童話
あるところに、ひとりの女の子がいました。
女の子はある日突然、見知らぬ場所に連れて行かれました。石でできた大きなお城の中で、たくさんの人が女の子を囲んでいました。でもすぐに、別の女の子の方へ行ってしまいました。
あちらが本物の聖女様です、と誰かが言いました。
あなたは偽物です、と誰かが言いました。
女の子には意味がわかりませんでした。ただ、帰りたいと思いました。
でも帰れませんでした。
だから女の子は、そこで生きることにしました。
与えられたのは城の隅の小さな部屋でした。食事は一日二回でした。仕事は雑用でした。でも女の子は逃げませんでした。怒りませんでした。ただ、目の前のことをやりました。
床を磨きました。水を運びました。病気の人を看病しました。
誰も見ていないところで、ずっとやり続けました。
そうしているうちに、少しずつ気づく人が出てきました。
あの子はいつもここにいる、と。あの子がいると物事がうまくいく、と。
長い時間がかかりました。
やがて本物と呼ばれていた聖女が、自分の力で解決できない問題を抱えました。その時、誰もが女の子のところへ来ました。
女の子は断りませんでした。ただやりました。
それだけでした。
ざまあ、とは思いませんでした。ただ、疲れたと思いました。
やがて女の子は、そのお城の王女になりました。
幸せでした。本当に幸せでした。
ただひとつだけ、ずっと気になっていることがありました。
置いてきた妹のことです。
だから女の子は、妹に手紙を書きました。
がんばって元の世界にものを送れるようにしました。
一方通行でしたがなんとか送ることができました。
最初は飴玉でした。次は果物。かわいい生き物。
自分が見つけた綺麗なものを、美味しいものを、送り続けました。妹に笑っていてほしかったから。
ただそれだけを、願っていました。




