はやる気十分で魔法を作ろうとする。
「おいおい、技名を知らなきゃ出来ないぜ」
しまった……すっかり忘れてた。
ガイルは「馬鹿だな」とガハハと笑っている。
「よし、そんなせっかちなお前にこれをやる」
特魔法までの技名を書いた紙を渡された。
そういえばここの字って日本語と同じなのよね。便利ね~。
「イメージは教えるからやってみろ」
「はい!」
そうして私の魔法の勉強は本格的に始まった。
~~~~~~~~~
町がオレンジに染まるころ、私はさすがに疲れを感じて庭に座りこんでいた。
ガイルはあれ? と言った風な顔をしている。
「魔力があんだけあったんだからまだまだいけるだろ?」
「いいえ、ちょっとイメージで疲れちゃって……」
いろんな魔法を一通りやって、かなりの時間を使ったのでさすがに集中力が切れた。
私が座りこんで一息ついていると、後ろからコップが差し出された。
「どうぞ、薫様。お水です」
振り返るとロウドがかがんで私と同じ目線にいた。
「ありがと」
私はお礼を言ってコップを受け取る。
そして、一気に中の水を飲み干した。
「え?」
たった1杯の水なのにお腹が満たされていく。
とても不思議な水ね。
私が驚いてロウドを見ると、
「どうですか? 少しは魔力回復しましたか?」
そう言って私の頭に手を置いた。
私は顔がカーっと赤くなるのを感じながらも何もしなかった。
いや、だって今は疲れて動きたくないし、確かにロウドは魔王である私に子供みたいな扱いしてるけどこのくらいは……
「お! それは『エルフの飲み薬』じゃないか?」
堂々と雰囲気をぶち壊したのはガイルね。
新しく覚えた火の上魔法で火達磨にしようかしら……
ロウドは手を私の頭から話して立ち上がる。
ちょっと名残惜しい……
「はい、町で売っていたのでちょっと買ってきました。薫様は果てしなく魔力総量が多いので」
つまりこれってプレゼントね。
……うん、大事にしよう。
「よし! 魔力も回復したし、もうちょい頑張るわ!」
「お~、そのいきだぞ」
「それで、次はこれをやりたいんだけど……」
「おう、これはあれをこうするイメージで……」
そんな風に私の魔法修行は続いていった。