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第10話「なんやかんやでサヘラン到着! だけど……」

 なんか最近自分でなにかいてるんだろう……と思うことが多くなってきました。

 でもとりあえず完結させようと思います!

 私たちは快適な空の旅をしている。

 城のベッドにもひけをとらない優しく包み込むふわふわな羽毛に寝転がったり、心地よい太陽の光を浴びてお昼寝したり、ロウドの持ってきた洋菓子のようなものを食べたりとまさに快適な空の旅だ。


 『グレイル』は鳥類なので羽毛がある。

 グレイルの背中の羽毛は、結構な長さのため私たちは風で飛ばずにすんでいる。

 アルフォさんが背中の真ん中らへんの羽毛を踏み固めて座る場所を作ってくれたので、今こうして快適に過ごせている。

 

「ねぇ、アルフォさん」

「薫様。あなたはアスカンタ王国の王女様です。私なんぞに『さん』付けで呼ぶなど滅相もございません」

「りょうか~い。じゃあ、アルフォ。いくつか聞きたいことがあるんだけど」


 私がそう言うとアルフォは「はい」と快く頷いた。

 

「えっとね、グレイルってアルフォが飼い主なの?」

「ええ、そうですよ」


 さも当然のようにアルフォは頷いた。

 私は疑問に思ってスレンちゃんをチラッと見た。

 すると、アルフォさんは気づいて、


「スレン様は全力を出せば自分で走ったほうが速いので、乗り物には乗りませんよ」

「えぇ!」


 今羽毛の外に出たら一瞬で飛んでいきそうなくらいの速さで飛んでいるのに?

 ビカリスの帝王恐るべし……


「それはそうと、あとどれくらいでつくの~?」

「はい、このまま何もなければあと2,3時間で山を越えることが出来そうです」


 へ~、なかなか速いわね。

 距離とかから計算すると大体500km/時くらいかしら? これより速いってスレンちゃん…………ますます化け物じみてるわね。

 

 それからは特にしゃべることはなく、みんな思い思いの時間を過ごしていた。







 およそ3時間後。山を超えるためにグレイルが急上昇している。

 私たちは羽毛を背もたれにして何もないかのように過ごしている。

 そして、少しずつ角度がゆるくなってきた。

 そうだ、山を超えたんだ。


 私は立ち上がって外を見ようとする。だけど、羽毛が長いため見えない。

 背伸びをしてピョンピョン跳ねていると、不意に後ろから脇を捕まれた。

 その手はしっかりと私をつかんで、そのまま持ち上げた。


「わぁ!」


 平地の大部分を占める国を城壁が囲ってあった。

 その向こうには広大な海があった。

 そう、ここが……


「サヘラン皇国なのね!」


 私はひとしきり見渡したところで、振り返る。

 

「もう満足ですか?」


 私を持ち上げてくれたのはやっぱりロウドだった。

 ロウドはいつもどおり無表情……いや、このときロウドはわずかに微笑んでいるようだった。

 私は無言でロウドを見つめる。

 すると、ロウドが口を開いた。


「薫様…………重いです」

「失礼ね! もういいわよ!」


 あ~! もう! あいつが微笑むなんてありえないわ!

 きっと重いから顔が歪んでただけよ!

 私はプンスカプンスカ怒りながら降ろしてもらい、ロウドと反対側まで行って座った。


「ようやく着きましたね」


 ロウドがこちらに振り返ってみんなを見ながら言った。

 

「じゃあ、城壁の外に降りましょうか」


 そう続けると、目でアルフォにお願いした。

 アルフォは頷くと、指笛を吹いてグレイルに指示を送った。

 グレイルは指示を聞いたのかゆっくりと降下して行った。

 今度は逆のほうを背もたれにして転ばないように気をつける。

 そしてグレイルは地面にゆっくりと着地した。

 私は早く地面に降りたくてうずうずしていたので、真っ先にナイルを背負って飛び降りた。


「おぉ…………」


 私は目の前にあるとてつもなく大きい城壁を見て、感嘆の声を上げた。

 城壁は見上げると首が痛くなるくらい大きく、とても頑丈どうだった。

 が、それよりも汚れ1つない純白のことに驚いた。

 美しいを通り越して芸術ともいえる…………脳筋の私にはよくわかんないけど。

 それでも、綺麗だなってことだけは言える。


「さて、ではいきますか」


 ロウドがそう言って歩き出す。

 え? どこから入るの? 

 目の前には、とてつもなく大きな城門しかないじゃない。まさかあれを開けるつもりなの?

