A~ZまでのINRUIが意味するもの
まずは、INRUIの頭にAをつけたものから順に、ZまでのINRUIについて解説していく。
AINRUIが示すのは、AIR。すなわち空気類ということになる。始まりのアルファベットということもあり、存在の根源であり、世界を支える始まりの気のことだ。あるかないかさえわからないことから、無意識をあらわすものでもある。
BINRUIが示すのは、瓶ごみ。つながりが希薄でバラバラのもの。まとまりのなさをあらわすものである。
CINRUIが示すのは、「朕」という一字。君臨する者が用いる一人称であり、そこには一種の孤独がイメージとして重なってくる。一人きり見えない敵と戦い続けなければならない宿命を背負っており、孤高の人と解釈できる。社会からの希薄な関係をあらわすものである。
DINRUIが示すのは、DINNER。現在では夕食のことだが、語源は断食に関わるものである。断食を終えることを意味するラテン語が起源であるという。断食が前提となっているということから、奥ゆかしい内省、欲望の抑制、魂の浄化行動などを示すものである。
EINRUIが示すのは、エインフェリアの魂。北欧神話に基づくもので、ヴァルキリーが拾い上げる死者たちのこと。多様な精神性や、強い霊性、逃れようもない宿命などを示すものである。
FINRUIが示すのは、フィニッシュ。すなわち終わりをあらわすものである。孤独感や焦りを伴った老いの自覚の段階、また閉幕や下降を示すものである。
GINRUIが示すのは、酒の一種「ジン」。酒に逃亡し、アルコール漬けになれば、そこに待つのは関係の希薄化である。好き勝手に振舞うことや、現実離れ、逃避を示すものである。
HINRUIが示すのは、品格。物質的なものとは限らず、気品や品格など、そのものの格付けをあらわし、差別化し、序列をつける活動である。また、こうした活動により生き物に文化的な感覚が芽生えるさまも示している。
IINRUIが示すのは、委員。明確な役割が発生した世界のことである。人類を人類たらしめているのは、共同生活の役割分担という見方もできる。そうしたことから、責任感や共同性を示すものでもある。
JINRUIが示すのは、人類。繋がることで進化していく存在であり、急速な成長や発展を示す。
KINRUIが示すのは、菌類。実は菌類は、反応だけでなく意志を持って生きているのだ。人類よりもさらに社会的な特質を持っているとも考えられる。意識を分布させ、全体を調和させ、効率的な群体を形成するさまを示している。
LINRUIが示すのは、LINE。すなわち線である。この世界は点の集合体として表現されることがあるが、そこから次元を進めると、実は最小構成要素は点ではなく線であることが見えてくる。従来の視野よりもさらに豊かな視野でみることによって、この世界を織り成す構造の複雑さ・豊かさを掴む糸口が生まれることを示している。
MINRUIが示すのは、MINE。すべてを自分のものとすること。自己中心性や高慢さは、時に強固な繋がりを生むこともある。だが、過ぎた独占意識がもたらすのは、共同性との衝突である。
NINRUIが示すのは、NINJA。強い結束と協力をあらわし、忍耐強く静かな団結が強調される。日常とは切り離された里での尋常ではない結束は、抜けることが許されず、そうした厳しいルールを示すこともある。
OINRUIが示すのは、押印。すなわち契約によって結ばれる関係性を指す。人と人の繋がりを、目に見える形をもって強く縛るというやり方である。これは、ぼんやりとした結束や、郷里の中での結束よりも、さらに進んだものである。これは現在の人類が使う契約よりも遥かに強い結びつきを意味しており、紙面の上だけでなく魂レベルでの契約ということになる。
PINRUIが示すのは、ピンク。一言で言えば愛である。アルファベットも後半にきており、人類としての歩みも進んだうえで、かなり強い結びつきを示すものと考えられる。愛や情愛を包括した共感・連帯・人類全体のあたたかな結束を示すものである。
