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【小説】Too Fast 2 Die ;属 女子高生Kamen

掲載日:2025/12/16

 膣ギロチンを撫でながら彼女はこう言った。

「あんたが女子高生になるんだよ」

 夢は暗転しておれは入滅した。

 それはつまり輪廻だろう。夢とは転生の徒花。真夜中は別の顔。おれは俺じゃない。

 そうやってトンネルを這い出た俺は文字にならない絶叫とともに目を覚ました。

 遮光カーテンの隙間から射した光は足を通って本棚に伸びている。

 剃刀の様に薄いその光は部屋の埃を輝かせていた。汗で肌に張り付いたシャツを脱いで窓を開けると生ぬるい風が肌を撫でる。

 その冷たさが心地よかった。


 全身を愛撫する童貞の手つきみたいな微風を嗅ぎながら、灰皿を覗いて比較的長い煙草を拾って火を点ける。

 煙と熱を吸い込んで吐き出す。

 とりあえず今日が始まったんだなと思った。

 灰皿の隣りは昨夜に飲み残した缶コーヒーがある。今日は昨日の続きだ。延長を入れた覚えは無いけど。

 飲み残した缶コーヒーを飲む。薄くて麦茶みたいな味がする。つまり昨日がクソなら今日もクソだ。タンポン。おまん毛。マリアのアナルファック。

 

 着替えてから階下に降りると食卓の父親は新聞で絶対領域を展開していた。

 ゴッドファーザー。我らを作り賜うた陰茎と精巣。数秒の快楽。苦痛に満ちた予後。

 話しかけることも話しかけられる事も拒絶する父親の態度は反抗期の子供たちに対する完璧なアティチュード。

 つまり新聞は聖書だ。

 対して母親は満面の笑顔を浮かべたマシーンの様に朝食をサーブしている。こちらはご機嫌だ。家庭内潤滑油。ローションまみれ。マザーペペ。

 それがハウス。

 父と母。

 飴と鞭。壁と隙。

 つまり家族だ。ファミリア。

 茶碗には白米が盛られている。恐らく朝食用の軽い触感の品種。

 みそ汁は玉ねぎと豚肉。水面に三つ葉が浮いている。

 焼き魚は子持ちししゃも。

 副菜に卵焼き、それに梅干しが添えてあった。湯飲みにはほうじ茶が注がれており、湯気が立っている。

 その湯飲みに手を伸ばす前に、目の前に置かれたコップの水を一気に飲み干した。


 朝だ。




 隣に座った弟は食卓を一瞥すると床下収納を開けてツナ缶を取りだし、どんぶりに盛られた白米の上に開けた。

 反抗期イズ、マヨネーズ。必要なのはアンバランスさ。カロリー。そして愛を拒絶すること。

 弟は一気にマヨネーズを絞り、一味を瓶の半分ほどかけて赤く染めると飲み込むように流し込んだ。

 母親はニコニコと眺めているし、父親は新聞の向こうで「健康に良いものだけを摂るのは不健全な青春だ」とだけ言った。

 飴と鞭。フェラとクンニ。生とS。



 つまり幸福だ。



 両手で箸を持ち上げてからみそ汁をひとくち飲み、茶碗に盛られた口当たりの軽い白米を噛みながら心から思った。

 これが幸福だ。

 自家製の梅干しは色こそ深紅でないものの塩辛く、甘い卵焼きとのコントラストが際立っていた。

 嬉しくなって子持ちししゃももひと口噛んだ時に、世界は綺麗に反転した。

 そう、季節外れの革命がやってきて生活を蹂躙していったのだ。


 まな板の上の鯉。G線上のアリア。マットの上の陰茎。

 ガスも電気も止まっている。風が強く吹いている。

 太陽は照り付けている。

 ソーラーカーがゆっくりと走っていく。

 長い渋滞の先頭にいるのは?散歩中の糖質ババア?それとも遅漏の露出狂?

