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一章(8)

今アリアがなにを言ったのか、薙咲は聞き取れてはいた。だが、聞き取れていても理解するのに時間がかかった。なぜなら彼はそれなりの予想や覚悟をしていたからだ。規模の大小はともあれテロ組織や裏社会に首を突っ込まされるのではないか、と。しかし蓋を開けてみれば自分が通う高校の生徒会が世界の現場の転覆を目指していて、それに加担しろ、という話だったとは全くもって予想できていなかったからだ。

「面白い冗談だったりはしないんだな?」

「私はそんなつまらない冗談は言わないし言いたくない質なんだけど。」

「そうか、じゃあリアクションをとらせてもらおう。…俺はこれからオママゴトにでも付き合わされんのか?ないようによっちゃ即蹴ってやるからな」

薙咲はため息をついてこめかみを抑える

「多分そんなこと言ってると蹴られるのは君だよ、物理的にうちの会長にね。すでにみんな部屋でスタンばってるし」

薙咲の懸念が更に増えたのに加え早速ご対面ということだった

「は⁉︎これから会うの⁉︎急じゃね⁉︎急とかいうレベルじゃねぇんだけど」

今くぐり抜けた改札の人混みのような展開の巡りの早さである。急転直下、急転超直下だった

「だって神桐君ぶちのめした後にすでに一斉送信でメール送ってたし。動画付きで」

「ねぇ、本人の意思無視なのか?しかも既に公開処刑済みだったのか俺?」

薙咲が負けたことは既に周知の事実且つ羞恥の事実らしい

「いやほら、言ったじゃん実力を測るって。みんなにどんなものか見てもらわないと」

「じゃあ俺もう評価最低だろあんなに無様に負けたんだから」

「なんで負けた瞬間に君はそんな卑屈になってるのか私にはよくわからないけどさ、それは本人達の口から聞いた方が早い思うよ」

そんなことを話している間に、すでに下駄箱。時代が移ろいでも外履きから中履きに履き替えるという慣習は消えていない。トイレや教室の出入り口に瞬間高圧洗浄機能が付いたので外内履き替えない学校の比率が高まったのは確かだが、不思議なことにそういった慣習は文化が発達しても消えないものだ

履き替えてすぐに生徒会室に着いた。生徒会室は昇降口側の階段を上がってすぐの二階にあるからさして時間はかからないのだ

「さーてとうとうご対面かよ…。できれば合わずにそのまま蓋しておきたいんだけど」

「はいはいご対面ー」

心の準備もクソもなかった

生徒会室には7人居た

間取りは中央に円卓が設置してあって左右の壁には天井まである棚が並んであって資料らしきものが敷き詰められていたり備品が整頓されて収納されていたりしていた

その7人は全員円卓に着席して待っていた

「お、来た来た。マジでルックス暗いよなー。眼隠したいなら髪じゃなくて眼帯でも使ってさっぱりしちゃえばいいのによー」

一番手前に座ってた男が真っ先に薙咲に声をかけた。あまり生徒会にいそうな外見をしていない男だった。髪は逆立つ程度に短く、目は勝気で制服も若干着崩している

「…そういうあんたはこういう場所にいなさそうなルックスだな」

とりあえず薙咲の煽り耐性はゼロだった

「お、ハッキリ言うやつだな、好きだぜそういうやつ。俺は1年で庶務の龍ヶ(りゅうがさき) 大我(たいが)だ。動画見たけどお前のスタイル好きだぜ。仲良くやろーぜ」

いや、誰1人とも仲良くするつもりないんだが、と内心呟く薙咲だった

「アタシはあんまり好きじゃなかったけどねー。なんか気品がなかったというか、スマートじゃないのよねー」

そう言ったのはその右に座る両脇に巻き毛のツインテールを携えた赤毛の女子だった。どこか高圧的というか見下した印象を覚える吊り目をした少女だが、その顔立ちは整っており、バランスのとれた洗練されたプロポーションを誇っていた

「あんたの縦ドリルよりはスマートさにかけるかもな」

…やはり煽り耐性ゼロの薙咲だった

「たっ、縦…⁉︎アンタねぇ‼︎バカにしてるのアタシのこと‼︎アタシには天城(てんじょう) 花音(かのん)っていう名前があるのよ!そんなアホくさい名前で呼ばないで!」

「いや、俺初対面だから。名前知る由もないから」

うるさそうに耳を抑えながらぶつくさと返す薙咲。

「ドリルはカノンのこだわりだからねー。いじるとうるさいよ?ちなみに彼女も庶務だからね」

いや、うるさいのは今思い知ったわ、と思いながら薙咲は花音を無視することにした

「カノンちゃんのドリル可愛いもんねー。ていうかどうみてもドリルだよねー」

そんな間延びした喋り方で会話に入ってきたのはその対面で円卓にぐでーっと伸びている少女だった。指くらいまで袖のある大きめなカーディガンをきた小柄な少女だった。というか大きさ的に完全に中1くらいのサイズだった。肩くらいまでのゆるふわウェーブのかかった黒髪であどけない顔をしているが目だけが眠たげでボーッとしていた

「なにあの脱力系中学生」

薙咲は拍子抜けしてアリアに振った

「いや、先輩だから。2年書記の(ワン) 凛鈴(リンリン)、名前からわかると思うけど日本育ちの中国人だから」

「よろしくアルー」

「…その適当なキャラ付けやめろよ」

「あれー、受けなかったかー。よろしくなぎなぎー」

「さりげなく変なあだ名付けてんじゃねぇよ」

「僕のこともリンリンでいいよー」

「それは本名じゃねーか。つか先輩としての威厳とかねーのか」

「なぎなぎみたいに可愛い子はいいのー」

「あんたの可愛いの基準がぶっ飛んでるのはわかった」

結局凛鈴は終始ぴくりともしなかった

「あんまり馴れ馴れしくすんなよお前ら、コイツまだ信用できるかもわかんねーのに」

イライラしたような声で呼びかけたのは凛鈴の右にすわる目つきの悪い男だった。茶髪でどごぞのヴィジュアルバンドにでもいそうな髪型をした男だった。薙咲が教室に入った瞬間から薙咲を睨みつけていた男だ

「ようやくまともなこと言う奴がいてくれて嬉しいぜ。俺も馴れ合う気なんかさらさらないんだ」

薙咲はボリポリと頭をかきながら言った

「いや、弱いやつほど信用できない奴はいねーからってだけだけど」

「…おう、お前より弱いかは知らねーけどな」

「わー、なぎなぎ青筋ピクピクしてるー」

王が何か言っているのは当然流された

「いやあんだけ弱ければ見ればわかるわ」

「…そのうちちゃんとわからせてやるよ」

もはや薙咲はイライラの域を超えて完全に切れていた

のだが。とりあえずそのイラつきはさておくことにした


「で、そろそろツッコミてーんだけどそこの全身ポケット男」

制服の端から端までポケットに覆われた男が気になって仕方なかったからだ

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