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ポン太郎のマジカルバッグ  作者: 坂本光陽


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惚れ惚れマフラーの巻


 小吉は、どこにでもいる小学生だが、他の子と違っていることが一つある。それは、とてもユニークな親友をもっていること。親友の名前は、ポン太郎といった。


 ポン太郎は魔法使いであり、小吉の家で居候をしている。小吉と一緒に暮らしながら、魔法の力で小吉の問題を解決してくれる。そんな有難い存在だった。


 その日も、小吉が学校から帰ってくるなり、居眠りをしていたポン太郎を揺り起こした。


「ポン太郎、助けてよ」

「どうした、小吉くん」

 

「百合ちゃんへの贈り物を忘れていたんだ。素敵なクリスマスプレゼントをあげたいんだよ」

「お小遣いがないんだね。十歳にはアルバイトができないんだから、ママさんのお手伝いをして、ご機嫌をとらないと」


「冷たいな、ポン太郎。何とかしてよ。一生のお願いだよ。大好物のタコ焼きを好きなだけ食べさせてあげるから」

「しようがないなぁ。小吉くんはどうしたいの? まさか、百合ちゃんのハートを鷲づかみにしたいとか?」


「ハ、ハートを鷲づかみ? そんなことができるの? ぜひ、頼むよ。お願いだよ。ポン太郎っ」

「やれやれ、今回だけだよ。そうだなぁ、これでいいかな。万能アイテム〈惚れ惚れマフラー〉」


 ポン太郎は亜空間生まれの魔法使いである。小吉が困った時には、亜空間とつながったマジカルバッグを使って助けてくれる。


 ポン太郎がマジカルバッグから取り出した〈惚れ惚れマフラー〉は、ごくありふれたマフラーだった。少なくとも見かけは、普通の手編みマフラーである。


 しかし、これこそが、ポン太郎の万能アイテムなのだ。


 小吉はポン太郎の指示にしたがって、〈惚れ惚れマフラー〉を首に巻いた。小吉を「乙」として登録したのだ。そのマフラーを百合が首に巻けば自動的に「甲」になり、「甲」が「乙」に惚れてしまう、というシステムなのである。


「ありがとう。ポン太郎。これで百合ちゃんのハートは僕のものだね」



 翌日、小吉はマフラーを入れた紙袋を手に、川べりで百合と待ち合わせをした。ポン太郎は物陰から、小吉の恋が実るように、あたたかく見守っていた。一級河川の荒川のような広い心で。


 小吉がベンチに座って、緊張からカチコチに固まっていた。やがて、百合が笑顔でやってきて、小吉の隣に腰を下ろした。


「小吉くん、いい天気ね」

「う、うん、そうだね。明日も晴れるといいね」


 あたりさわりのない会話がしばらく続いた。小吉はガチガチになっているので、百合はいぶかしんで、

「どうしたの? 今日の小吉くん、何か変だよ」

「う、ううう」


 小吉は一念発起して、傍らにあった紙袋を百合に差し出しながら、

「百合ちゃん、これ、受け取ってください」

「ほいよー」


 女の子の声ではなかった。ほぼ同時に、ロードバイクが早いスピードで、二人の前を通り過ぎて行く。しかも、ペダルをこいでいる高校生は、すれちがいざまに、小吉の差し出した紙袋をかっぱらった。


「ガキがいちゃつくんじゃねぇ! ブワァーカっ!」そう言って、紙袋を荒川に放り投げたのだ。

「ああー」小吉の悲鳴がむなしく響く。


 紙バッグがボチャンと川に落ち、ブクブクと沈んでいった。

 百合は「こらー」と怒りの声を上げるが、小吉はガックリと肩を落としていた。


「ひどいことをするわね。小吉くん、あの紙袋には何が入っていたの?」

「マフラーが入っていたんだ。百合ちゃんへのプレゼントだったのに」

「ふうん、そうなんだ」百合はにっこり微笑んで、「でも、偶然ね。私も小吉くんにプレゼントがあるんだよ」


 小吉が顔を上げると、くるりと何かを首に巻きつけられた。何と、毛糸で編まれたマフラーであり、小吉のイニシャル「S」まで入っている。


「お母さんに少し手伝ってもらったけど、私、がんばって編んだんだよ」

「ゆ、百合ちゃん」

「メリークリスマス、小吉くん」

「メ、メリークリスマス」


 何はともあれ、結果オーライ。小吉と百合は笑顔で見つめ合っていた。


 物陰から見守っていたポン太郎も、

「よかったね、小吉くん」と、涙をぬぐった。


 だが、彼らは一つ忘れていた。荒川に落ちたプレゼントの件である。〈惚れ惚れマフラー〉は、やがて海に流れ着き、偶然にも、ある動物の首に巻きつくことになる。


 それは、メスのゴマフアザラシだった。彼女は自動的に「甲」となり、「乙」である小吉に恋焦(こいこ)がれることになる。荒川をさかのぼってきた彼女が「荒川のゴマちゃん」としてニュースになるのは、また別の話である。



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