第10話 『冒険者ギルドに行こう』
俺とユウは、仲間を探すため近くの冒険者ギルドによることにした。
冒険者ギルド――それは、力を持つ者たちが集う場所。
剣士、魔導士、狩人、錬金術師……種族も背景も違う者たちが、ただ一つの目的のために集まる。
“依頼をこなし、報酬を得る”。それだけのシンプルな仕組み。
だが、その裏には、国の軍では手が回らない魔物討伐や、封印された遺跡の探索、時には王都の密命すら含まれている。
ギルドの建物は、石造りの重厚な造りで、入り口には大きな掲示板が設置されている。
そこには、討伐依頼、護衛任務、探索調査など、さまざまな依頼が貼り出されていた。
依頼にはランクがあり、Fから始まり、最高位はS。
新人はまずFランクからスタートし、実績を積むことで昇格していく。
受付には、ギルド職員が常駐しており、依頼の説明や報酬の管理、時には仲間探しの斡旋まで行ってくれる。
ギルド内には酒場も併設されており、情報交換や人脈作りの場としても機能している。
中には、ギルド内で結成された固定パーティも多く、彼らは“常連組”として一目置かれていた。
そして何より――ギルドは、力を持つ者たちが“自分の物語”を始める場所でもある。
俺とユウが向かうのは、セレノの集落にあるそのギルドの支部のひとつ。
霧の谷の入口から、南西へ向かって数時間。
獣道のような細い山道を抜け、いくつかの丘を越えた先――
そこに、冒険者たちの拠点《セレノのギルド支部》はひっそりと佇んでいた。
谷の不気味な霧とは対照的に、そこには人の気配と焚き火の煙が漂っている。
旅人、傭兵、賞金稼ぎ。
名もなき者たちが集い、依頼と報酬を糧に生きる場所。
それが、冒険者ギルドだった。
ギルドの扉を押し開けると、ざわめきと焚き火の匂いが迎えてくれた。
木造の梁に吊るされたランタンが、温かな光を落としている。
奥には酒場スペースがあり、数人の冒険者が地図を広げながら談笑していた。
俺とユウは受付カウンターへと向かう。
そこには、栗色の髪を三つ編みにした女性が座っていた。
年齢は二十代前半。
制服の胸元には、ギルド職員の紋章が輝いている。
「いらっしゃいませ。セレノ冒険者ギルドへようこそ。ご用件は?」
声は明るく、けれど事務的な響きもある。
春人が一歩前に出て、少し緊張した面持ちで答えた。
「えっと……仲間を探していて。霧の谷を越えたいんです」
受付嬢の瞳が、わずかに鋭くなる。
「霧の谷、ですか。あそこはFランクでは立ち入り禁止区域です。お二人の登録は?」
「まだ、してません。今日が初めてで……」
ユウが横から補足する。それにしても立ち入り禁止区域だったとは、入ったこと言うと、面倒なことになりそうだから、黙っておこう。
受付嬢は小さく頷き、手元の書類を取り出した。
「ではまず、ギルド登録をお願いします。名前、年齢、得意分野、そして――命を預ける覚悟があるかどうか」
春人とユウは顔を見合わせる。
そして、同時に頷いた。
「あります。俺たちは、どうしても王都メモリアに行かなきゃならないんです」
「……理由は聞きません。ギルドは依頼と報酬の場ですから」
受付嬢は微笑み、書類を差し出した。
「ようこそ、セレノのギルドへ。ここからが、あなた達の物語の第一歩です」