 

 ロウドはスタスタと迷いなく歩いていく。

 そして扉を開けて手招きをする。


「みなさんいつまで城門を見ているんですか? 入り口はこちらですよ」

「そのちっさいほうなの?!」


 ロウドは小さい扉を開けてこちらを不思議そうに見ている。

 くそう! 確かにあんだけでかい城門があったらそっちに目がいっちゃうけども……

 こんなベタな展開に引っかかるなんて……


 私たちはちょっと呆れつつもロウドの元へ行く。

 扉をくぐるとき私はロウドに質問した。


「なんかおかしくない? なんでこんな簡単に他の国に入れるの? いろんなところと敵対してるんだから普通もっと厳重にすべきじゃない?」


 スレンちゃんは「お~! 確かに」と感心している。照れるわね。

 ロウドは来ると思ってました、みたいな顔をして説明した。


「サヘランにはこういう言葉があります。

 『来る者拒まず、去る者逃がさず!』

 つまり入るのは簡単なのですが、そうたやすく出ることは出来ないということです」


 変なことわざがあるのね。

 っていうかそれってつまり……


「入ったら、敵国に捕まってるも同然じゃない?」

「はい、そうですが?」


 まあ、ロウドのことだからちゃんと帰る方法くらい考えているわよね。

 私はそう考えて、扉をくぐった。

 そして、みんな入った時にロウドが一言。


「ちなみに出る方法なんて知りません」


 私の魔界統括物語はここで幕を降ろしてしまうのか……









 扉を抜けるととても賑やかな町が広がっていた。

 とおりにはたくさんの店が出ていて、いろんな者が行きかっている。

 それよりも私はある種族に目がいった。


「すっごい破廉恥な格好してるわね……」

 

 私はおそらく淫魔族と思われる者たちを見ていた。

 淫魔族の女性は全員ボンッキュッボンッなナイスバディでなおかつ顔も整っている。八方美人ってやつね。

 男性も、ほどよい肉つきをしていて、様々なタイプのイケメンがいる。

 でも、それよりも驚いたことがあった。


「……なんで浮いてるの?」


 基本的に男性は浮いていないのだが、女性はなんか浮いている。

 小悪魔っぽくて、背中に羽が生えてるからって無理があるでしょ……

 私がなんで? って顔をしていると、毎度お馴染みロウドが解説をしてくれる。


「淫魔は飛ぶんです」


 実にシンプルイズベストな解説ですね。

 とりあえず無理やり納得して、町を歩く。

 なぜ、こんな悠長なのかというと……


 

 扉をくぐったとき、私たちは激怒していた。


『なんでそういうことを先に言わないのよ! てっきり脱出の方法があるのかと思っちゃったじゃない!』

『そんなこと一言もいっておりませんが? それにいきたいと申したのは薫様ですよ。自分の言葉には責任を持ちましょう』


 こんな感じで論破され(というか元々口論とか弱い)今は開き直って思いっきり旅行を楽しもうというわけです。

 まあ、なんとかなるでしょ。

 

 そんなこんなで町を歩いていると、たくさんの者の中に奇妙な仮面をつけて、ダボダボのローブを着て、腕をローブの中に隠して歩いているやつがいた。

 む、怪しい……


「ねえ、ロウド。あいつら怪しいわね。尾行しましょ!」


 面白そうだしね。

 私がそう言うと、また顔に出ていたのかロウドは呆れつつ、


「……わかりました。行きましょうか」


 了承してくれた。

 ちなみにスレンちゃんたちは特に何も言わないので大丈夫(だと思いたい)。

 

 しばらくつけていると、奇妙な2人組は裏路地に入って行った。

 私は「これはもう、事件のにおいがぷんぷんするわ!」と大興奮でつけていった。

 2人組はしばらく歩くと、急に立ち止まった。

 すると、向こう側から大きなカバンを大事そうに持った男が歩いてきた。 

 ここは1本道だ。横は壁しかなく、扉もないのに男はなぜかしきりにキョロキョロと見渡している。

 そして、男と奇妙な男は対面した。

 

「おい、ちゃんと持ってきたんだろうな」


 2人組の1人がしゃべった。

 声の質からして50代の男のようだ。

 男はまだ、キョロキョロしながら言った。


「ああ、もちろんだ。それで……」

「まあ、慌てるな。それはカバンを渡した後でな」


 先ほどしゃべった仮面男がカバンの男の言葉をさえぎった。

 お、これは完全に事件に遭遇しているのでは?!

 そして、私は次の言葉で興奮がピークに達した。

 カバン男が、そのカバンを仮面男に渡した。

 

「ほぉ、ちゃんと入っているようだな。じゃあ、また」

「待て! 娘はどこだ?!」


 きましたよ、これ!

 完全に誘拐事件じゃないですか!