QINRUIが示すのは、秦王朝。はじめて統一された国家になぞらえ、個人の精神活動や肉体活動が秩序だっていることを示し、異なる要素が一つに混ざり合うイメージを持つ。しかし同時に、その後の破滅と歴史の連続性を含んであいる。個人や人類全体の統一と秩序の一時的な成功と、崩壊の予兆、そして歴史の継続性を示す。非常に複雑なINRUIである。
RINRUIが示すのは、憐、転じて輪。共感性や他者への思いやりに焦点を当てたもので、他者の苦しみに共感し、自身の者として受け止めることを示している。それが社会においてはセーフティネットを発生させ、輪になって踊ることができるのだ。こうして生まれる円形は一種の完全性を示し、また滅びた後に不滅の魂が蘇る「輪廻」を導くものとしても受け取ることができる。
SINRUIが示すのは、親類。家族や血のつながり、強い結束をあらわす。空間的には血を分けた一族の広がりをあらわし、時間的には積み上げられていく伝統をあらわすものである。
TINRUIが示すのは、ティーン。若者。すなわち青春をさす。人は誰もが青春を経験する。そうした共通経験に基づいて人類全体が共有する集合無意識のようなものにまなざしを向けるということである。若さのもつ創造性・変革力・挑戦意識を示し、同時に未熟さを示すこともある。
UINRUIが示すのは、ウイーン。機械音という説と、ウイーンの街に響くようなクラシック音楽を指すという説がある。いずれも音に関わるものである。機械音の場合は、意思を介在せずとも動く自動的なものとして人間の結束活動をとらえていて、音楽の場合は思考の無化や、むしろ限界を超えた活性化によって統一される人間全体としての意識をあらわす。
VINRUIが示すのは、ワイン。発酵というプロセスを通じて生み出されるものであり、ワインを通じて人類の成長や結束の進化を示すものである、酒を通じた社交性の最も洗練されたものとする説もある。また別の一説によれば、そこに宗教性や科学性や文学性が込められているとも言われる。
WINRUIが示すのは、勝利。主に分断を生み出しかねない本来性を失った衝動的言動に打ち克つことを意味する。こうした言動に対する完全勝利は非常に難しいと言えるため、アルファベットのなかでもそうとう最後のほうに位置付けられているのである。これができてこそ人類は統合され、平和が結実し、大きな壁をのりこえることになる。ただし、勝利を求めて勝利してはいけない。
XINRUIが示すのは、新。従来の価値観や制約から解放され、より進化した、新しい人類の段階が到来するということである。これも意識的に行うようなものではなく、人類としての一体感を持つ過程でおのずと実現されるものである。
YINRUIが示すのは、陰陽の陰。陽と対をなすものである。これは人間の根本をあらわす語でもあり、万物との揺るがない共通点でもある。陰は陽があるからこそ成立するもので、逆もまた然りである。「陰」と言えば陽が含まれ、「陽」と言えば陰が含まれる。片方を言うだけで陰と陽の両者を併せ持つのである。このうち陰のみをとりあげてYINRUIと言っているのは、とりわけ物質を形作るときに、陰がなければ絶対に成り立たないことを強調するためである。天的なものが陽であるなら、地的なものが陰である。ゆえにYINRUIとは、万物の基盤をいい、そこに物質的イメージを強く伴ったものということになる。
ZINRUIが示すのは、物質を超越した一体なる人類。物質的な次元を超えてつながりを持つことに焦点を当てた解釈が最もふさわしいとされる。ZINRUIは、精神的、感情的な結びつきさえ超えて、より広い意味での一体性を持つ段階を獲得することを示す。あらゆる境界が消滅し、そしてまたAIRに帰っていくことを示唆することもある。
以上がA~ZまでのINRUIの解説である。
これらのINRUIに関する解釈は、コミュニティ・文化によって全く異なり得るものであり、その多様性を尊重することが重要である。人類のように新たなものを発見するたび進化しつづけていくのが、INRUI思想なのである。
例として、異なる解釈を一つ紹介しておく。
それは、JINRUI・GINRUI・NINRUIを人類の三段階とし、CINRUI・KINRUI・QINRUIを菌類の三段階とすることで両者を競り合わせようとするものである。その説は、やや牽強付会に過ぎるとの見方が大勢であるが、検討すべきものでもある。