【四】
なんか文章ぐたぐたです。物語もなかなか進んでないですが、次辺りから動いだします・・・多分。でもここまででも読んでくださってありがとうございます!!これからもどうぞよろしくお願いします・・・。
「―にわかに信じがたいですね」
「にわかというかまったく、な」
ズゴゴゴゴ、と昼食に持ってきていたシェイクを吸い上げて、ストローで中身をかき回す。むかいに座っていた青谷も、水筒に入った温かい紅茶をすすった。
「結局、どうして俺ら以外がいないのかもわからずじまいだし」
「はい」
ストローから口をはなしてちらりと文月の方を見ると、彼は教卓に座って片足だけをその上に乗せ、頬杖をついて外を眺めていた。―よく外見てるな。
文月はさっきの衝撃的な発言以来また口を閉じ、一言もしゃべっていない。俺たちは騒然となり、その場の流れで友人やらとかたまって話し出した。その中でここまで冷静に普段通り話をまとめているのは俺と青谷くらいだろう。その横で、時田はどんよりとしている。
「…どうするんですか」
「なにが」
「文月紋樹です。別に追い出そうとは思っていないけど、さすがに得体がしれなさすぎです」
「ああ…」
青谷はさっき書いていた札を一枚手に取ると、中指と薬指の間に挟んだ。
「いくらこっくりさんといっても、悪霊たいさーーんでいなくなるわけないでしょうしね」
そう言い、片目を細めるとお札を持った手を文月の方へ向けてスパン!と差し出した。
「まあやっぱり、聞きだすのがいいんだろうな」
「私としては、名前まで聞きだしたあなたが聞いた方がいいかと思いますが」
やっぱりそうか。
クラスは相変わらずだし、文月も相変わらずだし、どうしてこう人任せかな。まあ、たしかに聞けそうなのは俺だけなのだが。でも得体のしれないものがこの中にいて不気味なのも事実だし、このままほおっておけるようなことではない。
…しかたがないな
本日何回目になるかもわからないため息を吐くと、席を立った。
「お前…」
「この世には、三つの世界が存在してんだ」
急に、話し出した。青谷も席を立ち、俺の横に立つ。二人の様子に気づいたクラスが、話をやめて静かになる。
「知らねえんだろうな。一つ目が、お前たちの暮らす“人の世界”だ」
はりつめた空気に、堂々と声が響く。
「もう一つが、“妖力の世界”。まあちょっと不気味な名前だが、みんなただの人間と大して変わんねえ。俺はそこから来た」
ざあ、異世界人ってわけか。
「最後の一つが此処だ。“共鳴の世界”という」
此処…?
「“人間の世界”、“妖力の世界”が共存する世界だ」
「な、なんだよ……」
震え声が聞こえた。ふりむくと、時田がブレザーの裾を小刻みに震える手で握り、まっさおな顔で呟いていた。
「なんで…俺らがそんな世界にいるんだよ」
「偶然だ。お前らが『こっくりさん』をやったのと、俺が追放されたのとが重なったせいだ」
「追放…?」
微妙に聞きなれない言葉に眉を潜める。
「“人間の世界”にも法律があるな。それと同じだ。それを破ったら、“妖力の世界”を追放され、その後どうなるのかはわからない」
「でもその…“共鳴の世界”に俺らが来てしまった理由はなんだ」
「“妖力の世界”で暮らしていた俺は、“人間の世界”でずっと生きることはできない」
「じゃあ、じゃあ…全部お前のせいなんじゃないかっ!!」
時田が俺を押しやり、まえにでた。
無実の死刑を告げられたかのような声で文月に迫る。
「どうしてくれるんだよ!!お前が何したのか知らないが―」
「時田」
俺は時田の腕を引き、下がらせる。
「ちょっ…おい佑馬っ!」
「落ち着けよ、時田」
「落ち着けるか!!だって…まさか本当に呼び出してしまうなんて思わないじゃんか!!」
時田の叫びに、文月は呆れたようにため息を吐いた。
「そんな軽い気持ちでやったのはお前たちじゃないか?お望み通り現れてやったぞ」
飄々と、肩をすくめた。―正直、本当に俺は時田に賛同できない。―…異世界なんてそんなもの、最高に楽しいじゃないか。
「…そうですね」
青谷が急に前に出る。
「理不尽だったりもするかもですが・・・私としてはこの現状凄くいいです」
心を読まれたような。
「まあ、とにかく時田。文月に非があっても無くても、今言い争ってても意味がない。ここでどう暮らすか、だな」
俺としては、そっちの方が重要だった。
「・・・なんなんだよ、佑馬まで」
時田が吐き捨てるようにいい、教室を出ていく。クラスメイトがざわついた。
「―どうしよう」
「もう帰れないのかな」 「お母さんたちにも会えないの?」
「一生ここにいるのか?」 「俺たちどうなんの?」
疑問の渦。純粋に怖がっている者もいれば、時田のように混乱している者もいた。
「まあ、俺にも悪いが何もわからねえ。でも、俺も責任感じてねえわけじゃない。当然出来る限りのことはするさ」
文月が面倒くさそうにため息を吐きながら言った。
「だけどお前らだって俺のこといきなり信用できねえんだろ」
「まあ、そりゃあ・・・な」
文月がやっと少しはまたもなことを口にしただけでなぜだか達成感というか優越感に浸ってしまうのだが。
「どうにかして信頼証明できませんか」
青谷が問うた。
「できる。簡単にお前らを信用させる方法なら最初からある」
そういう文月はしかし、どこか乗り気ではなさそうだ。しかしきっぱりと言った。
「やってやるよ。まあ、この世界での生活を乗り切るには嫌でも俺を頼るしかないんだがな」
余計なひと言を言った後、目を見張り息を飲みこみ緊張した面持ちのクラスの中心で、文月がもう一度深いため息を吐いた。
・・・そして。
俺らはとんでも無いものを見ることとなる。