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ポン太郎のマジカルバッグ  作者: 坂本光陽


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2/5

ラッキー♡クローバーの巻


 小学生の小吉はガールフレンドの百合と一緒に、近くの神社へ初詣をした。


 二人はおみくじを引いたのだが、百合は大吉だったのに対し、小吉は大凶だった。百合の手前、小吉は気丈に振舞ったのだが、帰り道で犬のウンチを踏んだり、お年玉を落としたり、よくないことが立て続けに起こる。家に帰るなり、居眠りをしていたポン太郎を揺り起こし、


「ポン太郎、何とかしてくれよ」

「どうしたんだ、小吉くん」


「おみくじが大凶だったんだ」

「それで? お(はら)いでもしたいの?」


「僕は絶対、ついていないと思うんだ。もしラッキーだったら、毎日笑って過ごせる人生だったはずなのに。お願いだから、僕を幸運な男にしてくれよ」

 ポン太郎は納得できない顔つきだったが、

「幸運にするというなら、これかなぁ。万能アイテム〈ラッキー♡クローバー〉」


 ポン太郎は、亜空間からやってきた魔法使いだ。小吉が困った時には、いつも助けてくれる。ポン太郎がマジカルバッグから取り出した〈ラッキー♡クローバー〉は、大き目の四つ葉のクローバーだった。小吉の頭頂にくっつけると、それはゆらゆらと揺れ始める。


「小吉くん、よく聞いて。このアイテムは一時的にラッキーにしてくれるけど、それがずっと続くわけじゃない。副作用のような揺り返しがあるから、その点はわかっておいてよ」

「わかった、わかった」と、帽子をかぶり、「さぁ、出掛けよう、ポン太郎」

「どこに行くの?」

「決まっているだろ、ラッキーライフを満喫するんだよ」


 確かに、〈ラッキー♡クローバー〉の効果はあった。小吉はハトが落とした糞をギリギリでかわしたり、半時間前に落としたお年玉を拾ったりもした。


「ポン太郎、さすがだね。万能アイテム様様だよ」

「小吉くん、お腹がすいた。タコ焼きを御馳走してくれないかな」

「オーケー、神社に行ってみよう。屋台が出ていたはずだから」


 二人は境内で、仲良くタコ焼きをほおばった。実は、タコ焼きはポン太郎の大好物なのだ。こんなに美味しいものは亜空間にはない、と日頃から力説するほどである。


「ありがとう、小吉くん。また困ったことがあったら、何でも言ってよ」

「もう一度、おみくじを引いてみようかな。〈ラッキー♡クローバー〉の力で、きっと大吉が出ると思うんだ」

「また、ムダ遣いをしようとする」

「お年玉を取り戻しから、今日は余裕があるんだよ」


 そんなことを話していると、柔和な顔つきの中年男性が近づいてきた。


「やぁ、小吉くん、あけましておめでとう」

「あっ、宮司(ぐうじ)さん、あけましておめでとうございます」


「巫女の女の子から聞いたよ。大凶が出たんだって? 申し訳なかったね」

「大凶なんて初めてだったけど、僕は気にしませんから」


「えらいね、小吉くん。大吉が出るまで何度もおみくじを引くような大人もいるのに」

「へぇ、そんな人がいるんですか。よっぽどお金に余裕があるんですね」


 さっきの発言と全然ちがう、とポン太郎は心の中で苦笑する。


「実は、小吉くんには謝らないといけないんだ。君の引いた大凶は本来ありえないものでね。うちのおみくじには大吉から凶までしかなくて、大凶は入ってなかったはずなんだよ」

「でも、僕のは大凶でしたよ」


「大凶をやめたのは十数年前だから、その時のものが何らかの偶然で混じってしまったとか、そういう風にしか考えられない。これは数千万分の一か一億分の一の確率だよ」

「それって逆に、ラッキーなのかもしれませんね」


「うん、小吉くんの言う通りだよ。そもそも、大凶を引いたとしても、それは大吉になる可能性がある、ということだからね。例えば陰陽道では、対極にあるものは逆になりやすいんだ」

「へぇー、そうなんだ」宮司の言葉であるだけに説得力があった。



 結局、どういうことなんだろう。小吉の引いた大凶は、大吉以上のありがたいものだったのかもしれない。そうなると、率直に言って、ポン太郎の〈ラッキー♡クローバー〉は不要だったのか? 小吉は複雑なことを考えるのは苦手なので、ポン太郎に訊いてみた。


「僕には何とも言えないね。たぶん、大吉と大凶は紙一重ということじゃないかな」


 とりあえず、おみくじを引かずに真っすぐ帰ることにした。


 その帰り道で、再度お年玉を落としたのだから、やはり小吉は大凶だったのだろうか? 〈ラッキー♡クローバー〉の揺り返しだったのか? それとも、小吉が生まれつきもっている、運のなさだったのか? それは誰にもわからないのだった。



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