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ポン太郎のマジカルバッグ  作者: 坂本光陽


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3/5

にゃんにゃんマスクの巻


 小吉のクラスでは年明け早々、写真ブームが起こった。写真の対象は人それぞれなのだが、とりわけ、百合の猫鍋写真は皆の注目を集めていた。ペットの仔猫が土鍋の中で眠っている写真は、とにかく可愛いと女の子たちの間で大評判なのだ。


「いいなぁ、僕も百合ちゃんみたいな猫鍋写真が撮りたいなぁ」

「小吉くんなら、きっと撮れるよ。私にだって撮れるんだから」


 そう言われては、小吉は居ても立っても居られなくなった。家に帰るなり、居眠り中のポン太郎を揺り起こし、

「ポン太郎、何とかしてくれよ」

「どうしたんだ、小吉くん」


「百合ちゃんみたいな猫鍋写真が撮りたいんだ。手伝ってくれよ」

「ええっ! あの百合ちゃんがそんな残酷なことを……。亜空間のペット事情では、とても考えられないよ」どうやら、猫を鍋料理にして食べると思ったらしい。


 ちなみに、ポン太郎は亜空間からやってきた魔法使いである。小吉が困った時には助けてくれる心優しき相棒である。


 とりあえず、小吉はポン太郎の誤解をといて、撮影の準備を始めた。カメラは以前買ったキッズ用カメラがある。ただ、肝心の猫を飼っていないので、近所で野良猫を探さなければならない。誘き出しと餌づけ用の煮干しは、母親からもらった。撮影に必要な土鍋も、家に古い土鍋があったので、それを借りた。


 小吉とポン太郎の猫鍋作戦が始まった。まず、野良猫を追い回して、煮干しで手なずけようとする。だが、なかなか一筋縄にはいかない。煮干しを食べてもらえても、触ろうとしただけで、引っ掻かれたり噛まれたりしてしまう。


「ポン太郎、何とかならないの?」

「そんな時には、これかなぁ。万能アイテム〈にゃんにゃんマスク〉」


 ポン太郎が取り出したのは、普通のマスクに見えるが、猫そっくりのヒゲが生えていた。これをかければ誰でも猫と会話ができる、という優れものなのだ。


 小吉は〈にゃんにゃんマスク〉を装着して、

「お願いにゃん、かわいい仔猫を紹介もらえにゃいか」と、一匹の野良猫に話しかけた。

「無料じゃ紹介できないにゃん。その煮干しを全部よこすにゃん」

「全部はダメだにゃー。煮干しを三匹あげるから、ボス猫を紹介してほしいにゃん」

 つまり、近所のボス猫と仲良くなって、かわいい仔猫を紹介してもらおうという作戦である。


 30分後、小吉は空き地で膝をつき、ボス猫と向き合っていた。ボス猫は見たこともないような大きな虎猫だった。

「はじめにゃして、ボス猫様。この煮干しを差し上げますので、どうか、かわいい仔猫を紹介してもらえにゃせんか?」

「どうして、仔猫を紹介してほしいにゃん。食べたりする気じゃにゃいだろうな」


滅相(めっそう)もにゃいです、ボス猫様。僕はかわいい写真を撮りたいだけですにゃん。決して、やましいことが考えていにゃせん」

「本当にゃろうな?」

「もし僕が嘘を言っていたら、好きなだけ煮干しを差し上げますにゃん」

「……」


 ボス猫は無言で顎をしゃくり、部下猫に何事か命じた。しばらくして、5匹の猫がそれぞれ1匹の仔猫をくわえて、小吉の前にやってきた。5匹の仔猫たち皆、ミュアミャアと鳴いており、比類なき愛らしさだった。


 小吉が土鍋を出して写真を撮ろうとすると、ボス猫は重々しく言った。

「ちょっと待つにゃん。写真を撮る前に一つ条件があるにゃん。この5匹は母親を亡くしてしまったばかりで、今は育ててやるものがいにゃいのだ。どうだ、写真を撮らせるかわりに、おまえ、こいつらの面倒をみてくれるかにゃ?」


 小吉はポン太郎と顔を見合わせてから、

「オーケー、わかりにゃした。かわいい写真を撮らせてもらえれば、それを見せて回って、里親をさがしてみますにゃん。これだけ可愛いんだから、きっと誰かが面倒をみたいと言ってくれますにゃん」


 こうして小吉とポン太郎は、仔猫を一匹ずつ土鍋に入れて、愛くるしさ万点の猫鍋写真を撮った。それらの写真をクラスで披露したところ、めちゃくちゃ可愛いと大評判になり、すぐに5人の女の子が里親に立候補した。


 彼女たちには親の了承をとってもらい、ボス猫立ち合いの元で、仔猫の引き渡しが行われた。小吉は女の子と野良猫の双方から感謝された。


 とりわけ、ボス猫にいたっては、

「小吉よ、おまえは人間にしておくのが惜しいにゃん。どうだ、猫の世界で暮らしてみにゃいか? おまえを気に入ったメス猫がいっぱいいるにゃん」

「へぇ、マジですか?」

「若くてピチピチの美人猫がよりどりみどりにゃん」バチンとウインクをして、「その中でもナンバーワンの美人猫は、もちろん私にゃん♡」

「え?!」


 その時まで、小吉はボス猫がメスであることに気づかなかったのだ。この後にひと悶着(もんちゃく)があったのだが、それはまた別の話である。



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