 ここで私の正義感が働いて解決しようと試みる。


「よし、スレンちゃん。あの仮面の2人組を気絶させてきて頂戴」

「わかったのじゃ!」


 戦闘能力NO1の獣魔族の中で1番の実力者だ。負けるわけがない。

 横でアルフォが「薫様……」と私を少し睨んでいた。だ、だって私みたいな乙女は戦えないじゃない。あ、スレンちゃんは少女だ……

 なんて思っていたらスレンちゃんはすでに仮面の2人組を地面と壁に減り込ませていた。…………ん? 死んでない? まあ、いいや。

 カバンの男は「あ、あ、あ」と腰が抜けてへたり込んでいた。

 私は物陰から出てきてカバン男に歩いていく。

 もうスタスタと歩いていく。

 あ~、足取りが軽いな~。良いことすると気持ちがいい。

 カバンの男はいまだに腰が抜けて立てれていない。

 うん……そうね……


「道長いわ!」


 ここは1本道で特に隠れるものもないので結構手前の曲がり角で隠れていたんだけど、さすがに長いわね。

 というよりここを一瞬で走って瞬く間に敵を減り込ませるなんて本当に化け物ね。

 私は歩くペースを上げて、カバン男に近寄る。

 近くで見ると男の特徴がよくわかる。

 長い耳に、整った顔立ち。体はムキムキではないが、とても逞しい。

 髪は短く切られ、遠くでも分かるような綺麗な緑色をしていた。

 男はこの時間でなんとか状況を理解できたようだ。


「あ、あの! 助けてなんて言ってませんよ!」


 第一声からなんなのよ! せっかく助けたのに!

 おそらくさっきの娘がどうたらこうたらが気になっているんだろう。


「あ~、娘さんなら大丈夫よ。ナイル!」


 私は後ろにぴったりくっついて歩いていたナイルを呼ぶ。

 ナイルは「はい!」と気持ちのよい返事をして私の横へ出てきた。


「あの仮面共を拷問して娘の居場所を吐かしてちょうだい」

「分かりました。では、少々お時間を」


 そう言ってナイルは仮面たちを引っ込ぬいて遠くの曲がり角を曲がって消えていった。

 うん、あの拷問は人に見せちゃいけないきがするもんね。

 私はこの時間が暇なので男と話すことにする。ロウドたちはスレンちゃんと『遊んでいる』。スレンちゃんは、アルフォ、ブラウン、ロウドの3人を同時に相手しているのに全くひけをとらない……とりあえず壁だけは壊さないようにして欲しいわね。


「ねえ、あなたは誰? 私は薫っていうの」


 こういうときはまず自己紹介。これで警戒心を解いていきましょう。



「え? あ、俺はガイルってもんだ。娘は本当に無事なんだろうな」


 ガイルはそう言うと私をギロリと睨んできた。

 そりゃそうよね。急に出てきたやつらに娘を任せろって言われてもまず信用できないものね。

 

「うん、大丈夫よ。ということで事の経緯を話して欲しいわね」

「分かった。まず、娘が攫われたところから……」


 要約すると、「よくある、誘拐して返して欲しければ金を持ってこい」ってやつらしい。

 だが、あいつらはもっとたちが悪く、金を何回も請求してきたそうだ。

 

「そういうことね」

「あの……まだ全部話し終わっていないのですが……」


 あれ? 要約した感じじゃないのかしら?

 いけないわね。私はすぐに脳内で勝手に納得する癖があるわ。


「え~っと、続きを話しますね。私は急に押し入ってきたあいつらと交戦したんです」

「へ~、みたところなんか弱そうだけどね」


 男は体つきも良くないし、なにより顔に覇気が感じられない。

 こんな男が戦うってことは……


「まさか魔法で?」

「はい、そうです。私は魔法であいつらと……」

「ちょっと待った!」


 やった! こんなところで魔法が使える人に出会えるなんて!

 これは慎重に交渉しないとね。


「魔法って学校とかあるの?」

「はい、サヘラン皇国には『魔法学校』があります」


 おお! この人に紹介してもらって学校に入ることは出来ないかな~。

 私は顎に手の平を当てて考え込んでいると、男が続けた。


「ちなみに私は『サイプロ魔法学校』の先生をやっていました」

「よし決まったわ! 娘を返して欲しければ私に魔法を教えてちょうだい!」


 ロウドたちが遊びを止めてこちらを「え?」って顔で見ている。

 え~っと……交渉の仕方間違えたかしら……?

 男は半笑いで了承してくれた。


「薫さんは面白い方ですね。久しぶりに人に魔法を教えることになりますよ」


 ガイルは早速やる気になってくれているようだ。

 と、ちょうどいいタイミングでナイルが仮面の男たちを引きずって来た。

 細いなにかでうたれたあざが無数にあったり、ロープで縛られたような痕があった気がするが、気のせいでしょ。

 でも、なぜか仮面の2人組は恍惚とした表情で意識を失っていた。もうわけ分からん。





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