 何にせよ歩いた方が早い。


 だから茶色いローファーの踵をすり減らして歩く。

 歩行と言う移動手段の致命的な遅さにはいつまでたってもイライラする。

 自転車。原付。またはローションで滑るマット。それに乗るためのアルファード。

 歩行はクソだ。

 しゃがんでルーズソックスのヒダに隠した煙草を取り出す。同じように隠していた逆足のルーズソックスから取り出した燐寸で火を点ける。

 青白い煙が月明り照らされて紫色に光った気がした。

 気のせいだ。いまはたぶん昼だ。

 記憶が正しければ太陽は東から登って西に沈む。それに膣は締められてもアナルは拡張すると戻せない。

 アナルファックの呪い。

 リメンバーアナルパール。

 過去の呪詛。束縛。影縫い。

 手帳を開いて目的のプリを探し出す。

 数ブロック歩いた先に古い道祖神が祭られている祠がある。

 そこにどんな歴史があるかは知らないが、結界が緩んでいるので張り直さなければならない。

 今夜はたまたま当番だっただけだ。仕方なしに歩いているのが今だ。




 そう、俺は女子高生になった。

 茶髪に金色のメッシュ、肌は見回りをした結果で茶色く焼け付いている。天然の日焼け。高級品だ。安っぽいココナツオイルの匂いはさせない。

 着崩したセーラー服。緩いリボン。

 俺が夢に見ていた女子高生そのものだ。

 もっとも当時の女子高生はくちびるの端に絆創膏を貼っていなかったと思うけれど。それに目元のストーンも無いし付けまつげも貼っていない。



 煙草を吸い終えるタイミングで目当ての祠まで着いた。

 咥え煙草で鳥居にプリを這り、古い千社札シールを剥がした瞬間だった。

「珍しい。スカートの下にジャージを履いてない女子高生がいたよ」

 しまった。結界を張り直すのが遅かったか。舌打ちをこらえながら振り向くと、ブレザー制服のスラックスを尻まで下げて履いた男がニヤニヤしながら立っていた。

 ロン毛をカチューシャで後ろに流している。毛先が顔に刺さっていたのだろうか。酷いニキビ跡が目立った。



 私はプリの詰まった手帳を背中のスクールバッグに仕舞って深呼吸をする。

「なんだ?宇宙人が日本語喋ってんぞ」

 小指で耳の穴をほじりながら独り言ちた。そう、まずは小さな声で。

「面白い冗談言うじゃん」

 チャラ男は大きく膨らみながら言った。

「あぁ、日本人だったのか。手足が異常に短いから宇宙人かと思ったわ」

 俺は煙草を踏み消すと男に向かって蹴りつけた。その間もずっと目は合わせたままだった。

 首元に結んだ緑色のリボンを緩めて胸元までボタンを外す。

 首を鳴らせて肩を回す。

 あまり入念に準備運動をしている余裕はない。



 ばちん、と音を立てて男がはち切れた。それが戦闘開始の合図だった。


 難民の全てが善人だとは思っていない。

 俺も自身が善い女子高生だとは思わない。だが郷に入れば郷に従う他無い。

 俺は低偏差値校の女子高生として低偏差値の女子高生らしく振る舞っているし、足るを識ると毎晩詠唱しながらヒップアップダンスをしている。騎乗位のためのスクワットも、正常位で崩れない乳の為の腕立てや腹筋も欠かさない。



 でも、もうここはかつての国じゃあないし、かつての日常は戻ってこない。



 あんなに幸福だったかけがえのない当たり前がひっくり返った。

 誰も望んでいないとは言わないけれど、大多数は望んでいない革命だった。

 時代遅れで、時代錯誤で、間の悪い、とても成功とは言えない革命だった。

 俺たちは私たちになり、そして私たちで在り続ける事に限界を感じで私たちと言う肉体のまま俺たちになった。

 俺たちはその世界に馴染めなかった人間たちから結界を張って自分たちを守った。お互いの逃走領域を拡大しながら日々を過ごした。

 こうやって会敵しては小規模な戦闘を繰り返していた。退屈していたし、もう飽き飽きしていた。


 幸福は遠ざかった。



 うんざりしながらそれでも闘っていた。

 ひとつだけ分かっていたのは、あの革命からの逃走がこの日々だった。

 俺はスクールバッグから取り出したジッポオイルを口に含むと霧状に噴き出し、ルーズソックスのヒダに隠していた燐寸を使って火炎放射を放った。

 闇を切り裂くような音がした。

 そうさ、これは俺を評価しないお前らに対する復讐だ。

 俺は復讐の為に生きている。

 そしてこれが予襲だ。

 スツーカの鳴らすサイレンだ。

 でたらめに踊る赤い炎が濃厚な群青色の夜を引き裂く。

 いや、赤い炎が群青を押し広げようとしているのかも知れないし逆に群青が赤い炎を押しつぶそうとしているのかも知れない。

 構わない。

 俺はきりたんぽの森を伐採しながら火を放つ。これがほんたうのさいわひだ。

 燐寸売りの女子高生は叫んだ。

 私が吸ったショートホープを渡す。

 それが燃えている最中はパンツを見せてあげる。チップをくれたらおしっこでその煙草を消してあげる。それがあなた達のさいわひなのでしょう。


 ほんたうのさいわひと言う光に吸い寄せられる。机の上の半球を持ち上げる。俺はスカートの中のパンツをずらす。デーモンコアが顔を出す。全てが青い光に包まれていく。

 凪に帆を、便所に100ワットを、サルバドールに花を。

 俺たちは幸福に向かっている。

 デーモンコアが青く光る。

 パンツの中にあったヒダが赤く光る。

 地面に落ちた煙草の先が赤く光る。

 群青に張り付いた月が黄色く光る。

 煙草の煙が紫色に光る。

 黄色い放射が光る。

 赤い光が消える。

 ほんたうのさいわひは消えない。革命は終らない。

 革命は終らない。


「革命は終らないんだよな」

 学ランの男がいった。

「終わらないね」

 擦り切れたスカートの裾をいじりながら俺は答えた。

「触らないでよ」

 女子高生が俺の手を叩いた。

「しょうがねぇ、煙草を買いにいこうぜ」

 俺が立ち上がると女子高生が立ち上がった。学ランの男はひとりごとを続けていた。

 俺はもう答える事がなかったし、男は最初から聞いちゃいなかった。

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