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プロローグ
ゴールデンウィーク。それは日本で毎年4月末から5月初めにかけての休日が多い期間のこと。
その大型連休が明日から始まる。
仕事だとうなだれる者、旅行だと浮足立つ者様々であるが、しかし、おそらく全ての人が、この日、これからの天候を嘆いていた。
降りしきる、雨。
天気予報ではどの局も決まって、この連休中ずっと続く悪天候を報道している。
太陽は当然ながら、月さえも消えてなくなってしまったかのような今、時間は21時を過ぎている。
そんな雨と闇の世界を、傘もささずに走っている1人の少女がいた。
数十メートルおきに立つ街灯が、色の白い彼女の肌をぼんやり照らす。
彼女こそがこれから始まるこの物語の主人公である。
長く伸びた黒髪も、着ている制服も雨に濡れ、おまけに持ち物は何も無い。でも彼女は、構わず走る。跳ね返ってくる水も気にすることなく。
その表情は決して楽しそうなものではない。その証拠に、時折彼女は不安そうに後ろを振り返る。
無我夢中で向かう先に待つ出会いが、自分の過去・現在・未来を大きく変化させるものになるとは、まだ思いもしなかった。